Interlude
プリシア達は音をたてないようにドアを開けて廊下にでる。
「伏せて下さいっ!」
プリシアがエマ達に小声で言う。
「プ、プリシア様……どうされました?」
身を屈めながら問うルードにプリシアは自分の唇に人差し指をあてながら吹き抜けの階下を指差す。ルードとエマがゆっくり覗くと、玄関ホールでグレンと黒づくめの男が闘っていた。
(そんなっ!もう一人いたんだ……。)
プリシアが見てもグレンの劣勢がわかった。
(姫様……。)
グレンにアナスタシアの援護に向かってもらうのは難しそうだ。
「プリシア……?」
不安そうなエマの声にハッとするプリシア。
(そうだ、まず二人を……。)
「気付かれないように行きましょう!」
プリシアの言葉にエマとルードが頷く。
三人は勘づかれないように壁側を足音を殺して歩き、隠し部屋までやってきた。ルードが壁の一部を押すと部屋側に向かって開いた。
「こちらへ!」
ルードに案内されて中へと進む。部屋の中は絵画や彫像なとの美術品が飾られていた。三人は部屋の奥、入口からは死角になっている台の影に身を潜めた。
「二人はここにいてください。」
「えっ……。」
「私は行かなきゃ。」
エマがギュッとプリシアの手を握る。その手を両手で包み込むプリシア。
「大丈夫ですよ。あの人達を追い返したら戻ってきますから。」
プリシアが笑顔で言うと、エマは頷き手を離した。
「ルードさん、よろしくお願いします。」
「かしこまりました。プリシア様もご無事で。」
プリシアは一人で部屋を出ると先程階下を覗けた場所に戻る。玄関ホールではグレンが侵入者相手に劣勢ながら健闘していた。
(グレンさんを援護してあの人を追い返したら二人で姫様の手助けを……。)
プリシアが杖を構える。先程みたいに魔術で牽制しようにも二人が近接しているのでなかなか標的が定まらない。じっと機会を伺うプリシア。するとグレンが侵入者に投げ飛ばされた。
(今だっ!)
プリシアは侵入者を取り囲むように氷の矢を放った。しかし、矢が到達する刹那、こちらの存在に気づいた侵入者の視線がプリシアを捉えた。
(気付かれた!)
矢を難なく避けた侵入者が二階にいるプリシアに向かって走ってくる。グレンもプリシアに気づいた。
「はぁはぁっ!ま、待ちやがれっ!」
グレンはなんとか立ち上がり侵入者を追う。いくらプリシアが魔術を使えても相手が悪い。すぐに殺されてしまうだろう。
「………!」
二階までやってきた侵入者に正面から向き合うプリシア。
「ど、どうしてこんなことするんですか?」
侵入者の歩みが止まる。
「どうして!どうしてこんな酷いことをするんですか?」
プリシアの問いに侵入者が答えた。
「仕事だからだ。」
そういうとプリシアに向かって突進してきた。
「プリシアっ!!」
漸く階段下まで来たグレンが叫ぶ。侵入者が腕を振りかぶる。一撃で仕留めるつもりだ。プリシアは目を瞑った。
「閃光!」
周囲に目映い光が走った。
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