姫様、探す
「シスターってことは教会のシスターってことだろ?」
グレンが頭の後で手を組ながら尋ねる。
「だろうね。ただ大きな街だからなぁ。教会もいくつもあるさ。」
「仕方ねぇ。近場から虱潰しでいくか。」
二人は街の地図上にある教会の位置に標をつけた。どうやらこの街には五つの教会があるらしい。
「近くだと……ここか。」
「よし、行ってみるか。」
※※※※※
「手首、痛くないですか?」
プリシアが目を覚ました女怪盗に問いかける。
「ふんっ!」
そっぽを向く女怪盗に尚も話しかけるプリシア。
「お腹空きませんか?良かったら貴女も一緒に……。」
「…………。」
「やれやれ。強情な娘じゃのう。大人しくしてくれれば縛っている縄をほどけるんじゃが。」
「手だけでも駄目でしょうか?このままじゃお食事もできないですし。」
「そうじゃのう……。」
プリシアの言葉にヴォルフは考え込む。
「ならば……。」
ヴォルフが杖で床をトンッと突く。すると女怪盗の座る椅子を中心に魔方陣が現れる。」
「!?」
女怪盗が足元を見て同様する。ヴォルフが椅子の背に回り込み縄をほどいてやる。
「なっ!なんだこれっ!」
女怪盗は椅子に座りながら身体を捻ったり腕を振り回したりしている。しかしなぜかた立ち上がって逃げようとしない。
「その円陣の中ではお主の足は鉛の如くなる。逃げることはできんよ。」
「くそっ!ふざけやがって!」
悪態をつく女怪盗。
「とにかく何か食べましょう。それからお話しましょう。」
そう言いながらプリシアが今朝部屋に運ばれてきた朝食を持ってくる。トレイの上にはパンやサラダ、スープが乗っている。
「はい。ご自分で食べれますよね。」
トレイを差し出すプリシア。
「…………。」
女怪盗は差し出された料理とプリシアの顔を繰り返し睨むと、スープ皿を掴みプリシアに向かってかけた。
「きゃっ!」
悲鳴を上げるプリシア。今度はトレイごと料理を払いのける女怪盗。
絨毯が敷かれた床に料理がぶちまけられる。
「プリシア!」
ヴォルフが駆け寄る。プリシアは驚きのあまりへたりこんでいる。
「大丈夫か?」
「は、はい。少しビックリしただけです。」
「ふむ。ならよいが。」
そんな二人に女怪盗が言い捨てる。
「はっ!反吐がでるわ!アンタらみたいな金持ちの偽善者には。私らをいつも見下して。愛玩動物を見るような目で見やがって!哀れみか?それとも餌を恵んで優越感に浸りたいか?残念だったな!そんなのお見通しなんだよ!」
感情を爆発させ言い募る女怪盗。その顔は怒りに満ちていたが、ヴォルフとプリシアにはどこか泣いているようにも見えた。