姫様、驚く
「ふふふ……だらしな~い。ふふふ……。」
ドアが開き現れたのはアミークラだった。
「あの子は無事なのかしら?」
アミークラは楽しそうに手を後ろに回しステップを踏むように歩いてくる。あまりに場違いなアミークラの様子に三人は唖然とする。
「ア、アミークラ……さん。エマなら無事です……。」
「そうなの?あらあら、情けない連中ね。」
「ど、どういう事ですか?」
アナスタシアの問いを黙殺しアミークラはニコニコ笑っている。
「アミークラさん、刺客がまだ一人残ってます。気をつけて下さい。」
「ふふふ……刺客ってこれのこと?」
そう言うとアミークラはポイっと球体を投げ捨てた。
「え……?」
ゴロっと廊下に転がったのは、男の頭部だった。
「ヒッ!?い、嫌っー!」
プリシアが悲鳴をあげる。アナスタシアとグレンも息を飲んだ。
「ふふふ……これ、私の仕事部屋にやって来たのよ。もしかしてアナスタシアさんと闘ってたのかしら?」
三人が言葉を失っていると階下から誰かが上がってくる音がした。
「お前っ!?」
ガトーだった。肩で息をしながら階段を上がってくる。身構えるグレンとアナスタシア。
「あら?まだ生きてたのね。グレンさんは優しいのね。」
アミークラが微笑む。
「グレン……と言ったか。俺達の標的は娘ではない。そこの女だ。」
「どういう事だ。なら何故……。」
「何故、エマを誘拐しようとしたんだ!」
アナスタシアが問う。
「娘を拐おうとしたのは、出来る限り血を流さず目的を達するため。交渉材料にするためだった。」
「交渉材料だと?」
ガトーが頷く。
「娘の身柄と引き換えにロイド氏に議長選を降りてもらう、それが最初の計画だった。」
「だった……?」
ガトーは三階まで上がってくる。
「リドリー!?」
転がった男の頭部を見て拳を握りしめる。
「貴様!?」
アミークラを睨み付けるガトー。
「ふふふ……怖~い。だって私を殺しに来たんですもの。仕方ないと思わない?せっかくプレゼントまでしてあげたのに。」
アミークラが事も無げに言う。
「た、確かに。お前達がこの秘書さんを狙ったのは……。」
「俺達の雇い主はこの女さえいなくなればロイド氏が正気に戻ると考えたようだ。今のロイド氏はこの女の傀儡だからな。」
三人はエマの話を思い出す。アミークラが来てからお父様はおかしくなった。
「アミークラさん、貴方はいったい……。」
アナスタシアがアミークラを見つめる。当のアミークラは口許に人差し指をあて何かを思案している。
「そうだわっ!良いこと思い付いた。」
パンッと手を叩くアミークラ。
「あの娘と貴方達、みんな殺しましょう!」
「なっ!?」
アナスタシア達はアミークラの発言に耳を疑う。
「娘を殺しにやって来た刺客と護衛の三人は共倒れで全員死んじゃった。あの娘も殺されてしまった。明日の朝、起きてきたお人形さんとお爺さんと私は凄惨な光景を目撃…………ってお話はどうかしら?」
アミークラは、さも名案のように言いはなった。
御一読頂きありがとうございました。
良かったらブックマークやコメントよろしくお願いいたします。