13話:パリ議定書以降、世界のめざすべき道1
まずパリ議定書について、おさらいしよう。2017年6月、米国のドナルド・トランプ大統領が脱退を表明するなど、最近なにかと話題になっている「パリ協定」。しかし、そもそもパリ協定ではどのようなことが決められ、世界各国にはどのような取り組みが求められているのか、またパリ協定がビジネスや生活にもたらす影響とはどのようなものなのか、はっきりとは答えられないという方も、実は多いのではないでしょうか。そもそも温暖化対策の新しい枠組みパリ協定とは何か。パリ協定とは2020年以降の気候変動問題に関する、国際的な枠組みです。1997年に定められた「京都議定書」について覚えている人は多いでしょうが、パリ協定はこの京都議定書の後継となるもの。パリ協定は2015年にパリで開かれた温室効果ガス削減に関する国際的取り決めを話し合う「国連気候変動枠組条約締約国会議『通称COP』」で合意された。
こうした取り決めは合意されるとすぐに効力を発揮するものではなく、発効するための条件が設けられます。パリ協定では、以下の2つが発効条件。1つ目は55カ国以上が参加すること。2つ目は世界の総排出量のうち55パーセント以上をカバーする国が批准する事。専門家の間では条件が満たされるには時間がかかるだろうと考えられていましたが、当時の米国・オバマ大統領が中国やインドに批准を働きかけた結果、2016年11月4日に発効した。それだけ世界各国の地球温暖化に対する関心が高まった。結果、パリ協定には主要排出国を含む多くの国が参加。締結国だけで、世界の温室効果ガス排出量の約86パーセント、159か国・地域をカバーするものとなった。「2017年8月時点」。
2016年11月に開催されたCOP22では2018年までに協定の実施指針などを策定することが合意されました。パリ協定では次のような世界共通の長期目標を掲げています。1つ目、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち1.5度に抑える努力をする。2つ目、そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし21世紀後半に温室効果ガス排出量と「森林などによる」吸収量のバランスをとる日本も批准手続きを経てパリ協定の締結国となった。この国際的な枠組みの下、主要排出国が排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成長の両立を目指した。
なお米国のトランプ大統領による脱退表明に話を戻すとパリ協定は規定上、発効から3年経過して以降、国連に脱退の通告できる。また、その通告が効力を有するまでに1年かかる規定になっているて米国の脱退が可能となるのは最速でも2020年11月4日以降になる。パリ協定は歴史的に重要な画期的な枠組みであるといわれる。その理由は次のポイントが挙げられる。パリ協定が画期的といわれる2つのポイント、1つ目、途上国を含む全ての主要排出国が対象である事。2つ目、パリ協定が歴史上、最も画期的である点は途上国を含む全ての参加国に排出削減の努力を求める枠組みである
という事。
京都議定書では排出量削減の法的義務は先進国にのみ課せられていた。しかし京都議定書が採択された1997年から今日までの間に途上国は急速に経済発展を遂げ、それに伴い排出量も急増した。実際、2016年の温室効果ガス排出量シェアを国別で見ると中国が23.2パーセントで1位、インドが5.1パーセントでロシアと並び同率4位。「日本の温室効果ガス排出量シェアは2.7パーセントで8位」。ちなみに2016年の温室効果ガス排出シェアを国別ワースト3を見ると中国が23.2パーセントで1位、米国が13.6パーセントで2位、EUが10パーセントで3位。途上国に削減義務が課せられていない事は参加国の間に不公平感を募らせる要因となった。それが一因となり京都議定書は当時最大の排出国であった米国も批准せず議定書の実効性に疑問符がつくこととなった。
そこでパリ協定では途上国を含む全ての参加国と地域に2020年以降の「温室効果ガス削減・抑制目標」を定めることを求めた。加えて長期的な「低排出発展戦略」を作成し、提出するよう努力すべきであることも規定されている。パリ協定が画期的な枠組みとされるもう1つの理由はボトムアップのアプローチを採用したことです。京都議定書は先進国のみにトップダウンで定められた排出削減目標が課せられるアプローチを採用した。このトップダウンのアプローチに対し公平性および実効性の観点から疑問が示された事を踏まえ、パリ協定では各国に自主的な取り組みを促すアプローチが模索され採用された。この手法は協定の合意に至るまでの国際交渉で日本が提唱してたもの。これにより各国の削減・抑制目標は、各国の国情を織り込み、自主的に策定することが認められている。
パリ協定発効のカギは公平性と実効性。様々な国や地域の参加と削減努力への宣言を促す事に成功したパリ協定。その実現のために公平性と実効性を担保するような工夫が行われた。まず削減・抑制目標について達成義務を設けず努力目標とした。ただし進捗状況に関する情報を定期的に提供し専門家による評価を受けることが定められ、透明性を確保した。これは目標を誓約し取り組み状況などを評価することから「誓約と評価方式」とよばれた。各国の目標は5年ごとに更新し提出することが求められた。京都議定書でも定められていた途上国に対する先進国の資金支援については引き続き義務とされたがパリ協定ではそれに加えて途上国にも自主的な資金提供を奨励する事とした。




