姫様、待つ
アミークラが一歩踏み出すとアナスタシア達は身構えた。
「ふふふ、そんなに怯えないで。」
楽しそうに嗤うアミークラ。
「ちっ!どうするよ?」
グレンがアナスタシアに言う。
「闘うしかない。むざむざ殺されるわけにはいかない。」
「こちらは3人中2人が手負いだぜ?」
「なら諦める?」
「冗談。死んでもご免だぜ。」
アミークラが前方に手を翳すと空中に魔方陣が浮かぶ。
「ふふふ。えいっ!」
魔方陣から魔力が光線となり放たれた。
「!?」
四人は左右に飛び退いた。後方の壁が黒く焦げる。
「狭い場所は不利だ!下に行くぞっ!」
アナスタシアの言葉で四人は比較的広い玄関へと走る。一階まで下りる。
「あら?鬼ごっこかしら?」
アミークラがゆったりと歩きながら追う。
「ダメです!鍵はかかってないのに開きません!」
プリシアが玄関扉を押しながら言う。
「ハァッ!」
グレンが扉を蹴るがびくともしない。
「ヤツの仕業だろう。」
ガトーが呟く。
「せいか~い。」
アミークラが階段の踊り場から四人を見下ろす。
「この屋敷は私の遊び場なの。時間をかけて少しずつ結界を張ったんだから。いつかこういう事もあろうかとってね。」
アナスタシアがアミークラを睨みながら問う。
「そんなにこの国を牛耳りたいか?」
アミークラはわざとらしく考え込み答える。
「そうね。だって面白そうなんですもの。」
「面白いだと?」
「えぇ、私の言葉でこの国が右往左往するのよ。それって滑稽でとても面白いわ。」
「ロイド氏を隠れ蓑にしてか?」
「そうそう。大丈夫よ、飽きたらそのあとは彼に任せるから。」
アナスタシアがグッと剣を握り込むと、隣で空気が動いた。
「この国は貴様の玩具ではないっ!」
ガトーがアミークラに向かって走る。アミークラがガトーに向かって魔力弾を放つが、ガトーはひらりとかわしアミークラに殴り掛かる。
「なにっ!」
繰り出されたガトーの拳はアミークラの前に出現した光の壁に止められる。
「野蛮な人ね。」
アミークラが手を払うとガトーは後方に吹き飛ばされた。間髪入れずにアナスタシアとグレンも攻撃をしかける。
「なっ!」
「ちっ!」
しかし、同様にアナスタシアの斬撃もグレンの蹴りも止められてしまう。
「きゃぁ!」
「ぐあっ!」
二人もガトーと同じように吹き飛ばされた。
「くそっ!あれも魔術かよ。」
グレンが立ち上がり毒づく。
「魔力障壁……!本で読みました。」
プリシアが呟く。
「魔力障壁!?」
「はい、その名の通りアミークラさんが作り出した魔力の壁、身を守る盾です。」
「厄介だな。どうすれば……。」
「突破するには障壁を作っている魔力以上の力で破壊するしか……。」
「あれ以上の力って。」
「ヴォルフ様ならあるいは……。」
「ジイ……どうしちゃったんだ。」
「この騒ぎで起きてこないなんてありえるのか?」
アナスタシア達の会話が聞こえたのかアミークラが嗤いながら言う。
「残念だけど、貴方達の頼みの綱のお爺さんは来ないわよ。」
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