姫様、盗まれる
「どうしたのプリシア?」
「えぇ、確かにここに纏めて置いたんですけど……荷物が見当たらなくて。」
「なんかの勘違いじゃねーのか?」
「いえ、服とか日用品はあるんですけど……路銀が入った袋や本がないんです。」
「なんだそりゃ?」
グレンとヴォルフも部屋の中を探してやる。
「あれ?私のもないぞ。」
「はぁ?二人揃ってどっかに置き忘れたのかよ。」
「いやいや、剣や肩当てもないんだ。他所に置き忘れるわけないよ。」
「ふーむ。宿の者が掃除をした際に片付けたのやも。」
其れを聞きアナスタシアは一階のロビーに向かい話を聞いてくる。
「どうでしたかな?」
アナスタシアが首を横に振る。
「知らないって。そもそも部屋には入っていないらしい。」
「妙ですなぁ。」
「まさか噂の怪盗だったりして。」
「まさかぁ!街に来て即盗まれるなんてマヌケな話……。」
グレンが一笑に付す。
「そんなこと言われても~。じゃあグレンやジイ達はどうなのさ?」
「ふむ。そうですな。確認して参ります。」
ヴォルフとグレンは自室へと向かう。しばらくすると二人とも気まずそうに戻ってきた。
「どうだった?」
「なかった……。」
「え~!?」
「まいりましたなぁ……。」
幸いある程度のお金は四人とも持ち歩いているのでいきなり無一文にはならなくて済んだ。
「ど、どうしましょう~。」
プリシアが不安そうに言う。
「とりあえず宿の者に事情を話して明日の朝、街の官憲に相談するしかないですな。」
「くそ~!マジで怪盗かよ!」
「まだそうと決まったわけではなかろう。単なる空き巣やもしれん。」
四人は連れだって一階のロビーへと向かうとなにやら騒ぎになっていた。
「どうすればいいんだよっ!」
「責任とれ!」
「まったく!高級な宿だから安心してたのに!」
数名の宿泊客が宿の支配人に言い立てている。支配人はなんとか宥めようとペコペコ頭を下げるばかりだ。
「あれってまさか……。」
アナスタシアが近づいていき話しかける。
「あのぉ……。」
「ん?なんだ君もやられたのか?」
「やられたって……もしかして皆さんも?」
「ええ、金目のものをごっそり盗まれたのよ!」
「まったく!忌々しい怪盗だっ!」
「怪盗?なんでわかるんですか?」
「あなたの部屋にはこれがなかったのかしら?」
被害にあった女性が何かを差し出す。
「これって……!?」
それはなんとも人をバカにしたような猫が描かれているカードだった。アナスタシアは三人に振り返り、
「プリシア、グレン、部屋に猫のカードがないか見てきてくれないか?」
と言った。二人は頷き、部屋へと走る。しばらく待つと二人は走って戻ってきた。
「あったぜ。窓際に置いてあった。」
「あ、ありました。同じく窓際に。」
「どうやら本当に噂の怪盗の仕業のようじゃな……。」
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