Interlude
「~~♪」
「……。」
今日もプリシアはエマの部屋に来ていた。何をするわけでもなく、ただ取り留めもないことを話したり(プリシアが一方的にだが)、エマにピアノをねだったりと何かにつけてやって来るのだ。
「エマさんはビーフシチューが好きなんですね。なるほどなるほど。」
エマも少しずつだがプリシアの強引な接し方に慣れて来たのか会話が続くようになってきた。
「私はですねー特に嫌いなものはないんですよ~。あっ!でも以前にグレンさんが虎を食べようとしてたんですが、あの時は遠慮しましたねー。」
「と、虎?」
エマが目を丸くする。
「そうなんですよ~。私もビックリしました!」
プリシアがエヘヘと笑う。エマも笑顔を浮かべた。
「そういえば今日は家庭教師の先生は来ないんですか?」
「うん……今日はお休み。」
「お勉強やピアノでエマさんは忙しいですね。」
「そんなことない。どっちも好きだから。」
「そうなんですか!じゃあ私と一緒ですね。私もヴォルフ様に魔術を教わっているんですが、とても楽しいですよ。」
「魔術……?」
エマの表情が少し曇る。
「どうしましたか?」
「私……魔術って……なんかヤダ。」
「そうなんですか?どうしてです?」
プリシアが困惑したように尋ねる。エマは暫し沈黙した後に、ポツポツと話し出す。
「あの人も魔術師って言ってたから。」
「あの人?」
「アミークラ……さん……。」
「あ~確かアミークラさんも魔術で占いをするとか……。」
「あの人が来てから……お父様変わっちゃったから。」
「変わった?」
「……うん。」
エマが下を向いてしまう。プリシアが言葉を選びながらエマに話す。
「エマさん?」
エマに寄り添い膝をつき目線を合わせるプリシア。
「私、エマさんと仲良くなりたいんです。お友達になりたいなーって。だから何か困ってることがあるなら話して欲しいです。」
「私と……友達?」
「はいっ!」
又してもエマは下を向いてしまう。プリシアは根気強く待つ。次にエマが顔を上げると、助けを求める表情だった。
「大丈夫!私たちに任せて下さい!」
エマがコクンと頷き語りだした。
※※※※※
アミークラがベルナール家に現れたのは半年程前だった。その時、エマは原因不明の病に侵されていた。街一番の医者を持ってしても手がつけられず、毎日苦しむエマにロイド氏は憔悴しきっていた。
エマを亡くすかもしれない恐怖にロイド氏は医者だけではなく、怪しげな祈祷師にまですがるようになった。そんな中、洗われたのがアミークラだった。アミークラはエマを見るとすぐに儀式の準備を始めた。壁に模様を描き、様々な術具を揃え呪文を唱える。するとエマの様態が嘘のように回復したのだ。ロイド氏はたいそう喜びアミークラに多額の謝礼を払った。アミークラは自分は旅の占い師だと語ると、ロイド氏は礼も兼ねて自分の政治家としての仕事を手伝わないかと提案した。アミークラは了承し住み込みで働く事になった。この時はエマもアミークラを命の恩人と思っていたので特に何も思わなかったという。しかし、変化はすぐに起こり始めた……。
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