姫様の最近の日常
帰りの馬車。余程疲れたのかエマがプリシアの隣でもたれ掛かり寝てしまっている。
「ふふ、寝ちゃいましたね。」
「寝かしといてあげよう。疲れたんだよ。」
二人はエマを起こさないように小声で話す。
「何事もなくて良かったですね。」
「ああ、まだ安心はできないけど。」
アナスタシアは馬車の窓から流れる景色を眺めながら言う。まだ黄昏時、人通りもそれなりにある。敵が襲ってくる可能性は低いだろう。とは言え、敵側の情報はほとんど無い。雇い主はわかっているが、それすらロイドの推測に過ぎない。
(待ち構えるっていうのは性に合わないな……。)
そんなことを考えていると馬車が止まった。どうやら屋敷についたようだ。
「エマさ~ん。着きましたよ~。」
プリシアがエマを優しく揺する。
「……ん~ん……ん?」
目をパチパチさせながらエマが目を覚ました。
「お家につきましたよ。」
「…………!?」
エマが照れくさそうに馬車を降りる。荷物は御者に任せ三人は屋敷へと入った。
「お帰りなさいませ。」
ルードが出迎えてくれる。エマは自室へと引っ込んでしまいアナスタシアとプリシアは夕食までラウンジで過ごすことにした。すると、グレンが濡れた髪をタオルで拭きながら現れた。
「ん?ああ、帰ってたのか。」
「うん、さっきね。グレンはもうお風呂?」
「ああ、中庭の修復で煤やら土やらで汚れたからな。そっちは何事もなかったか?」
「はい、特には。」
「そりゃ何よりだ。」
ドカっとソファに座るグレン。三人は今日あったことを話していると、アミークラが通りかかった。
「あら、皆さん。お揃いで楽しそうですね。」
「あっ、アミークラさん。」
「なんでもエマちゃんの買い物に付き添って頂いたんですってね。」
「ええ、今帰ったところです。」
「そう、無事でなによりですわ。これからも宜しくお願いしますね。」
アミークラは三人に微笑むと去っていった。その後、夕食の時間になりヴォルフとエマも一緒に食事をとった。今日もロイドは外食らしく食事には現れなかった。食後、アナスタシアとプリシアはヴォルフと共に中庭にでて魔術の修行に勤しんだ。
「お~!ちゃんと直ってる!」
「一日中カンカンと騒がしかったですからな。」
「グレンさん器用なんですね~。」
いつも通り、アナスタシアとプリシアは体内を流れる「魔力」を感じて制御する訓練から行う。
「ふむ、二人ともだいぶ魔力の制御が上達しましたな。」
ヴォルフは内心二人の上達の早さに驚いていた。
(姫様は属性の得手不得手はあるが、それでももうすぐ実戦で使える位になるじゃろう。しかし、驚くべきはプリシアじゃ……。)
プリシアの上達速度はアナスタシアを凌駕していた。もともと素養があったのか、教えた事を即吸収し、さらにそれを実践する早さが尋常ではない。
(これは……意外な才能じゃな。)
ヴォルフは二人の生徒の成長を心のうちで喜ぶのであった。
御一読頂き誠にありがとうございました。
良かったらブックマークやコメント宜しくお願いいたします。