姫様とグレンとガトー
「と、言うよりも来れないって言ったほうがいいかしら。」
「どういうことだ!ジイに何をしたっ!」
アナスタシアが怒鳴る。
「別に何もしてないわ。ただ、貴女の爺やさんと、ロイドの部屋に結界を張っただけ。よく眠って頂こうと思って外と隔離した空間でお休み頂いてるだけよ。」
「隔離……だと?」
「ええ、外でどんなに騒ごうと音も気配も伝わらないわ。今もぐっすりお休みなんじゃないかしら。」
「どうしてジイを……。」
「だって、あのお爺様が一番強いでしょ?」
話は終わりとばかりにアミークラが手を前に翳す。空中に氷の矢が複数出現する。
「今度はダーツをしましょう。」
アミークラが指先でダーツの矢を放つ真似をすると、氷の矢が一斉にアナスタシア達目掛けて飛んでいく。
「くっ!」
四人は四方に飛び矢を避ける。
「ふふふ、残念。じゃあ次ね。」
すぐさま次の矢が飛んでくる。
(くそっ!このままじゃ、いずれ……!)
アナスタシアが矢を避けながら反撃手段を考えようとする。
「きゃっ!」
プリシアの悲鳴が聞こえた。
「プリシア!」
どうやら氷の矢が手足をかすったらしい。痛々しげに血が滲んでいる。
(ぐっ!逃げてばかりじゃ駄目だ。動けない者から殺られるだけだ。)
アナスタシアはプリシアの元に走ると肩を貸す。
「姫様……ごめんなさい……。」
「バカっ!謝るな!ほらっ歩いて!」
すかさずグレンとガトーがアミークラに攻撃を仕掛け援護する。
「ここにいて。」
アナスタシアはプリシアを柱の陰へと座らせると自分もアミークラへと向かっていく。
「とりゃー!」
気合いと共に斬りかかるが、障壁で防がれてしまう。氷矢を避けながらの攻撃もいたずらに体力を奪う。
「はぁはぁはぁ……。」
「おい。」
ガトーがグレンに声をかける。
「あぁ?なんだ?」
「先程、俺に当てた技……もう一度やれるか?」
「あ、ああ……。ただし、僅かにタメる必要がある。」
「わかった。俺とあの娘がやつの気を引く、その間に。」
ガトーはアナスタシアに視線を送る。アナスタシアが何事かと見つめ返すと、チラッとグレンを見る。僅かに思考した後、アナスタシアは頷く。短い時間だが同じ敵を相手に闘い、最低限の意志疎通はできるようになっていた。
「そろそろ当たるかしら?そ~れ!」
今までで最多の数の氷矢が放たれる。三人はそれらを避け、打ち落としアミークラへと向かっていく。
「ふふふ、懲りないのね。」
アミークラの左右からアナスタシアとガトーが仕掛ける。
「どぅあああ!」
ガトーが障壁に拳と蹴りで連撃を打ち込む。それを見たアナスタシアも剣で何度も斬りかかる。
「あらあら、その程度では無理よ。」
アミークラが愉快げに言う。すると、二人の前に氷の矢が出現する。
「この距離なら避けれないわよね。」
突如、アミークラの背後にグレンが現れる。
「え?」
"虎咆"
グレンが全力で障壁に技を放つ。
ピシッ……ピシッピシッ……パリーンッ!
障壁に亀裂が入り砕け散った。
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