最終話② バッドエンドの■■
とある病室には、一人の少女と女性がお見舞いに来ている。
そしてそこには、数えきれない程のコードで繋がれた一人の少年が、清潔なベッドで眠っていた。
肌が白く、生気が感じられない少年の手を、少女は優しく握る。
「“優真”……」
少女は小さく、少年の名を呼ぶ。
「優真が“植物状態”になって、今日で3年ね……」
女性は呟いた。
病室の電気はついてある。しかし、廊下と比べこの部屋は、なぜだか異様に暗く感じられる。
「“美琴さん”、優真は……目覚めてくれるでしょうか」
「……大丈夫よ、“帆ノ美ちゃん”。きっと、あなたが優真のことを思っていてくれれば、必ず起きてくれるわ」
「はい。……昨日は、“幸ちゃん”が来てくれたんですよね」
「ええ助けてくれて、本当にありがとうございましたって。あの子ももう“小学2年生”。幸ちゃんが、名前のとおり幸せに生きてくれれば、優真も喜ぶわね」
「あの日──中学2年生の優真が、車に引かれそうになった幸ちゃんを庇って大怪我を負った日から3年ですか……時間の流れは、無情ですね……」
少女は、首から下げたロケットペンダントを強く握りながら、俯く。
「そうね……でも、この子が間違ったことをしたとは、思っていないわ。帆ノ美ちゃんもそうでしょ?」
「はい。優真は……とても優しい人ですから」
「ふふ、そう言ってもらえると、優真も喜ぶわ。──せめて、“夢の中”でだけでも、幸せな世界を──優真」
覚める気配のない少年の表情は、ほんの少しだけ、幸せなように見えた────
【バッドエンドの現実】 ~END~
《作者のちょこっと裏設定》
植物状態の優真が見ていた夢での、帆ノ美の過去や思いは本当。眠る優真に向かって、帆ノ美が話したことがあるため、それを脳が記憶して夢に現れた。
初めての投稿作品が完結しました。
完結の達成感、半端ないですね……
もしここまで全話読んでくれた方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございます♪