姫様、フェールズに着く
フェールズ、スタン共和国第三の都とされ国内随一の観光都市である。美しい街並みの中に多くの美術館や博物館が建ち、著名な芸術家も大勢住んでいる。また、富裕層の居住地としても好まれており首都マイルに次いで多い。四人は街に到着するとさっそく宿を探した。
「はぁ、流石は観光地。ここも駄目かぁ。」
「仕方ありませんな。多少値が張りますがあちらの宿にしましょう。」
手頃な宿が悉く埋まっており一行は二部屋だけ空いていた街でも有数の高級宿に泊まることにした。
「つーかーれーたー。」
部屋に入るとアナスタシアはベッドに倒れ込んだ。
「まぁ、姫様ったら。」
アナスタシアは肩当てとマントを外し楽な服装になる。
「お食事はどうなさいますか?宿で食べますか?」
「うーん。せっかくだし外で食べようよ。観光地なんだし名物とかあるだろうし。」
「ではヴォルフ様達に伝えてきますね。」
「ああ、ありがとう。」
四人は連れだって黄昏時の街へと繰り出した。
「そこの角に名物の熊肉のシチューが食べられるお店があります。あっ!でも星が二つしかないです!危ない危ない……。と、なると……ここをまっすぐ進んだ先に……。」
いつの間にか手に入れた観光冊子を手に観光将軍と化したプリシアが先頭を歩き店を探す。
「ね~お腹空いたしここでいいんじゃない?」
既にかなりの時間歩き回っている一同。たまらずアナスタシアが声をあげた。
「駄目です!せっかく来たんですから最高に美味しいお店で食べないと!大丈夫、私にお任せ下さい!」
プリシアの双眸がキラッと光る。三人は溜め息をつきながら大人しく付き従った。それから歩き回ること一時間。ようやく店に入ることができた。
「さぁ、皆さん。フェールズ名物の熊肉シチューです!あとはこのお店の人気メニューを頼んでました!」
テーブルの上に人数分置かれたシチュー。それを前にプリシアが胸を張る。
「じ、じゃあ頂こうか。」
四人はスプーンで熊肉を掬い口に運ぶ。
「ん……美味しい!」
「ふむ、これはなかなか。」
「ああ、こいつぁ美味いな。」
三人が感想を述べるとプリシアはご満悦である。歩き回ったかいもあり一行は食事を満喫できた。ヴォルフとグレンは酒も進みお互い注ぎ合って実に愉しそうである。
「さて、次はどこへ参りましょうか。」
ヴォルフが次の行き先をアナスタシアに尋ねる。
「う~ん。せっかくだしあと二日くらいはこの街で観光していこうかな。その間に決めるよ。」
「いいですね!マイルでは結局ほとんど観光なんて出来ませんでしたし。」
「なるほど。ではそうしましょう。」
「んじゃ、またプリシアの出番だな。頼んだぜ!」
「はい!お任せ下さい!」
四人はフェールズ最初の晩を満喫し、宿へと帰った。
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