ペンダントの機能検証
「だからね、このペンダントが本物かどうか試す必要があると思うの」
と優子は言った。私は頷く。
「うん」
「だから、恵子、今日木村くんと帰りなよ」
「え、なんで!?」
「二人で一緒に帰って、木村くんが気になるようなことを言うの。例えば彼氏ができたとか話が面白くないとか」
「えー!?嘘だってバレたらどうすんの?」
「いや、嘘だって言うのはすぐに言っても良い。大事なのは木村くんの反応とペンダントの色が変わるかどうかを見ること。ペンダントの機能が本物かどうかも木村くんにとっての恵子の存在の大きさも分かる。一石二鳥じゃない?」
「そ、そうかな」
「頑張って!初恋は叶わないなんて言うけど、私は応援してるから!」
「応援してくれてるなら、なんで不安になるようなことを言うの…」
その日の放課後、優子が木村くんに声をかけた。
「木村くん、私今日用事あるから恵子と帰ってやってよ」
「え?俺、今日中山と一緒に帰るつもりだったんだけど」
中山くんとは中学の時から木村くんと仲が良いメガネをかけた真面目な男子である。クラスは別々になってしまったけれど、木村くんとの交流は続いてるみたいだ。木村くんの近くで中山くんは不思議そうに首を傾げていた。
「よし、じゃあ中山くんは私と帰ろう!」
「え…用事あるんじゃ…」
「まぁ、良いから良いから!」
優子の強引さにますます不思議そうな顔しながらも中山くんは引きづられていってしまった。何故か優子の顔は少し、赤かった気がした。
「帰るか…」
「え…!?うん」
呆れたように言う木村くん。とりあえず一緒に帰れることになったみたいだ。
「それにしても、あいつも強引だよな。何?中山と一緒に帰りたかったとかそういう感じ?」
自転車を漕ぎながら、木村くんが言う。
「どうなんだろう」
私もまた自転車を漕ぎながら首を傾げた。もちろん、優子の目的は私と木村くんを一緒に帰らせることなんだろうが、木村くんの言うように中村くんと帰りたかったというのも案外間違ってはないのかもしれない。
胸元につけたペンダントを見るとペンダントのガラスは明るめのオレンジ色に変わっていた。明るめのオレンジ色は確か、期待…。木村くんは中山くんと優子の関係にワクワクしているということだろうか…。木村くん意外と野次馬根性?
「梅田はいねぇの?好きなやつとか」
「え…!?」
聞かれて、優子に彼氏がいるとか言って木村くんの気持ちとペンダントの機能を探れと言われていたことを思い出す。
「……実はこの度、彼氏ができまして…!?」
「え!?まじで!ちょっとその話聞かせろよ。自転車漕ぎながらじゃなくて歩きながら話そ!」
「え!?うん…」
思ったより食いつかれて私は慌てたが、自転車から降りながら、私は説明書に書かれていた感情を表す色について必死に思い出す。ペンダントの色が怒りを表す赤系か、悲しみなどを表す青であることを願う。
果たしてペンダントのガラスの色は…変わらずに
明るいオレンジ…。
つまり、木村くんは私が好きな人がいることにワクワクしているということ。脈無しだ…。
私はうなだれてしまった。