Interlude
「俺に行かせてくれ。」
ナッシュがガトーに申し出る。
「俺が行く。頼む。」
再びナッシュが言う。
「わかった。油断は……。」
「しない。必ず仕留める。」
「そうか。」
ナッシュが力強く答え部屋を出ていく。
「一人で行かせて大丈夫かね。」
ソファに座るリドリーがナッシュの出ていったドアを見つめながら言う。
「敵の全容が不明である以上、三人で乗り込む訳にはいかん。」
「最悪全滅もあるってことか?」
「我々にはアラミス氏の護衛の任もある。」
「確かにな。それにアイツは一人で行きたがるか。」
ガトーは窓から外を眺めている。
「別にアイツの失敗ってわけでもないだろうに。律儀なやつだぜ。」
※※※※※
深夜、ベルナール邸を見上げる影があった。
(行くか……。)
黒装束に頭巾で目元以外を隠したナッシュが塀を飛び越える。あの女の部屋の位置は確認済みだ。ナッシュは身軽に屋敷の壁を登っていく。アミークラの部屋の窓まで来ると、そっと窓を引いてみる。
(開いたっ……!)
以外にも窓の鍵は開いていた。もっと警戒されていると思っていたが杞憂だったのだろうか。開いた窓から中を覗く。部屋の灯りは消えていたが、月明かりに照らされ部屋の様子は探れた。視界の置くの方にあるベッドが膨らんでいるのが見えた。ナッシュはナイフを構えベッドに近づく。髪の長い女がこちらに背を向け寝ている。容姿の特徴からしてアミークラだろう。ナッシュは躊躇いなくその首筋にナイフを突き立てた。
(なっ!?)
ナイフは女の首に深々と刺さる。その瞬間、どろどろと女の形が崩れていく。
「ふふふ。いらっしゃい、待っていたわ。」
背後から声をかけられ振り向くナッシュ。
「き、貴様っ!」
「なかなか来ないから毎日待ちくたびれてたわ。以外と臆病なのね。」
「ちっ!」
ナッシュはナイフを持ち直しアミークラに切りかかる。その刃が届く寸前に床から生えた触手の様なものに絡み付かれるナッシュ。
「なっ!なんだこれは!?」
ナッシュは力いっぱい足掻くが触手はびくともしない。
「ふふふ。もう夜も遅いわ。騒いだら迷惑よ。」
アミークラがゆっくりナッシュに近づく。
「貴様……魔術師か!?」
「ええ。その通り。だからいきなり部屋なんかに来たらダメよ。こんな怖い目にあっちゃうわ。」
愉しそうに嗤うアミークラ。
「さてと……もう遅いし寝ましょうか。寝不足は美容の大敵なのよ。」
「ぐっ!うぅぅ!」
触手はナッシュの全身に絡み付き声すら出せなくなる。
「ふふふ。おやすみなさい。」
ベルナール邸にナッシュの声にならない悲鳴が響いた。
御一読頂き誠にありがとうございました。
良かったらブックマークやコメント宜しくお願いいたします。