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姫勇者アナスタシア冒険譚  作者: 森林木
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姫様の計画

アナスタシアが旅に出る決意をしてから一週間が経った。

その間、着々と城を出る準備を進めていた。

まずは地図を手にいれようと父に地図が欲しいと言ってみた。

何に使うのかと訊かれたのでその場は誤魔化して図書館へ赴きこっそり描き写してきた。

次に武器を手に入れようと兵士の武器庫に行ってみた。しかし武器は全て個数を管理されている。

アナスタシアが盗んだことで管理係が責任を問われるかもしれないと思い調達を諦めた。

仕方なく自室の壁に飾ってあった装飾用の短剣を持っていくことにする。

近くの町に着いたら武器屋で買うことにしよう。

旅費は自室にある宝飾品を持って行き売ってお金にするか。

あとは、誰にも気づかれず城を出る方法だが……。


(うーん。どうしたものか……)


アナスタシアが城中を歩き回りながら見つからずに城から出れる場所を探している。

中庭、見張り台、侍女達の部屋や地下に至るまで覗いてみた。

普段アナスタシアが顔を出さないような所まで探したので、突然の姫の来訪に驚く者もいた。

城中を探索したアナスタシアが考え出した方法が、自室の窓からロープか何かで中庭に降り、そこにある地下水路の入り口から水路を歩き、夜の間に城下町の外に出るというものであった。

朝になり侍女が起こしに来た時にはアイソルの外に出ているという寸法だ。

そこからは近くの町まで歩いて行こう。


(よし!これで行こう!)


脱出計画が決まったアナスタシアは自室へと戻ると丁度プリシアが部屋の前にいた。


「あっ!姫様~!これお持ちしましたよ!」


プリシアが両手いっぱいにシーツを抱えて部屋の前にいた。

アナスタシアが駆け寄りドアを開けてやるとよたよた歩きながら部屋の中に入る。

ベッドの上にドサッとシーツを置くと、一息つくプリシア。


「おっしゃられた通り、色んな柄のをお持ちしましたよ。」

「あ、ああ。ありがとうプリシア。」

「でも姫様も急にベッドのシーツの色を選びたいなんてどうしたんですか?」

「う、うん。まあ、なんとなくね。」

「まあ、これだけあれば気に入る柄も見つかりますね!」


エッヘンとプリシアが胸を張って言う。


(うぅ……ごめん……ごめんよプリシア……。)


心の中でプリシアに謝罪するアナスタシア。

シーツを大量に持ってこさせたのは、窓から中庭に降りる為のロープ代わりにしようと思ったからだ。

以前に本で読んだ絶対にほどけない結び方を思いだし、プリシアに調達を頼んだのだ。

勿論、本当の使い道は秘密にしたが。

そうとも知らずプリシアは楽しそうに自分のお勧めの柄を選んでいる。

無邪気に


「姫様~!これなんてどうですか?」


などと言うのである。


(あ~!やめてくれプリシア!そんな笑顔で!)


アナスタシアの罪悪感をこれでもかと責めたてて、ようやくプリシアは退室した。


「はぁ……私はなんて事を……。」


げっそりとしたアナスタシアがベッドに腰掛け呟く。

しかし今さら計画をやめるつもりはない。

よしっ!と気合いを入れて立ち上がると、今夜も出奔の準備に勤しむのであった。


※※※※※


「~♪。今日も一日頑張りました~♪」


プリシアがアナスタシアの部屋から退室し、別棟にある自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、向かい側からヴォルフが歩いてきた。

ヴォルフに気付き道を譲るために端に寄りお辞儀をするプリシア。


「こんばんは、ヴォルフ様。」

「おぉ、プリシアか。今日も一日ご苦労じゃった。姫様の部屋にでも行っておったのか?」


片手を挙げ気さくにヴォルフが話しかける。


「はい、その通りです。姫様がベッドのシーツを自分で選びたいから色んな柄のやつを持ってきて欲しいとこーんないっぱい!」


腕を目一杯広げてシーツの量を表現しようとするプリシア。 


「ほう……シーツとな。それはまた珍しいのう。」

「でしょ!ヴォルフ様もそう思いますよね!まあ姫様はなんとなくなんて言ってましたが。」

「……。」


何か考え込んでいるヴォルフに気付きプリシアが怪訝そうな顔をする。


「あの~ヴォルフ様?」

「あっ!ああ、すまんすまん。兎に角、姫様の気紛れでプリシアの仕事が増えたんじゃな。それは大変じゃったのう。」

「いーえー。これくらいなんて事ありません!」


細い腕を曲げて力瘤を作る仕草をするプリシア。

ヴォルフもこの心優しい娘を見ていると自然と微笑んでしまう。

ここ最近の不穏な情勢で暗くなりがちだったがプリシアのお陰で一瞬晴れた気がした。


「フォフォフォ……そうかそうか。それは心強いのう。さて、呼び止めて悪かったのう。もう休んでくれ。」

「フフフ。ありがとうございます。それではお休みなさいませ。」


一礼して自室へ向かうプリシアを数秒見送った後、ヴォルフも自室へと足を向ける。


「やれやれ、姫様ときたら……。」


ヴォルフの静かなボヤキを聞くものはなかった。

お読みいただき誠にありがとうございます。

よければ、ブクマやコメントなど頂けると幸いです。宜しくお願いいたします。

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