姫様とお茶会
アナスタシアが中庭から戻って来ると廊下でプリシアに出会った。
「あっ姫様!良かった。ちょうど呼びにいこうかと。」
「ん?どうしたの?」
「はい、実はこれを作りまして!」
プリシアが手に提げたバスケットを掲げる。
「ふーん。良い匂い……。クッキー焼いたのか。」
「はい!良かったら姫様もエマと一緒に食べませんか?」
「私も?」
「はい。明日はもう出立ですから。姫様、まだエマとちゃんと話してないですよね。」
「う~ん。それはそうだけど……いいのかなぁ?」
アナスタシアが首を傾げる。
「勿論です!私、二人とティーパーティーしたいです。」
「そっか……なら、御呼ばれしようかな。」
「はい!ありがとうございます!」
「じゃあ汗を流してから行くよ。ティーパーティーだしね。」
「わかりました。私は先にエマの部屋に行ってますから後で来てくださいね。」
アナスタシアとプリシアは並んで階段を上り、アナスタシアは三階へプリシアは二階のエマの部屋へと向かう。プリシアは部屋の前に来ると深呼吸をしてドアをノックする。返事はない。もう一度。返事なし。
「エマ、いますか?お話しませんか?」
部屋の中に人の気配はする。プリシアは諦めず語りかける。
「クッキー焼いたんです!約束憶えてますか?一緒にティーパーティーするって!」
カタンッ!
室内で音がした。
「私……こんなサヨナラは嫌です。エマとはちゃんと笑顔で……!」
ガチャッとドアが開いた。エマが俯いて立っていた。
「エマ……。」
プリシアが屈んでエマの顔を見る。泣いていたのか目が赤い。
「あらあら。」
プリシアがハンカチで涙を拭いてやる。
「良かった、エマの顔が見れて。」
「………。」
エマは涙を堪えて俯いたままだ。
「クッキー食べませんか?」
プリシアが微笑みながら言うと、
「………………うん。」
エマが頷いた。
「えへへ~。」
プリシアは部屋に入るとテーブルの上にバスケットを置く。
「自信作なんです。どうぞどうぞ!」
プリシアに促されエマが一つ口に運ぶ。目を爛々と輝かせてエマ。見つめる。
「どうですか!?」
「うっ……お、おいしい……。」
「良かった~!」
プリシアはエマの手を取りブンブン振る。
「わわわわ!」
「あっ!ご、ごめんなさい!」
慌てて手を離すプリシア。
「……。」
「…………。」
気まずい時間。
「……ふ。」
「……ふふ。」
お互いクスクスと笑い合う。
「ふふふふ。」
「ふふ。さぁ、いっぱいありますからどんどん食べて下さいね。」
「うん!」
エマがちょこんと椅子に座り、クッキーを手に取った。
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