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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜  作者: 波羅月
第0章  新たな出会い
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第2話『学校案内』

 俺たちはこの学校の先生と名乗る山本に、学校の案内をしてもらうことになった。今はまだ校門から入ってすぐそこにいる。



「うわぁ〜、楽しみだー!」



 大地が子供みたいにはしゃいで言う。実際子供だけど。



「ねぇねぇ晴登、グラウンドめっちゃ広いよ!」



 ここにもはしゃいでいる奴がいた。この二人はもう少し中学生という自覚を持たないと。心が小学生のまま変わっちゃいない。



「君たちはまだまだ子供だね」



 山本も微笑みながら、俺の考えと同じようなことを言った。

 ったく、コイツらには進歩が必要なんだよ。



「いーじゃないですか。ちょっとくらいはしゃいじゃっても」


「お前、一応案内されてる身だからな」



 頭は良いのに脳みそがてんで餓鬼なんだよな、大地は。そして莉奈はわがままお嬢様、ってとこか。

何でまともなのが俺だけなんだよ。



「ねぇ……えっと君たちの名前は? まだ聞いていなかったね」



 山本が、名前を呼ぼうとしたが名前がわからない、といった様な感じでそう言ってきた。初対面あるあるかな。

 ということで、俺、大地、莉奈の順で自己紹介をした。



「うん覚えた。よろしくね、晴登君、大地君、莉奈ちゃん」



 山本が名前を確認するように復唱した。

 そういえば、初対面の人の名前って中々1回じゃ覚えられないよね。この人はちゃんと覚えるタイプみたいだが、俺はあんまり覚えられないな……。



「さて、どこから見る?」


「グラウンド!」



 話が変わり、山本が発した問いに大地が即答する。大地はサッカー部に入るって言ってたから、それでグラウンドが気になるんだと思うけど……



「もう見えてるよ……?」



 これにはさすがに山本も困っていた。何せ今右側を見るとグラウンドが広がっている。実物が既に見えてるので、山本から説明を請うまでもないのだ。



「でもそうだな……。あ、このグラウンドは地面が特殊でね、水はけがかなり良いんだよ。雨が降っても、1時間くらいで元通りになるよ」


「すげぇ!?」


「それに見てわかる通り、とても大きいだろ? 広さは……大体通常の中学校のグラウンドの3倍くらいあるかな」


「そんなに!?」



 グラウンドの特徴を聞いた俺は、声を出して驚いた。大きさが普通の中学校の3倍って……。敷地の広さはどうなってんだよ、この学校。

 改めて見回せば、確かに小学校のグラウンドとは比べ物にならない。ここで鬼ごっことかしたら絶対楽しい。



「……とまぁ、これくらいしか説明できないけど?」


「いや、十分です!」



 山本が困ったように言ったが、大地はそれでも喜んだようだ。

 こいつは多分、ただただグラウンドの広さに驚いただけだろうな……。






「晴登君は行きたい所はないかな?」



 場面がグラウンドの近くから校門の近くへと戻ってきた頃、山本が俺に対して訊いてきた。



「俺は特に──あ、秘密基地的なとこはありますか?」



 俺はふと思ったことを口にしたのだが、その直後、しまった!と感じた。

 後ろから視線を感じ、恐る恐る振り向くと……大地と莉奈にすごく睨まれていた。その眼は「散々人を子供扱いしといて何言ってんだ」と言わんばかりだ。

 はい、俺も子供でした……。



「ふむ。よし、じゃあこっちに来てくれたまえ」


「?」



 山本は俺たちをよく見て、少し考える仕草をしたかと思うと、俺たちをどこかへと率い始めた。

 俺たちはただ山本に連れられ、校舎の裏の方角へ向かう。もしかして、本当に秘密基地があるのだろうか?






 山本について歩いていくと、小さな森に入った。

木々は手入れをされていないのか、青々と生い茂っており、木陰を作って太陽光を遮っていた。お陰で春だというのに、暗くて肌寒い。



「ここなんかどうだい?」


「え?」

「これは……」

「なんか凄い……」



 そんな感想を持っていた俺らの目の前に、かまくらのような土の塊が映った。大きさもちょうどかまくら位だ。恐らくこれが山本の紹介したい物なんだろうと、一目で察しがついた。

 そしてそれを見た俺たちは、驚きの混じった声で口々に言った。



「中に入るかい?」


「入れるんですか!?」


「こっちにおいで」




 案内された先には錆びた鉄の扉が、土の塊にポツリと張り付いていた。

 中に入るかと誘われた俺たちは、話し合い、興味本意で行ってみることにした。さすがに危ない場所では無いだろう。



「あ、でも、この扉は閉めると中からは開かないんだったか?」


「やっぱやめときます!」



 山本が今思い出したかのようにあっさりと言った。


 つか、無茶苦茶危険じゃねぇか! 俗に言う『開かずの扉』か?

 これはやっぱり入るのは止めた方がいいと思う。



「え? いいじゃん、晴登。入ろうぜ!」


「嫌だよ! 閉まったらどうすんだ?!」



 大地が何を聞いていたのか、そう言った。もちろん、俺はそれを否定する。


 扉が閉まったら中から出られないんだよ? 偶然にも閉まったら、俺らは一生この中で暮らすんだぞ? そんなのマジ勘弁だよ……。



「結局どうするんだい?」


「入る!」

「入らない!」



 山本の問いに対し、大地がYES、俺がNOで答える。だがそのまま一向に、決まる気配はない。

 そこで俺たちは莉奈にも決めてもらい、多数決で決めることにした。



「莉奈! どうしたい?!」


「入りたい!」



 莉奈はあっさりと答えた。こいつを信じた俺が馬鹿だった……。


 結局俺たちはこのドームに入ることになった。







「山本さん。どうしてこの扉は外からしか開かないんですか?」


「昔の人が設計したものだから、その仕組みや意図はわからないな。でも心配することじゃない。開けっぱにしとけばいいんだ」



 さすがに山本も扉の構造は知らないようだ。というか昔の人……ってことは、この学校の創立はかなり昔と考えられる。


 てか開けっぱって風とかで閉まりそうな気がするな……。まぁ、鉄製っぽいから平気か。



「それじゃあ行くよ」



 山本の声と共に、俺たちは中に足を踏み入れた。







「はぁー、ホントについてないよ……」



 私、戸部 優菜は今、ため息をつきながら家へと帰っている。

 どうしてそんなことになったかというと、答えは一つ。学校に早く来すぎてしまったからだ。今日は入学式なので、それに合った集合時間があったようだが、知らずに通常の登校時間に合わせて家を出てきてしまった。おかげで学校に残る訳にもいかず、渋々帰路についたのだ。


 しかも、帰る途中に人にぶつかりそうになるし、もう今日は厄日か何かかな……。


 とりあえず30分後位にもう一回家を出て、学校に行こう。


 あ、もしかしたらさっきの人たちも勘違いで日城中学校に行ってる途中だったのかな? たぶん方角的にそうだろう。それならご愁傷様です。







「何だこりゃ……」



 俺がドームに入っての第一声はそれだった。なぜなら扉を開けた瞬間、目の前には地下に続くと思われる階段が続いていたからだ。確かにドームを見た時点で、地下の施設への入口というのは察しがつくべきだろうが。

 それにしても今その階段を降りているが、とてもじゃないが終わりが見えない。どこまで続いているのだろうか?



「山本さん、この先に何かあるんですか?」


「もちろん」



 俺の問いには当たり前だと言わんばかりに答える山本。いやそうだろう。むしろ何も無かったら逆に怖い。

 ただ、何だか嫌な予感がしてきた。



「すっげぇ~!」


「雰囲気あるね~」



 そんな俺の気を知るはずもない子供2人が、見慣れない光景にはしゃいでいる。この不穏な胸騒ぎが無ければ、俺もあんな風に楽しめるのに……。



「ま、まだですか……?」


「もう少し」



 俺は怯えた声でそう訊いた。が、返ってくる答えは先程と似て変わらない。

 次第に太陽の光が入らなくなり、何も見えないほど暗くなってきた。



「おお、暗い!」



 だが、俺の気持ちとは正反対に大地は喜んでいた。全く、なんて気楽な奴だ。

 そう思った直後、足が平面の地面を捉えた。



「待たせたね。この廊下を進もうか」



 山本が言った。

 なるほど、階段が終わると廊下が続いているのか。勝手な納得をした俺は、そのまま山本の後ろをついて行った。



「じゃあ、頑張ってね」


「え?」



 不意に山本が呟いた。恐らく俺たちに言ったのだと思うが、意味深過ぎて全然わからない。


 どういうことですか、と俺が尋ねようとしたその刹那、急に足元がふらついた。大地も莉奈も俺と同じようになっている。


 何が起こったのだろう。貧血かと思ったが、その正体はすぐにわかった。


 とてつもなく眠い……。

 逆らうことのできないその眠気は俺をどんどん蝕み、遂に俺は膝を折った。



 薄れゆく意識の中で、暗くて何も見えないはずなのに、俺の目は小さく笑みを浮かべた山本の姿を捉えていた。



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