姫様、お目覚め
翌日、アナスタシアとプリシアが目を覚ました。
「そうか……そんなことが……。」
アナスタシアは自分が気を失ってから何があったのかをヴォルフから聞くと、ふぅっと息を吐いた。
「兎に角みんな生きてて良かった。」
「左様ですな。まったく、今回は危うかった。」
ベッドで上半身を起こしながらアナスタシアは傍らの椅子に座るヴォルフに尋ねる。
「とりあえずエマもロイド氏も安全なのかな?」
「おそらくは。アミークラももう興味を失ったようですし。」
「それなら良かった。」
「姫様のお身体の具合がよくなり次第……。」
「ここを発つか。私はもう大丈夫だけどプリシアは?」
「はい、姫様よりは軽傷です。今はグレンが事の顛末を伝えております。」
「わかった。じゃあ出立の準備をしようか。」
「御意。」
※※※※※
「……ってわけで、もう女魔術師も刺客も来ることはねーから安心ってことだ。」
「そうでしたか……良かった……。」
プリシアが心底ホッとした表情をする。その側ではエマがずっとプリシアの手を握っていた。
「プリシア、なにか食べたいものない?」
エマがプリシアの顔をじっと見ながら言う。
「うーん、起きたばかりであんまりお腹も空いてないんですよ~。」
「そう……。」
エマが少し残念そうに呟く。
「丸一日以上なにも食べてないんだ。なにか腹に入れた方がいいぜ。果物でも食べたらどうだ?」
「そ、そうでしょうか?じゃあ少しだけ……。」
「わかった!」
エマはぴょんっと椅子から降りて小走りに部屋を出ていった。
「で、俺達も晴れてお役御免だ。」
「あっ……そうですね……。」
「まあ今すぐここを出てくってわけでもないんだ。あの嬢ちゃんには……。」
「はい、そうですね。」
窓から心地よい風が入ってくる。しばしの沈黙の後ドアがノックされた。グレンが開けてやると、カットされた果物が盛られた皿を両手で持ったエマが立っていた。
「じゃあ、ゆっくり休めよ。」
エマと入れ違いにグレンが出ていく。
「はい、プリシア。」
エマが皿をプリシアに見せる。
「まあ、こんなに!ありがとうございます。」
プリシアは大皿を受け取ると傍らに置き葡萄を一粒口に運ぶ。
「美味し~です!エマも一緒にどうですか?」
「うん!」
二人は皿に盛られた果物を食べながら談笑する。たまに沈黙すると廊下から屋敷の修復をしている職人達の声が聴こえてくる。
「あの……エマ……。」
「なに?」
御一読頂き誠にありがとうございました。
良かったらブックマークやコメントよろしくお願いいたします