Interlude
地下室。黒猫怪盗団を名乗る少年少女達が集う。
「ちっ。遅せぇな。」
ダイアンが舌打ちする。
「落ち着きなよダイアン。きっともうすぐ来るさ。」
ヘスが宥めようとする。
シャトンは壁に凭れて座りなが欠伸をする。すると天井、いや地上が微かに騒がしくなる。
「来たようだな。」
ガットが読んでいた本を閉じて椅子から立ち上がる。それに合わせ他の四人も立ち上がった。
※※※※※
1時間程前……。フェールズ市街にある宿の一室。豪奢な家具が並ぶ室内には数名の男女がいた。
「ネーブルさん。そろそろ例の場所に向かわれては。」
屈強な体躯をした男が部屋の中央のソファーに座る男に声をかける。
「ん?もうそんな時間か。」
ネーブルと呼ばれた男の両隣には薄着の女が寄り添い、目の前に並ぶご馳走や酒をせっせと男の口に運ぶ。
「むはぁ。では行って来るとするか。」
右の女から口移しでワインを飲み、ネーブルは立ち上がった。でっぷりと太った腹を擦りながら屈強な男の方に歩いていく。
「ハン、スライはどうした?」
屈強な男、ハンは親指で窓を指して答える。
「もう下で待ってます。」
「そうかそうか。気の早い奴だな。」
そう言いながらネーブルはハンを引き連れ部屋を出た。
宿の外にでると二台の馬車が並んで待機していた。前は人が乗る用、後ろは荷馬車のようだ。
「お待ちしてました。」
「おお、スライ。すまんすまん。」
ネーブルは馬車に乗り込み既に中で座っていた男、スライに向かって笑いながら言った。ネーブルが座るとハンも乗り込んで座った。御者は三人が乗り込んだのを確認すると鞭をふるい馬車を走らせた。
「さて、奴らどんな商品を見せてくれるかの。」
走る馬車の窓から流れる街並みを見ながらネーブルが言う。
「近頃は金持ち達も警戒しているようですからね。彼らもどこまでやれるか。聞けば官憲も本格的に動き出すとか。」
スライが答える。
「ほぅ。流石は元憲兵だな。貴重な情報には謝礼を払わんとな。」
「ありがとうございます。」
腕を組み静かに礼を言うスライ。
「うむ。そろそろ潮時だな。十分稼いだしな。この稼業、引き時が肝心だ。」
「では、今日が最後と?」
ハンが尋ねる。
「ああ。奴らを労ってやらんとな。」
二台の馬車は夜の街をスラムに向けて駆けた。
※※※※※
階段を下りる足音が地下室に響いた。
「来た来た。」
トートが欠伸を噛み殺しながら言う。
「いや~すまんすまん。待たせてしまったようだね。」
地下室に入ってきたネーブルが笑いながら詫びた。その後ろにハンが付き従っている。
「けっ!まったくだぜ。」
ダイアンの言葉を無視してネーブルはガットに話しかける。
「それで、今回の分は?」
「あれだ。」
ガットが部屋の隅を指差す。
「ほぅほぅ。」
ネーブルがニンマリ笑いながら盗品の山に向かった。
御一読頂きありがとうございます。
良かったらブックマークやコメント宜しくお願いいたします。