茶髪の木村くん
「木村くんってさちょっとチャラくない?」
「えっそうかな」
下校中の優子|の言葉に私、梅田恵子は曖昧な返事をした。
木村くんとは私の男友達でいいなと思っている男子のことである。
「なんかノリがさ」
と優子は言う。
確かにそういうところはあるかもしれない。
元気でコミュ力高くて誰とでも楽しそうに話す木村くん。私はそんな彼のことがとても気になる。例えば、豪快とも言えるその笑い声とか、ちょっと都会的なその雰囲気とかそれでいて実は根が真面目なところとか。自分が内向的で地味な性格だから、憧れてしまう。大柄な木村くんを好ましく思うのも自分が小柄だからかもしれない。
「まあ今度からアッタク頑張ってみれば?せっかく春から同じ高校なんだし」
にかっと笑う優子。
私と優子は木村くんと同じ高校に行くのだ。
積極的に木村くんにアプローチするなんて私に出来るのだろうか。それに気にはなってるけど、まだ好きというほどじゃない。
「よっ!梅田、同じクラスになったな」
「あ、木村くん…って木村くん!?」
「そんないい反応をくれたのは梅田か初めてだよ」
ガハハと木村くんは笑う。
高校の入学式の日、木村くんは明るい茶髪になっていた。
「髪を染めるんなら、大学生になってからにすれば良いのに。入学式の時点でそんなに派手な色にして。絶対先生に目をつけられるよ」
私は口を尖らせてそう言ったものの明るい茶髪は自由人な木村くんにとても似合っていて私はなんだかドキドキしてしまう。
それにしても木村くんと同じクラス。優子とも同じクラスになれたし、私はこの一年間がこれからすごく楽しくなる予感がした。