姫様、捕まえる
「ん……んん……。」
捕らえた女怪盗が小さく唸り目を開ける。
「よう。目が覚めたか?」
グレンが椅子に反対向きに座り、同じく椅子に後ろ手に拘束されている女怪盗と目を合わせる。
「くっ……!」
女怪盗は身体を揺するがガタガタと騒がしいだけだ。
「しっ!静かにしてやってくれ。まだ寝てる奴らがいるんでな。」
グレンが唇に人差し指を当てながら言う。なるほど、後ろのベッドには誰かが寝ているのが見える。
「ふむ。気がついたようじゃな。さて、いくつか聴きたい事があるんじゃが。」
「お前が世間を騒がしてる怪盗団の一員なのはわかってる。」
「ふんっ!さてね。」
「ポケットにこれがあったからの。」
ヴォルフが黒猫の描かれたカードをみせる。
「ぐっ!ならさっさと官憲にでも渡せばいいだろ。それとも殺すのか?」
睨みながら言う怪盗にグレンとヴォルフが顔を見合わす。
「別に殺しゃしねーよ。ただ盗んだ物を返して欲しいだけだ。」
「ふむ。盗品のありかと仲間の居場所を教えてくれんか?」
二人の言葉を鼻で嗤う怪盗。
「はっ!誰がそんなこと喋るかよ。バッカじゃねーの!」
ヴォルフはやれやれと肩を竦める。
「ときに、リタとは誰じゃ?」
「!?」
怪盗の表情が変わった。
「な、なんでそれを!」
「お前さん、気を失っている時に何度も呼んでおったよ。シスター・リタとな。」
怪盗は顔を赤くし暴れる。
「ふざけんなっ!お前らには関係ないだろっ!さっさと官憲にでもつきだせよ!私はなにもしゃべらないからなっ!」
わめき散らす怪盗。するとベッドで寝ていたアナスタシ達が目を覚ました。
「ん……なんの騒ぎ?」
目を擦りながら言うアナスタシア。グレンとヴォルフがこれまでの経緯を説明する。
「なるほどね……。」
アナスタシアは今にも噛みつかんばかりの怪盗を見る。
「どうしても喋る気はない?」
「ふんっ!当たりまえだ。拷問されたって言うもんか。」
「そんな……拷問なんて……。」
プリシアが首を振る。
「どうしたもんかな。官憲に引き渡してもいいけどダンマリじゃ結局成果はなしだし。やっぱりそのシスター・リタって人が鍵か。」
アナスタシアが言うとまたしても怪盗が暴れだす。
「こら!暴れるなって!」
「お、落ち着いて下さ~い!」
「やれやれ……。」
ヴォルフが杖で暴れる怪盗の頭をチョンッと触ると、瞬く間に眠りに落ちた。
「さてはて、如何いたしましょう?」
「やっぱりそのシスター・リタって人を探してみよう。」
「弱みを握って取引ってことか?」
「うーん。まあそんな感じかな。あんまりやりたくはないけどね。」
「では、さっそく見張りと人探しに別れて動きますかな。」
怪盗の見張りにプリシアとヴォルフ、シスター・リタの捜索にアナスタシアとグレンに別れ行動を開始した。
御一読頂き誠にありがとうございました。
良かったらブックマークやコメントよろしくお願いいたします