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姫勇者アナスタシア冒険譚  作者: 森林木
166/281

姫様、追う

「あっ!誰か出てきた!」


アナスタシアが指差す先、地下室への入口から人影が跳び出してきた。


「二人……いや、三人か。あの抱えられてるやつ……。」


グレンが闇の中目を凝らす。


人影は双手に別れて路地へと走り去っていく。その後から長身の男が地上へと上がってくる。男は馬車に駆け寄ると中の人物と何かを話している。


「どうしたんでしょう?あの人達も怪盗団なんでしょうか?」


プリシアが疑問を口にする。アナスタシア達が遠目に様子を見ていると、馬車から剣を腰に帯びた男が下りてきた。地下から出てきた男と剣の男は、先程跳び出してきた人影を追うように双手に別れて走っていった。



「これって……。」

「ふむ。どうやら、一足遅かったようですな。」

「ちっ!忠告しただろうが。」


グレンが悔しそうに言う。


「ど、どうしましょう?」


プリシアがアナスタシアを見る。


「私達も追おう。私は剣の男達、グレンはもう一方を!」

「わかった。無茶すんなよ。」

「ああ、グレンもね。ジイとプリシアは地下室の方を頼む。」

「御意。」

「わかりました!」


四人は散開した。


※※※※※


「はっ!はっ!はっ!」


ヘスは後ろを振り替える余裕もなく無心で走った。自分には土地勘がある。


(裏道に入ってさえしまえば……。)


逃げ切れると自分に言い聞かせヘスは兎に角走った。撃たれた痛みは感じない。生き延びたいという強い思いが勝手に足を動かしてくれる。


(この路をまっすぐ走ればスラムを抜ける!あとは朝まで隠れていればっ!)


流石に奴らも富裕層の居住区で殺人はしないだろう。すがるような思いでスラムの外へと……。


ぽんっと肩を叩かれる。


「えっ?」


間抜けな声を漏らす。がっちりと肩を捕まれ足が止まってしまう。振り返ると、地下室でネーブルの後ろにいた男が立っていた。


「ひっぃぃ!」


声にならない悲鳴をあげるヘス。


「ぐむっ!?」


大きな掌で口を押さえられ声が出せない。恐怖に震えるヘス。そのまま路地の壁に押さえつけられる。


(死ぬっ……!?)


ヘスは涙を流しながらなんとか逃れようとハンの腕を掴む。しかし逞しい腕はびくともしない。


(あぁ……。)


絶望のあまり全身から力が抜けるヘス。足元に水溜まりができる。


「はぁ……。なんでもっと上手く逃げないかねぇ。」


ハンが呟く。


(なにを……。)


「追いついちまったじゃねぇかよ。」


残念だと言わんばかりにハンは言う。ハンがヘスの口から手を離す。腰の抜けているヘスはそのままへたりこんでしまう。


「あっ……あっ……。」


言葉にならない。ハンはしゃがみこむとヘスの首を腕で固定する。


「ぐぇっ!な、なに……。」


ハンがもう一方の手でヘスの頭を持つ。


ゴキッ!


ヘスの頭が真後ろを向いた。ハンは立ち上がるとヘスの身体を引き摺って歩く。手近にゴミの山を見つけると、その中にヘスを隠した。


「はぁ。」


手をパンパンと払いながら溜め息をつくハン。雇い主のいる地下室へ引き返すために少し歩いたところで、


「ん?」


前方に人影が現れた。








御一読頂き誠にありがとうございました。

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