Interlude
皿が台から落ちて割れる音が響く。
「しっ!」
グレンが侵入者の頭部目掛けて廻し蹴りを放つ。背をそらせてかわす侵入者。
「!?」
避けたはずの蹴りが頭部に迫る。ズシッと重たい衝撃が左腕走った。辛うじて蹴りを受け止めた侵入者はグレンの腹部に突きを放った。
「ぐっ……!」
痛みを堪え左足を軸にして連続で蹴りこむグレン。
"連烈蹴"
「!!」
侵入者は両腕を盾にして後ろに跳ぶ。グレンは一足跳びに間合いを詰め追撃する。流石に目が暗闇に慣れてきたので相手の位置は把握できる。
「はぁっ!」
グレンの怒涛の拳蹴を悉く捌く侵入者。しかし、僅かずつだが後退していく。
「せやっ!」
グレンの蹴りを防いだ侵入者が後ろに飛ばされる。後方にあった食器棚に激突し、皿の雪崩がおきる。厨房中に陶器の割れる音が響き渡る。
「ちっ……また怒られちまうぜ。」
グレンが敵の攻撃に備えて構える。対峙する侵入者も姿勢を下げ構えると、急に厨房に光が射し込んだ。
「だれかいるのかっ!」
ランプの光を左右に向けながらルードが厨房の入口に立っていた。
「執事さんっ!」
「なっ……グレン様で御座いますか!?」
「ああ、手短かに話す。刺客が来た。ここは俺が引き受けるからあんたは上にいるナーシャ達と一緒にお嬢ちゃんと親父さんを!」
「な、なんと!わかりました!」
ルードは事情を察し、踵を返して走っていった。
「やれやれ、悪いな待たせちまって。さあ、続きをやろうぜ。」
グレンがニヤリと笑う。
「…………。」
侵入者は構えたまま何か思案している。
「ん?どうした?」
グレンを見ながら侵入者が尋ねる。
「ナッシュを殺ったのはお前達か?」
「ナッシュ?誰だそりゃ?」
「…………。数日前にあの女を殺すために俺達の仲間が来たはずだ。」
「あの女ってのは……。」
エマをあの女呼ばわりはしないだろう。と、するとこの屋敷にいる女……。
「あのアミークラって女か。」
「……そうだ。」
「知らねぇな。そもそも俺達はお嬢ちゃんの護衛だしな。」
侵入者は解せないといった表情になる。
「よくわからねーが、どうするんだ?もう終わりか?」
侵入者はキッとグレンを見据えた。
「いや、目的は同じだ。順番が違うだけだ。」
侵入者は静かに言った。
「なんだそりゃ?」
「いくぞ……。」
先に仕掛けたのは侵入者だった。
(速いっ!)
グレンは連続で繰り出される拳打を捌き防ぎながら反撃の切っ掛けを探る。しかし、割り込む隙がない。
(ちっ……さっきまでは本気じゃなかったってことか。)
「しゃあっ!」
侵入者の攻撃の繋ぎ目を狙いグレンが突く。
(しまった!誘われた!)
侵入者は冷静に捌き、グレンの腕と胸元を掴み入口の方に投げ飛ばした。
(くっ!)
グレンが受け身をとるために空中で回転すると、目の前に侵入者が。
「なっ!」
着地する前に背中に蹴りをもろに喰らう。
「がはっ!」
グレンは廊下から屋敷の入口の辺りまで蹴り飛ばされて床に這いつくばる。
「つっ…………!」
流石にすぐには起き上がれない。足音とともに視界に影が落ちる。
侵入者がグレンの顔面目掛けて脚を振り下ろした。
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