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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜  作者: 波羅月
第0章  新たな出会い
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第13話『加入』

 柊君がクラスに来てから2週間は経った。

 未だに女子にチヤホヤされているが、彼はそれにも慣れたようで、接し方を学んだようだった。

 その一方で、相変わらず男子が羨ましそうにその様子を眺めているが、今のところ何かが起きそうな雰囲気はない。



「狐太郎くーん、一緒に帰ろう!」


「あ、ずるい! 私もー!」


「は、はい。良いですよ」



 こんな様子ももう日常茶飯事だ。

 まだ少し怯えているようにも見えるが、この調子なら大丈夫だろう。これで柊君の問題は片づいた。




 だが、俺にはまだ課題があった。暁君のことだ。


 俺はまだ彼と話したことがないし、彼もまた誰かと話している様子もない。いつも窓の外を眺めていたり、教科書を読んだりしているのだ。

 真面目、という言葉で表現しようにも、あまりに人との関わりが少なすぎる。


 俺は柊君と友達になった以来、コミュ障が治ってきたのでは、と感じていた。たぶんそれは妄想ではない。もう俺は気軽に人と話せるんだ。だからこそ、暁君とも友達になりたい。


 彼は近寄りがたい雰囲気を出しているが、今の俺ならきっと話しかけれる!




「──ということを考えているんだけど」


「大丈夫だろ、普通に」


「そうだよなそうだよな!」



 大地の反応に思わず嬉しくなる。

 ちなみに今は下校中だ。もちろん莉奈も居るので3人で帰りながら、他愛のない会話をしている。



「遂に晴登がコミュ障脱出か~!」


「お前の魅力が1つ減ったな」


「え!? 魅力だったの!?」



 他愛もない……はずの会話をする。



「でも難易度高いんじゃない? すごく堅物そうじゃん」


「話してみないとわかんないだろ」


「うんうん」


「てかさ、昨日のテレビドラマ見た?」


「え、見てないけど……」



 話はいつの間にか、暁君のことから昨日のドラマに変わってしまった。

 おかげで、俺の頭の中から暁君のことが次第に薄れていった……。







 翌日になり、昼休みを迎えた。



「さて。昨日……どころか今まで忘れていたが、今日は暁君に話しかけよう! 大地だって大丈夫と言ってくれたし!」



 俺は危うくだが、目的を思い出していた。

 暁君との交流。そうすれば、このクラスとは全員馴染んだことになる。よし、やるぞ!


 ──でもどこだ? 昼休みなのに教室にいないな……。ちょっと周りに訊くか。



「暁? さっき教室から出てったのは見たぜ」


「先生に連れて行かれなかった?」


「何かやらかしたんじゃねーの?」



 ……さて。情報は集まった。感謝する皆よ。


 先生に連れて行かれた、ということは職員室だろう。にしても、どうして連れて行かれたんだ? 暁君は悪いことをしなそうだけど……。

 とりあえず行ってみるか。







 職員室に着いた。



「いないな……」



 暁君の姿は職員室前の廊下にはなかった。

 てことは中なんだろうけど……いきなり入る訳にはいかないよな。待つしかない。






「失礼しました」


「!」



 お! 暁君が職員室から出てきた! やっぱ職員室にいたか。よし話しかけよう!



「ねぇ暁君!」


「あぇっ!?」


「へ?」



 ……何だ今のは。そしてビビりまくった暁君の顔。

 明らかに驚きすぎだろ。もしかして……ビビり? できてる人間ほど変な弱点があったりするって訳?


 まぁいい。とりあえず会話だ。



「な、何か今の面白いね」


「そ、そっすか……」



 俺がそう言うと、暁君は照れたような表情で答えた。けど、どこか面倒臭そうに見える。


 ちょっと待って。なんかわからんけど話しにくいこれ。しかも話すこと考えてなかったし! アホか俺は!



「な、何か用っすか……?」


「えっと……今職員室で何話してたの?」


「……あんたには関係ないっすよ。用がそれだけなら失礼するっす」



 暁君が踵を返し、向こうに行こうとする。話したには話したが、これではまだ友達とは言えない。せめてもうちょっとだけ……!



「待ってよ! 良いじゃん、聞かせてよ?」


「何すか。野次馬っすか? あんた」



 野次馬……確かにその通りだな。けどここで退く訳にはいかない。嫌われるのだけは勘弁なんだけども……。



「はぁ……部活の話っすよ」


「部活?」



 暁君はめんどくさそうにしていたが、これ以上絡まれる方が面倒だと思ったのかそう言った。暁君が入っている部活で何か遇ったのかな?



「俺がまだ何の部活にも入っていないって」


「あ、そっち……」



 この学校では、生徒は絶対何かしらの部活に所属しなければいけないという規則がある。だから彼は呼び出されたのだろう。

 ちなみに帰宅部も部活ということになるらしい。不思議だ。



「別に入りたい部活はないんすけどね」



 その気持ちはよくわかる。俺も前までそうだったから。

 ……ん? ちょっと良いこと思いついたかも!



「じゃあさ、魔術部に来ない?」



 俺の部活に入らせる!

 そうすれば交流も多くなり、例え気難しかろうと何とかなるはずだ!

 さぁ反応は……?



「……」



 無言で睨まれてる!? しかも若干引いてない? 何で!?


 ……あ。よくよく考えたらこの部活は変な部活だったわ! そりゃその反応も当たり前じゃん!


 うわ、失敗した……。




「別に良いっすよ」


「え?」



 彼の返答に、うつむかせていた顔をすぐさま上げる俺。

 てか良いの!? OK!? てっきりNOだと思ったんだけど!



「だから、良いって言ってるんすよ」


「ホントに!?」



 ついつい俺は暁君に思いっきり近づいてしまった。その距離、10cm。



「う……。ホントっす……」


「そっかそっか~!」



 あまりの嬉しさに変な喜び方をしてしまうが、あくまで普通に喜んでいる。

 相手も少々どころかかなり引いてるけど……気にしない!



「じゃあ放課後に部室に来てよ!」


「部室ってどこっすか?」


「え? あぁ……じゃあ案内するから教室で待ってて!」


「う、うっす……」



 そう言って、何ともテンションの噛み合わない会話を終えた俺は、すぐさま教室に帰った。無論、色々変なセリフを言って恥ずかしかったからである。

 いくら必死だったとはいえ、さすがに当たりが強かっただろうか。だって人との距離感なんてわからないし……。

 返事はしてくれたけど、放課後待っててくれるかなぁ……?







「ったく、何だったんださっきのは……」



 俺は職員室から教室に帰るまで、ブツブツと独り言を言っていた。

 さっきの三浦……だったか、あいつの行動が気にかかる。何で俺に話し掛けようと思ったんだ? 気になる。しかも部活の勧誘までしやがって……いや、それが目的だったのかもしれない。

 どうせ暇だから行ってやるけど、魔術部って何だ? 部活動紹介の時は寝てたから、覚えてねぇんだよなぁ……。



「はぁ……」



 とにかく、めんどくさい部活じゃなけりゃいいんだが。







「暁君!」


「な、何すか……」



 放課後になり、俺が暁君と約束した事を果たそうと彼に声をかけると、彼は非常に驚いた顔を見せた。



「何って……とぼけなくてもいいじゃん」


「部活のことっすね。はいはい覚えてます」


「じゃあ行こうか!」



 かなり面倒くさがっているが、これは俺のためでも彼のためでも部活のためでもある。何としても連れて行かなければならない。



「わかったっす……」



 一応ついては来てくれた。








 暁君を連れた俺は、魔術室の前までやって来た。



「はい、着いたよ」


「……」



 部室の前に立つや否や、暁君は困惑した表情を浮かべる。その気持ちはわかるよ。どう見ても怪しいもんね。でも怖いのは最初だけだから。



「じゃあ入るよ?」


「う、うっす……」



 確認をとった俺はドアを開け、彼と共に足を踏み入れた。



「よう三浦!……ってあれ?」



 俺らが部室の中に入ると、ある人物は驚いた表情で固まっていた。



「お、おい三浦……誰だそいつ……?」



 少々震え声だが何かを期待しているような声が響く。もちろん部長の声だ。

 ではさてさて、その期待に応えますか。



「はい! 彼は新入部員の暁君です!」


「……よっしゃあぁぁぁ!!!」



 喜びのあまり、部長が雄叫びを上げた。オーバーリアクションな気もするが、ここは気にしないでおこう。



「え、嘘、マジで!? いいの!?」


「べ、別に嘘にしてもいいんすよ」


「あぁ! それは勘弁してくれ!」



 あれ、意外と暁君が馴染んでる気がする。

 相手が先輩だからかな? まぁ俺も歳が違う人とは話し易いんだけども。



「冗談っす」


「いや~面白い子だな~。そうだ! 早速測定しようか!」


「測定……? 身体測定でもするんすか?」


「いや~違う違う。じゃあ少し説明するね」



 やっぱり暁君にも魔術の説明をするんだな部長は。

 しかも測定もするって言うから少し気になるな~。



「……大体わかったっす。いいっすよ、測定」


「話が早くて助かるよ~。じゃちょっと待っててね」



 うわ。さすが学年一の頭脳。俺の時の半分以下の時間で理解しやがった。

 何か負けた気しかしない……。誘った身で言うのも何だが、ここで俺だけ素質持ち、みたいなことになったら嬉しいんだが……。



「よいしょっ。よし、ここに手を」


「はい」



 あの時と同じような光景が目に広がる。

 つまり、俺があの時気になった測定器の動きが見れる……!



「それじゃあ目を瞑って集中……」


「はい……」



 暁君がすんなり従っているのを見る限り、意外と楽しんでる気がする。気がするだけかもしれんが……。



「……」


「……」



 出た。あの無言タイム。この時は喋ってはいけないからかなり苦だった。


 と思っていた頃、測定器に動きが起きた。



「おぉ……!」



 俺は離れた所でその動きに感動する。

 どんな種か仕掛けかわからないけど、水晶が色々な光を発しながら、その周りの輪っかみたいなのが回っているのだ。光は赤、青、黄……と様々に変えている。



「よし、終わりだよ」



 暁君が目を開ける。そして目の前の機器の変化に驚いたのか、口を開いたままだった。


 そして気になる結果は──



「青く光っている……」



 俺の結果と同じだった。


 てことは……!?



「おぉ、まさかの素質持ちか! こりゃすげぇ!!」



 部長が驚きまくる。

 確か最初に言ってたな。「この部活には素質持ちはほとんどいない」みたいなこと。



「いや~新入生が2人とも魔術を使えるようになれるとは嬉しいね~」


「よろしくね、暁君!」


「う、うっす……」



 俺はこの結果を喜ぶべきか悔しがるべきか判断はつかないが、とりあえず暁君と仲良くなれたのが嬉しかった。



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