Interlude
プリシアは急いでエマの部屋へと走る。
(エマ……。)
部屋の前まで来るとノックもせずに中へと入り、ベッドで寝ているエマを起こす。
「ん……ん……。」
「エマっ、起きて下さい!エマっ!」
悪いとは思いながらも無理やりエマを抱き起こし身体を揺する。
「ん~……プリシア……?」
目を擦りながらエマが目を覚ます。
「どうしたの?プリシア。」
「あっ……えっと……。」
どう説明したものかとプリシアが思案していると、廊下を走る音がした。
「プリシア?」
エマが不安そうにプリシアを見る。
(わ、私がしっかりしなきゃっ!)
「エマ、落ち着いて聞いて下さい。前にエマを誘拐しようとした人達がやって来ました。」
「え……。」
エマの顔が恐怖に歪む。
「でも大丈夫です!私たちみんなでエマを守りますから心配しないで下さいね。」
プリシアは笑顔で言い聞かせる。
「う、うん……。」
エマがプリシアの手を握る。すると部屋のドアがノックされた。
エマを背に庇い杖を構えるプリシア。
「お嬢様っ!お嬢様っ!ルードでございます!」
「ルードさん?」
プリシアが警戒しながらドアを開ける。
「お嬢……これはプリシア様っ!」
「ルードさん、どうしたんですか?」
「プリシア様こそっ!いえ、私はグレン様から旦那様とお嬢様を起こして皆様に伝える用にと。」
「グレンさんが?」
「はい、厨房の方で激しい物音が致しましたので見に行ったのですが、グレン様が賊と闘っておりまして。」
「そんなっ!」
侵入者は一人ではなかったのだ。グレンが闘っているならヴォルフの元に行った方が安全かもしれない。しかし、上の階ではアナスタシアがもう一人の侵入者と闘っている。
(どうしよう……。エマ達を連れて上に行くのは危険かも……。)
ヴォルフが異常に気付きアナスタシアと共に闘うか、下まで降りてきてエマ達を守ってくれるならいいのだが。
「お父様は?」
エマがルードに尋ねる。
「そ、それが……部屋には鍵が掛けられていまして、いくらお呼びしても返事がないのです。」
「わかりました。今、上の階でナーシャ様が、下ではグレンさんが闘ってます。下手に動き回るより隠れていた方が安全かもしれません。」
「な、なんと!上でもっ!」
「はい、この階で身を隠せる所はありますか?」
プリシアがルードに尋ねる。
「か、隠れる……でございますか?え~っと……。」
ルードが考え込む。
(早く……早くしないと……。)
するとエマがプリシアの手をクイクイっと引っ張った。
「どうしましたか?」
「ある。廊下の奥に。」
「おぉ!そうです!廊下の奥に旦那様の集めた美術品が飾られている部屋が御座います。盗人対策で入口が壁のように模してある部屋です。」
「わかりました、そこに行きましょう!」
三人は人がいないのを確認して廊下にでる。念のため再度ロイドの部屋で呼んでみたが返事はなかった。しかたなく三人は先に隠し部屋へ向かう。
(姫様っ!グレンさんっ!ご無事で……。)
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