姫様、相談する
朝日が昇り始める頃、グレンが四人分の荷物を抱え帰ってきた。
「ほ~。俺が街中を走ってた間に三人ともぐっすり寝てたとはね。」
グレンが恨めしそうに言う。
「ハハハ、まあまあ。アジトが見つかって良かった。」
「そ、そうですね。ご苦労様でした。ハハハ……。」
「ふっ、冗談だよ。それでどうするよ。」
アナスタシア達はアジトの場所や怪盗団の事をグレンから聴きこれからどうするかを考えていた。
「う~ん。やっぱり官憲に話して捕まえてもらうのがいいのかな~。」
「まあ、そうだわな。流石にガキの悪戯の範囲を越えてるしな。」
「でも、グレンさん約束したんですよね。」
「まーなー。俺も別に遵法精神溢れる好青年ってわけじゃねーしな。」
「ジイはどう思う?」
「そうですなぁ。」
ヴォルフは紅茶を一口飲み意見を述べる。
「本来ならこの国の罪人はこの国の者が捕らえるべきでしょうな。特に賞金も掛けられておりませんし。」
「それだよ。なんで官憲はこんなにノンビリしてるのさ。」
「ふむ。ガス抜きでしょうな。」
「あー。それな~。」
グレンが椅子に凭れながら賛同する。
「聞けばスタン共和国は貧富の差が問題になっているとか。庶民からすれば富裕層から金品を盗む怪盗団はちょっとした英雄です。」
「ざまぁみろってことか。」
「そういうことです。」
ヴォルフが頷く。
「しかし、いつまでも放っておくわけにもいきますまい。官憲のメンツもあるでしょうし、何より盗みに入られた貴族や富豪達が黙っていない。」
「だな。それこそ金にものをいわせて用心棒を雇ったり、懸賞金でかけられたら……。」
「…………。なんとかやめさせられないでしょうか?」
プリシアが心配そうに言う。
「言って聞くようなやつらかね~。」
「シャトン……って言ったっけ?」
「ん?ああ、アイツの名前か?そうシャトンだ。」
「うん。そのシャトンを説得するには……。」
「あっ!シスター!」
「……やっぱそうなるか。」
「ふむ。いたしかたないですな。」
四人は方針を決めると揃って朝食をとるために部屋をでた。腹を満たした一行は前回と同じようにアナスタシアとグレンがスラムの教会を訪ねることになり、ヴォルフとプリシアは部屋で留守番となった。