表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失われた右腕と希望の先に  作者: 瑪瑙 鼎
序章
2/299

プロローグ(2):神話

 まだ太陽と月、荒野と海しか存在しなかったはるか昔、荒野には3人の姉妹が住んでいました。


 慈愛に満ちた、輝く金の髪の長女、エミリア。

 気高き誇りと情熱を持つ、燃えるような赤い髪の次女、ロザリア。

 自由奔放で笑顔がまぶしい、艶やかな黒い髪の三女、サーリア。


 性格の違う3人は、しかし、サーリアが無邪気に走り回り、ロザリアがそれをたしなめ、その二人の様子をエミリアが笑顔で見守るという、とても幸せな毎日を送っていました。


 ある時、家の周りの荒野を見たエミリアが言いました。

「家の周りが寂しいわね。もっと賑やかにしましょう」

 そうつぶやいたエミリアは、自分の髪の毛を数本抜き、地面に埋めました。

 するとエミリアの髪の毛はどんどん大きくなり、大きな木となって、鮮やかな緑に彩られました。


 続けてエミリアは自分の指を切り、血を数滴地面に垂らしました。

 するとエミリアの血はどんどん大きくなり、犬、鹿、熊、鳥となって、森は賑やかになりました。


 ある時、熊が木を傷つけ、枝を折っているのを見たロザリアが言いました。

「熊が悪いことをしないよう、見張りを立てよう」

 そうつぶやいたロザリアは、自分の指を切り、血を数滴地面に垂らしました。

 するとロザリアの血はどんどん大きくなり、人族の男と女となって、森を見張るようになりました。


 ある時、人族の男と熊が喧嘩をしているのを見たサーリアが言いました。

「喧嘩はダメだよ、みんな仲よくしようよ」

 そうつぶやいたサーリアは、自分の指を切り、血を数滴地面に垂らしました。

 するとサーリアの血はどんどん大きくなり、獣人、エルフとなって、人族と熊をなだめ、仲直りさせました。


 こうして3姉妹の家は森に囲まれ、賑やかで幸せな生活を送る事ができました。


 ある時3姉妹の住む森の近くに、白髪の男、ガリエルが来ました。

 ガリエルは3人の住む森を見て羨ましくなり、自分の髪の毛を抜き、指を切って、髪の毛と血を地面に埋めました。

 するとガリエルの髪の毛と血はどんどん大きくなりましたが、しかし、枯れ木と、見るのもおぞましい白い毛皮を持った醜悪な魔物となったのです。

 それを見たガリエルは怒り狂い、魔物をけしかけて3姉妹の森を襲わせました。

 魔物に襲われた3姉妹の森は、木が枯れ、動物が消え、魔物の白い毛で覆われてしまいました。


 魔物が去った後、変わり果てた森を見たエミリアは嘆き悲しみました。そして、また自分の髪の毛を抜き、指を切り、地面に埋めました。

 するとエミリアの髪の毛と血はどんどん大きくなり、また木と動物となって、森は賑やかになりました。

 しかし、それを見たガリエルがまた自分の髪の毛と血を地面に埋め、またも枯れ木と白い魔物となってしまい、怒り狂ったガリエルは魔物をけしかけ、再び3姉妹の森を枯らし白い毛で覆ってしまいました。


 何千年にも渡って繰り返された結果、エミリアは悲しみから病に倒れてしまいました。

 しかし、またも森が白い毛で覆われてしまったのを見て、病をおして髪の毛と血を地面に埋め、森を蘇らせました。


 ガリエルはまたも髪の毛と血を埋め、白い魔物をけしかけようとします。

 しかし、この時は白い魔物の前にサーリアが両手を広げ、立ちはだかったのです。

「姉様はもう起き上がれないの。森を枯らすのは止めて」

 白い魔物はサーリアの願いを聞き入れず、サーリアを殺してしまいました。


 ロザリアはサーリアの死を聞き、悲しみにくれ、怒り狂いました。

 サーリアはもういません。エミリアももう起き上がれません。森はもう蘇らせる事ができません。


 こうしてロザリアは森を守るため、遺された人族、獣人、エルフとともに、白い魔物と永遠の戦いを繰り広げる事になったのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ