Interlude
翌日は各々出立の準備に充てる事になった。とはいえ、ロイドの厚意でほとんどの物を屋敷にいながらに調達できたので、荷造りくらいしかやることがなかったのだが。アナスタシアは朝食が済むと剣を持ち出し中庭で鍛錬に励んだ。ヴォルフ達がまだ休んだ方が良いと進言するも、
「大丈夫。身体が鈍らないように軽く動かすだけだから。」
と行ってしまった。プリシアもいつの間にか姿を消してしまい、ヴォルフは自室で読書、グレンも部屋で休む事にした。
※※※※※
昼過ぎ、グレンの部屋のドアがノックされた。
(……ん?)
ベッドに仰向けに寝転がっていたグレンは反動をつけて立ち上がるとドアを開ける。
「あぁ、いらっしゃいましたか。あの、グレン様にお客様がいらっしゃってます。」
屋敷の使用人が言う。
「客?俺に?」
「左様でございます。」
客とはどういう事だろう。旅をして久しい身である自分にわざわざ居場所を探してまで来る者などいるだろうか。
「あの……お引き取り頂きましょうか?」
グレンが考えているのを見て使用人が気を利かせてくれる。
「あぁ……ちなみにどんなやつ?」
「えっと……男性の方です。かなり背の高いがっしりした方でしたが。」
(まさか……。)
「わかった。それで、そいつはどこに?」
「はい、正門の前でお待ちです。ご確認してからでないと敷地内には……。」
グレンは使用人に礼を言うと玄関から外に出て正門へと向かった。
なるほど、遠目からでも体格が良いのがわかる。
「やっぱりアンタかい。」
「呼び出してすまないな。」
そこには、いつぞや街角であった時と同じ格好をしたガトーがいた。
「まだこの国にいたとはな。」
「まあな、明日出立するんだ。」
「そうか、間に合って良かった。」
「で、なんか用か?」
二人は閉じられた門の冊越しに話す。側には守衛が手持ち無沙汰で立っている。
「用があるのは俺の雇い主だ。」
「雇い主だぁ?どういう事だよ?」
「ああ、今回の件を報告したらお前達に直接礼を言いたいそうだ。どうも話がしたいらしい。」
「話、ねぇ……。まあ一応聞いてみるか。ちょっと待っててくれ。」
グレンはそう言うと一度屋敷に戻る。
「お~い、爺さん。いるか~?」
ヴォルフの部屋をノックする。ドアが開きヴォルフが顔をだす。
「なんじゃ?どうした?」
グレンは今しがたあった事を話す。
「ほぅ……それは気になるのぉ。」
髭を撫でながらヴォルフが呟く。
「ふむ、行ってみるか。」
「わかった、俺も行くぜ。二人はどうする?」
「うーむ。儂らだけの方が良かろう。何があるかわからんし二人はまだ本調子ではないしな。」
「まあ、大丈夫だと思うが……念のためか。」
「念のためじゃ。」
グレンとヴォルフは屋敷の者に出掛けてくると言付けてガトーと共に、アラミス=ウィルビー議員の屋敷へと向かった。
御一読頂き誠にありがとうございました。
良かったらブックマークやコメントよろしくお願いいたします。