姫様の最後の忠告
「あっ、これ美味しいですね。」
「でしょ?」
「ふむ、これはなかなか。」
アナスタシアの土産を食べながら孤児院でのことを聴くヴォルフとプリシア。
「仕方ないですよ。きっと私も言えなかったと思います。」
「うん。ありがと。」
四人は話し合いの末、この件から手を引くことにした。
「とりあえず盗まれた物は戻ってきたしな。」
「心配ですけど……。」
「ふむ、官憲が適切に対応してくれることを祈ろう。」
「ねぇ、最後にもう一回だけあの子と話したいんだけど……。」
アナスタシアが言う。
「はぁ、お前もお人好しな奴だな。」
「でも話してみる価値あると思います!」
「そうさのぅ。最後に忠告してから発ちますか。」
「うん。ありがとう。」
こうして、その日の夜にグレンの突き止めたアジトへと向かう事になった。
※※※※※
「ほぉほぉ……なるほど。」
ネーブルは盗品を見終わると、一旦地上に戻り再び金貨を入れた袋を持ってもどってきた。
「今回はこんなものかな。」
ガットが袋を受け取り中を確認する。
「!?……お、おい!なんだよこれ!?」
「ん~?どうかしたか?」
ネーブルは笑顔のまま聞き返す。
「どうしたかだと?こんな金額なわけないだろ!」
「ん?ん?どういうことかな?」
「こんなに安いわけないだろ!この絵だけでこの十倍はあるはずだ!」
シャント達は心配そうにその様子を見ている。
「おいおい。あるはずだってお前に絵の値段なんかわかるのか?」
ネーブルがガットを嘲笑う。
「わかるさ!俺だって色々勉強したんだ!」
ネーブルがこれ見よがしに溜め息をつく。
「あのなぁ、確かに絵の値段はもっとするさ。けどな、これを売るとなると話が違う。盗品を売るには特別なルートが必要なんだよ。その手間賃を引いた金額で買ってやってるんだよ。」
ネーブルが捲し立てる。
「そ、それにしたって……。」
尚も食い下がるガットにネーブルが微笑む。
「それになぁ。お前らにこの商売を教えてやったのは誰だ?薄汚いコソ泥だったお前らが庶民の英雄、黒猫怪盗団になれたのは誰のお陰だ?」
「そ、それは……。」
「言ってみろ。誰だ?誰だ?誰だ?誰だ?誰だ?誰だ?誰だ?誰だ?誰だ?」
ネーブルは笑顔のままガットに詰め寄る。
「わ、わかった。その金額で……。」
「いや、もういい。」
「え?」
「商談は終わりだ。」
「終わりってどういう……。」
ネーブルが腰から何かを引き抜いた。
パンッ!
地下室に間抜けな破裂音が響いた。
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