Interlude
(しかし……ぴょんぴょんと身軽な奴だぜ。)
女怪盗の追跡を任されたグレンは見失うギリギリの距離を保ちながら後を尾行けていた。
(まあ、子供にしては……だが。)
女怪盗も時々振り向いたり狭い路地を迂回したりと警戒はしているようだが、気配を消したグレンに気づくには未熟過ぎた。
(またここか。)
かなりの距離を走り、昨日アナスタシアと来たスラムへとやって来た。女怪盗は半分崩れた建物の前で立ち止まり辺りを見回す。しばらく周辺を気配を探った後、地面に置いてあった石板を退かす。すると地下への階段が現れた。
(なんとまあ……。)
女怪盗が階段を下り石板の蓋が閉じた。
「なるほどなぁ。さて、どうするか……。」
グレンは腕を組んで考え込んだ。
※※※※※
「シャトン!?」
「ただいま……。」
灯りのついた地下室。部屋の奥にある椅子に座っていた青年が女怪盗、シャトンの帰還に驚き駆け寄ってきた。
「ただいまって……お前っ!」
「てっきり捕まったんだと思ってたぜ。」
別の少年が言う。部屋にはシャトンの他に四人いるが年齢はシャトンより少し上くらいか。最初に駆け寄ってきた最年長の青年が言う。
「いったいどこに行ってたんだ!心配したぞ!」
「ああ、下手打って捕まったんだけど逃げてきた。」
実際は解放されたのだが説明すると面倒なので嘘をついた。
「そうか……とにかく良かった。」
「悪かったなガット。」
シャトンが青年、ガットに謝る。
「無事ならいいさ。」
「で、戦利品は?」
ガットより頭一つ背の高い青年が尋ねる。
「ないよ。」
「はぁ?」
「文句ある?ダイアン。」
「ああ、あるねぇ。手ぶらで帰ってくるなんてな。」
腕を組んでシャトンを見下ろすダイアン。
「よせ。無事に戻って来たんだ。それで十分だ。シャトンも挑発はやめろ。」
「ちっ!」
「ああ、わかった。」
ガットに諌められ渋々引き下がるシャトンとダイアン。
「はぁ……。」
シャトンは部屋の隅に積まれた盗品の上に座る。
「まあ、今月分はもう十分盗んだ。あとはゆっくりしようぜ。」
「トートのいう通りだ。今月はもう仕事はなしだ。」
ガットの言葉に皆が頷く。
「例の引き取り手はいつ来るの?」
「明日の夜だ。」
「僕、あいつ苦手だなぁ。」
「はっ!ヘスは臆病過ぎるんだよ。」
「やめろ、ダイアン。」
「はいはい。」
そんなやり取りを少し離れて眺めていたシャトン。
「じゃあ、明日の夜までは俺がここの見張りをする。皆は自由に過ごしてくれ。」
「ああ。」
「はーい。」
シャトンの側にガットがやって来る。
「お前も帰って休め。」
「……わかった。」
シャトンは立ち上がり階段へと向かう。するとダイアンが近寄ってきた。
「まさかお前、ここの事バラして逃がしてもらったんじゃねーよな?」
「なんだと?」
睨み会う二人。
「けっ!」
先にダイアンが視線を外し階段を上がって行く。シャトンは一度地下室を振り返り、自分も階段を上がった。
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