Interlude
ヴォルフの言う後始末はなかなかに大変だった。まずは隠し部屋に向かいエマ達の治療を行った。二人は外傷はなく、アミークラの魔術で衰弱していただけだった。アナスタシア達と同じ様にヴォルフが魔術で治療してやりグレンとガトーが部屋へと運んだ。次に玄関に寝かせていたアナスタシアとプリシアも各々の部屋へと運んでやると、三人は漸く一息ついた。
「悪りぃな、助かったぜ。」
「いや、お前達には借りがある。」
「ふむ。して、お主はこれからどうする?」
「俺は雇い主に結果を報告するだけだ。」
「そうか……。」
グレンがガトーの持っている包みに視線を移す。
「ああ。弔ってやらんとな。せめて首だけでも。」
こうしてガトーは朝日が昇らないうちに屋敷を後にした。いつの間にか強風はやんでいた。
「さて、ご苦労じゃったのぅ。お主も休むといい。」
「爺さんは?」
「儂は朝になるまで見張りをしておるよ。屋敷もあちこち壊してしまったからの。あの女魔術師が戻ってくるとは思えんが、こうあちこち穴だらけでは盗人が入らんとも限らんしの。」
「けどよ……。」
「フォフォフォ。まあまあ、ここは儂に任せておけ。朝になったらロイド氏にどう話すか考えねばならんからの。」
グレンは最後まで渋ったが半ば強引にヴォルフが休ませた。グレンは部屋に戻るとベッドに倒れこんだ。
「はぁ……疲れた~。」
そう呟くとあっという間に眠りに落ちた。
※※※※※
朝、住み込みではない使用人達が屋敷にやって来ると皆目を丸くした。屋敷の玄関は破壊され、中に入ると玄関ホールを中心にいたるところが壊れている。慌てふためく使用人達に一人起きていたヴォルフが事情を説明する。とは言え、話がややこしくなるのでアミークラの正体等は伏せ、夜中に刺客が現れ撃退したということにしたが。ロイドが未だ寝ているので、仕方なく男の使用人達とヴォルフで可能な限り瓦礫を片付けた。そうこうしていると、昼前にはルードが起きてきた。ルードは玄関ホールにヴォルフを見つけると走りよってきた。
「ヴォルフ様っ!お嬢様は!?旦那様は!?お二人ともご無事なのですか?」
ルードがヴォルフの肩を掴み乱暴に揺する。
「ぬわ~。ル、ルード殿っ!落ち着いて下され。」
ヴォルフがなるべく落ち着いた口調で事の顛末を教える。
「そんなことが……!」
驚愕するルードに瓦礫処理の指揮を任せ、ヴォルフは二階への階段に腰掛ける。しばらくすると今度はエマが現れた。階段に座るヴォルフの元に走ってやってくる。
「プッ!プッ!」
「プ?」
「プリシアは!?」
ヴォルフは努めて優しくプリシアの様子を教えてやった。エマは話が終わらないうちにクルッと身を翻しプリシアの部屋へと走っていった。
「フォフォフォ。ずいぶん仲良くなったもんじゃ。」
ヴォルフは走り去るエマの背中を笑顔で見送った。
御一読頂き誠にありがとうございました。
良かったらブックマークやコメントよろしくお願いいたします。