表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失われた右腕と希望の先に  作者: 瑪瑙 鼎
第7章 サーリア
120/299

118:もう一つの神話

 まだ太陽と月、荒野と海しか存在しなかったはるか昔、荒野には3人の姉妹が住んでいました。


 慈愛に満ちた、輝く金の髪の長女、エミリア。

 気高き誇りと情熱を持つ、燃えるような赤い髪の次女、ロザリア。

 自由奔放で笑顔がまぶしい、艶やかな黒い髪の三女、サーリア。


 性格の違う3人は、しかし、サーリアが無邪気に走り回り、ロザリアがそれをたしなめ、その二人の様子をエミリアが笑顔で見守るという、とても幸せな毎日を送っていました。


 ある時、家の周りの荒野を見たエミリアが言いました。

「家の周りが寂しいわね。もっと賑やかにしましょう」

 そうつぶやいたエミリアは、自分の髪の毛を数本抜き、地面に埋めました。

 するとエミリアの髪の毛はどんどん大きくなり、大きな木となって、鮮やかな緑に彩られました。


 続けてエミリアは自分の指を切り、血を数滴地面に垂らしました。

 するとエミリアの血はどんどん大きくなり、犬、鹿、熊、鳥となって、森は賑やかになりました。


 ある時、熊が木を傷つけ、枝を折っているのを見たロザリアが言いました。

「熊が悪いことをしないよう、見張りを立てよう」

 そうつぶやいたロザリアは、自分の指を切り、血を数滴地面に垂らしました。

 するとロザリアの血はどんどん大きくなり、人族の男と女となって、森を見張るようになりました。


 ある時、人族の男と熊が喧嘩をしているのを見たサーリアが言いました。

「喧嘩はダメだよ、みんな仲よくしようよ」

 そうつぶやいたサーリアは、自分の指を切り、血を数滴地面に垂らしました。

 するとサーリアの血はどんどん大きくなり、獣人、エルフとなって、人族と熊をなだめ、仲直りさせました。


 こうして3姉妹の家は森に囲まれ、賑やかで幸せな生活を送る事ができました。


 ある時3姉妹の住む森の近くに、白髪の男、ガリエルが来ました。

 ガリエルは3人の住む森を見て羨ましくなり、自分の髪の毛を抜き、指を切って、髪の毛と血を地面に埋めました。

 するとガリエルの髪の毛と血はどんどん大きくなりましたが、しかし、枯れ木と、白い毛皮を持ったハヌマーンとなったのです。


 ガリエルは嘆き悲しんでハヌマーンを家から追い出し、ハヌマーンは雪の積もった寒空の中、一人膝を抱えて震えていました。

 すると一人の少女がハヌマーンを見つけ、彼に服を被せて言いました。

「大丈夫、あなたは何も悪くない。一緒にガリエルの所に戻ろう」

 サーリアはハヌマーンの手を引き、ガリエルの許へと向かいました。


 サーリアはガリエルの許へ赴くと、ガリエルを叱りました。

「ダメだよ、この子の毛皮はこんなに綺麗なのに。仲よくしようよ」

 サーリアの言葉にガリエルは謝り、やがて3人は、ガリエルの家で幸せに暮らしました。


 しかし、そんな3人を見たエルフは嫉妬に駆られ、サーリアを取り戻そうとガリエルの家へと向かいます。そして、サーリアの膝の上に座るハヌマーンに向けて、矢を放ったのです。

「ハヌマーン、危ない」

 エルフの矢に気づいたサーリアはハヌマーンを庇い、エルフの矢はサーリアの心臓を貫いてしまいました。


 サーリアを誤って射抜いてしまったエルフは逃げ帰り、サーリアがハヌマーンに殺されたと、エミリアに嘘を言いました。エミリアは悲しみのあまり倒れ、ロザリアは怒り狂って、人族、エルフ、獣人とともに、ガリエルの許へと押し寄せてきます。


 心臓を射抜かれたサーリアは、涙を流すガリエルとハヌマーンに対し、こう言い残して息を引き取りました。

「エルフの心臓を抉って、私の体に埋め込んで。そうすれば、私は生き返る。再び3人で幸せに暮らそう」


 こうしてガリエルとハヌマーンは、サーリアを生き返らせるため、ロザリアと永遠の戦いを繰り広げる事になったのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ