ペンダントの色の意味
「じゃあ、木村くんは恵子に一瞬でも見惚れたってこと?」
次の昼休み、オレンジジュースを飲みながら優子は言った。
「分からないけど、問題はその後、木村くんに同情されてしまったってこと」
おにぎりを食べながら私は答える。
「ネガティブだなー。ここはペンダントの色が暗めの黄色になった。つまり、木村くんが恍惚と言うことに着目しようよ」
「そんなポジティブにはなれないよ」
「ここでそのペンダントの特性をおさらいしよ。そのペンダントは持ち主の好きな相手の気持ちがわかるペンダント。そのペンダントのガラス玉の色は相手の感情によって変わる」
私のカバンにつけられているペンダントを指さしながら優子が言った。花をモチーフにしたペンダントには八枚の花びらにそれぞれ、黄色、黄緑、緑、水色、青、紫、赤、オレンジの色がついている。
「うん。このペンダントの花びらの色がそれぞれの感情色みたい。ざっくりいうと、黄色が喜び、黄緑が信頼、緑が恐れ、水色が驚き、青が悲しみ、紫が嫌悪、赤が怒りで、オレンジが予感とか期待|。そんで色の濃さによって微妙に意味が変わるみたい。例えば淡い黄色が平穏。明るい黄色が喜び。それで、暗い黄色が恍惚中間色にも色はあるみたいだよ。黄色に近い―黄緑は愛…愛!?」
驚く私にサンドウイッチを食べながら冷静に優子が続ける。
「つまり、黄色っぽい黄緑に色が変わったら、あんたの両思いになる目的はほぼほぼ達成されたっていうことね。それにしても恵子、持ち主のあんたが中間色にも意味があるなんてことを今更になって気がつくのはどうなのよ?そんで淡い黄緑が容認。明るい黄緑色が信頼。暗めの黄緑が敬愛。緑は色が濃くなるごとに不安、恐れ、恐怖」
説明書を読みながらの優子は途中で少し、めんどくさくなったのか緑の説明は乱雑になる。説明書を読みながら、私もそれに習った。
「そんで黄緑と緑の中間色は服従。緑と水色の中間色、つまりエメラルドグリーンは畏怖。水色は色が濃くなるごとに方針、驚き、驚嘆。青っぽい水色は拒絶。拒絶なんて感情、抱かれたくないなぁ。青は色が濃くなるごとに哀愁、悲しみ、悲嘆。」
「紫も色が濃くなるごとにうんざり、嫌悪、強い嫌悪。こんな感情も抱かれないといいね?」
優子が意地悪そうに笑うったので私は軽くにらみながら続ける。
「気を付けるよ。因みに青っぽい紫は後悔。赤っぽい紫が軽蔑…。それで赤が色の濃くなるごとにつまり、薄い方から順に苛立ち、怒り、激怒。この感情も抱かれたくないなー。赤とオレンジの中間色の朱色は攻撃。オレンジっぽい黄色が楽観」
「そんでオレンジが色が濃くなるごとに関心、期待、警戒」
優子が言って、ため息をついた。
「なんか思ったより、たくさん色あんね。同じ色でも濃さによって微妙に感情の意味が違ったり」
「でも、それだけ木村くんの気持ちの細かいことがわかるってことだよ」
そう言いながらも私は少し罪悪感を抱いた。ペンダントのせいで自分の気持ちが勝手に私になんかに伝わってしまうなんて、私が木村くんの立場だったらたまらないなぁと思う。