暗めの黄色
落ち込んでしまった私を見て、違う話題に変えたほうが良いと思ったのか、木村くんは歩きながら、全く違うことを言った。
「そのペンダント、カバンにつけてなかった?」
「うん、学校で首にかけていたら先生に怒られちゃうでしょ。だから下校の今だけ首に付けてるの」
「梅田は真面目だな」
私が真面目というより、木村くんがあまり真面目ではないのでは?と思ったが、口には出さない。
ふと気がつくとペンダントの色が変わっていた。明るい黄緑色だ。明るい黄緑色は確か信頼の色だったはず。木村くんは私のことを信頼してくれてるのだろうか。だとしたら嬉しい。
「そのペンダント、似合ってるぜ」
「えっ…」
思わず赤くなった私を見て木村くんが驚いた顔をした。ガラス玉の色も驚きを表す明るい水色に変わる。そしてほんの一瞬濃い黄色になった。この色は何という意味だっただろうか。考えてると色はもとの明るい黄緑色に戻ってしまった。
私は暗い黄色のことが気になり、あの説明書を取り出す。木村くんはそれを見て言う。
「何だそれ?」
「あ、今日先生が言ってたことをこのノートにメモしちゃったんだよね〜!あはっ、こんなに小さなノートにね!おかしいでしょ」
テンパりながらも私はごまかす。木村くんは不思議そうな顔をしていた。
『暗い黄色 恍惚』
説明書にはそう書かれていた。恍惚!?つまり木村くんは赤くなった私を見て一瞬でも見とれてくれたんだろうか。でも暗いと表現するに結構微妙な感じの濃さだったかもしれない。
でもまんざら脈がないわけでもないのかもしれない。
そう思った私は勇気を出していってみた。
「あの!彼氏いるっていうの、嘘だから!」
「え…なんでそんな虚しい嘘を…」
その時ガラス玉が淡い青に変わった。青は悲しみを表す色だったはず…。つまり木村くんは私に嘘を疲れて悲しんでいる?
その時、説明書のページがペラリと風でめくられた。
『淡い青 哀愁』
哀愁…。私はその文字を読んで同情されてしまっていることに気がついた。