姫様、取り返したい
「どうしたものか……。」
「どうしましょうか……。」
「どうすんだよ……。」
「はて、どうするか……。」
四人はアナスタシア達の部屋で頭を抱えていた。
「幸い多少の路銀は残っておりますが。」
「でも、お金の問題だけじゃないよ。」
アナスタシアに至ってはいきなり丸腰になってしまった。
「だな。貧乏旅には慣れてるが、盗まれたままってのは気に喰わねーよな。」
「大事なものもありますし。」
「ふむ。そうじゃの。」
アナスタシアが腰かけていたベッドから立ち上がる。
「よしっ!取り返そう!」
※※※※※
四人は怪盗の手がかりを求め、官憲の兵士達の元へ向かった。旅人のアナスタシア達に情報をくれるか期待薄ではあったが、意外にもすんなりと教えてくれた。
「正直言うと、なかなかこの件に人員を回せなくてな。君たちも旅をしているならわかるだろ?今はどの街や村も魔物の襲撃からの防衛が最優先だ。」
「猫の手も借りたいという状況、お察しします。」
ヴォルフの言葉に兵士は頷く。
「まあ、そういうことだ。今のは他言無用で頼むぞ。それでこれが怪盗どもの被害にあった場所だ。」
兵士はテーブルに街の地図を広げた。地図のいたるところに赤色の丸が描いてある。そこが被害にあった場所なんだろう。
「富裕層の屋敷、博物館、美術館、そして今回の高級宿、奴らは金から美術品、とにかく金になるものは手当たり次第盗んでいく。」
「ふむ。被害は街の南西に集中しておりますな。」
「ああ、フェールズはこのあたりに富裕層の居住区があるんだ。君たちの泊まっている宿もこのあたりだ。」
「観光地もこのあたりだね。これ以外の場所は?」
「うむ。東部から北東部と西部は所謂庶民の住んでいる地域だ。市場なんかもこの辺にある。」
「じゃあこの北の部分は?」
アナスタシアが地図を指差す。
「そのあたりはスラムだ。まあ、スタン共和国の都はだいたい似たような街の構図になる…………いや、失敬。今のは忘れてくれ。」
兵士が咳払いをした。
「つまりは、金持ちしか狙わねーってことか。」
「こんなカードまで残すんだ。ずいぶん洒落た奴らだね。」
アナスタシアがカードを取り出し指先で弄ぶ。
「我々も夜間に街を巡回したりしてはいるのだが。なかなか尻尾が掴めん。黒猫の尻尾を掴むために猫の手も借りたいのが本音だ。」
四人は貰えるだけの情報を貰うと礼を言いその場を去る。宿に戻るとさっそく作戦会議を行う。とは言え、いたって単純である。夜は街の南西部に四人が散らばり発見次第他の三人に知らせ捕まえるというものだ。さっそくその晩から四人は夜の街へ繰り出した。
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