12話:巨大台風の弱体化作戦5
ゴードン
「種は大西洋上の台風、エスターとビムラーそれに発達前のいくつかの台風にまいた。結果は発達前のものには、かなり効果があった。でも当時の飛行機は性能も観測機器も今と比べれば原始的だったので、やむをえない部分もあった。観測も機体に搭載した原始的なレーダに頼るしかなく種をまく前後の状態も実際に中を飛んで調べるという具合だった。でも実際にそれで観測した結果では台風の最大風速を弱める効果がある事が分った。」ウイログビは計画の打ち切りに関与している。しかしゴードンは打ち切るべきではなかったという。
ゴードン
「計画は1982年に打ち切られたが、それは予算上の問題が原因であり成果が全くなかったからではない」。しかし、それから25年、ゴードンは種をまく技術や観測能力が進歩した今、計画を復活させるべきだと考えている。ヨウ化銀の種をつんだ2基のP3哨戒機が台風の下から3分の2の高さに北西の方角から飛び込む。そして飛びながら種をばら撒く。ヨウ化銀は雲の中の水滴を凍らせる。これにより目の外側の雲から熱が奪われアイウォール「目の壁」へのエネルギー供給が止まり、その結果、目が広がって勢力が衰える。
ウイログビ
「大多数の台風の雲には種まきが効果を発揮するだけの水滴は含まれてない。たとえ勢力が弱くなってもそれが種まきの効果なのか、たまたま自然にそうなったのか区別できない。」
ゴードン
「計画が打ち切りになった当時は種まきをした結果の測定ができなかった。でも今ならできる。わざわざ一番危険な雲の帯の中に人間を送り込まなくても、無人機を飛ばして自動で種をまかせることもできる」。一方ビル・グレーにとって天候や台風を制御しようという計画は1970年代の初めに挫折した。当時アメリカ軍はベトナムでホーチミンルートを泥流に変えようとしていた。1980年代ウイログビやゴードンが台風に種をまいている間にソ連は台風の押さえ込みに取り組んでいた。
ウラジミール・プドフはボルネオ沖のスラベス海で展開された極秘任務の中心人物。
プドフ
「あの海域は船も少ない、妨害されないという事で選ばれた。それにインドネシア近海は日差しがとても強く暖まった海面から盛んに海水が蒸発するのでテストの条件がそろっていた。」実験は油脂と尿素、そしてアルコールが主成分のカルミドルというドロっとした黄色い化学薬剤を10平方キロメートル海面に流すというものだった。他の方法論同様、カルミドルは環境に優しいものとはいえない。
プドフ
「カルミドルは旧ソ連時代の南部の稲作地帯で使われた。南部はとても暑いが水田には大量の水が必要だった。カルミドルは水面を覆って水の蒸発を抑える。」テストの結果カルミドルは台風が海から熱を吸い上げるのを防ぐ効果があると分かった。その仕組みはこのようなもの。カルミドルをつんだタンカーの船団を台風の約80m手前に配置する。そしてカルミドルを海面に流す。台風はカルミドルの膜ができた海域まで来るが熱エネルギーを吸収できず、勢力は弱まって停滞する。しかし50mの風でも膜は吹き飛ばされないのだろうか?
プドフ
「場所によっては大丈夫。実験ではもっと強い風が吹いたが膜は有効だった。」
こうしてプドフの実験は多大な成果を収めたが、ソ連の崩壊によって研究資金は全て打ち切られた。ウイログビの結論では台風を止めることができるのはたった2つの方法しかなく、海面を膜で覆うこの方法はその1つだという。
ウイログビ
「数値シミュレーションの結果でも明らかなように風速50mの暴風にも耐える膜で海水面を覆って暖まった海水が蒸発するのを抑えるか、あるいは海水面そのものの温度を冷やすかのどちらか。」ウェザー・モディフィケーション・アソシエーション「気象修正協会」、台風の防止に献身的な人々も、この会議に出席している気象コントロールに取り組む人々同様、科学界の外で活動しているのが実態。
ランドシー
「現在政府の努力は気象観測と予測に向いていて、台風を弱める方には向いていない。ですが興味を持っていないというわけではない。もし台風を弱めるか押しやれれば素晴らしいが、現在の物理学では実現不可能」。ウイログビが、もっとも有望だと考える海面の膜と深層水の汲み上げでさえ、さらなる研究が必要。500年前のレオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ多くの発明家が飛行機やヘリコプター、月ロケットを夢見た。しかし当時はどれも見捨てられた。当時は技術がなかったが、今それらは全て実現している。これら7つの方法もそうだろう。ポンプには水を汲み上げる力がなく、カルミドルは強風で流され、液体窒素のはしけも同様、空からのアプローチも種まきは雲の中に肝心な水がない、炭素は風で流され、レーザーも威力が足りない、宇宙からのマイクロ波も台風を動かすには弱すぎる。
しかしもしこれらの方法を全部一度に試したら台風はどうなるだろうか? 台風が接近した時に全てを一斉にぶつける。衛星は進路を変えさせるマイクロ波を放ちC130はレーザーを発射、アイウォール「目の壁」の雷雲を無力化する。哨戒機の編隊がアイウォール「目の壁」に種をまき、カルミドルが海を覆う。無数のポンプが冷たい深層水を汲み上げ、はしけの船団が液体窒素を放出。さらに不完全燃焼装置が真っ黒いススを噴き上げる。これら7つの方法で一斉に攻撃すれば、超大型台風から大都市を守ることができるかもしれない。しかし今は守る方法はない。
*ブログ「ハリケーンを止める7つの方法」を参考にさせていただきました。




