姫様、奮闘
「は、離れて下さい!」
杖を構えながら男に言い放つプリシア。
「も、もうこのお屋敷に来ないって約束してくれるなら……!」
震えながら男に警告するプリシアに失笑する男。
「ふっ……手を引けってか。そりゃ随分お優しいな。」
態勢を立て直したアナスタシアが横凪に剣を振るう。男は後方に宙返りしてそれを避ける。
「生憎、もうただの仕事じゃなくなったのさ!ナッシュの仇をとってやらないとな!」
男が短刀をプリシアに向かって投げる。
アナスタシアがそれを剣で叩き落とし、間髪いれず男と間合いを詰める。
「たぁっ!」
アナスタシアが男の肩に斬りかかる。男は素早く腰に隠していたもう一本の短刀を持ち受け止める。
「プリシアっ!ここは私がっ!エマの所に行ってくれ!」
「で、でもっ!」
「大丈夫だからっ!早くエマの所にっ!」
プリシアは一瞬思案した後に階段へと走った。
「姫様っ!ご無事でっ!」
意外にも男はプリシアを素通りさせた。
「舐められたもんだな。援護なしで俺をどうにかできると?」
「そっちこそ、行かせて良かったのか?」
「言っただろ。目的は仇討ち、娘に興味はない。」
「さっきからいったい何のことだっ!」
鍔迫り合いから半歩下がりアナスタシアが斬撃と突きを連続で放つ。切っ先が男の肩を斬り鮮血が流れる。
「ちっ……。」
顔色を変えずに構えをとる男。
(身体が軽いうちに決着をつけないと。)
焦るアナスタシアだが打ち込める隙がない。男から発せられる殺気が迂闊に踏み込めば死であることを容易に想像させた。
「こちらも急ぎなんでな。」
男はそう言うとアナスタシアに向かって突進してきた。
(来いっ!)
剣を正面に構え迎え撃つアナスタシア。視界から男が消えた。
(なっ!)
と同時に両脚に痛みが走った。
「っ痛……!」
屈んだ態勢でアナスタシアの両脚を切り裂いた男は振り下ろされた剣を避けて背後をとる。
「くそっ!」
身体を回転させて背後の敵を切り払おうとするアナスタシア。剣は空を斬り廊下の壁に刺さる。
「しまっ……!」
その隙を見逃す男ではなかった。
「ぐはっ!」
腹部に強打をくらい目の前が白くなるアナスタシア。
「子供は寝てる時間だ。」
ふらつくアナスタシアを蹴り飛ばす。悲鳴もあげられず後方に飛ばされて壁に激突するアナスタシア。
「……………。」
気を失ったアナスタシアを一瞥し男はその場を去った。
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