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10話:巨大台風の弱体化作戦3

 昔々風車を巨人だと思い込み、戦いを挑んだスペイン人がいた。彼は人々を救いたかった。7つのアイディアを考えた人たちもある意味でドラゴンを退治しようとしたドン・キホーテのようだが、ドン・キホーテの幻想とは違いメキシコ湾の海水温度を下げられればカトリーナのような巨大台風を退治できることは確実。台風が発達するには20℃の海水温が必要。カトリーナの時は30℃に達していた。この海域の水温は地球温暖化のために、かつてないほど高くなっている。ゴア元副大統領もこの海洋温暖化によって過去10年間台風が巨大化したという調査を支持している。


 しかし台風の研究者であるランドシーやグレーは海洋温暖化は自然変動だと言っている。だがメキシコ湾の海水温をなんとかして下げることができれば、台風の発達を抑えられるということには異論2005年以来アメリカを襲った4つの台風ほどに巨大化することは防げるかもしれない。アメリカ東海岸に向かう台風は全てアフリカ沖で発生する。サハラ砂漠の南の縁に広がるサヘルで発生するハブーブという強烈な砂嵐が最後に台風になってアメリカを襲う。マサチューセッツ工科大学のウイリアムズはここで研究している。


 ウイリアムズ

「アフリカの人たちにとってハブーブは日常風景。彼らにとって雨季には2から3日に1回吹く当たり前のもの。カトリーナはアフリカの西海岸で発生した。アフリカでの偏東風はアフリカ大陸の東から西へ向かって大陸を横断して大西洋に吹き出す。さらに大西洋上を進み続ける」。海水温と風、そして地球の自転運動が組み合わさりハブーブは回転を始め、やがて熱帯低気圧になり、その後大西洋を進むうちに速度が増して台風に発達。最後にアメリカ大陸にぶつかる。その移動距離は1万キロメーターにも及ぶ。


 ウイリアムズ

「この熱帯低気圧の発達の経過をよく観察していれば、それが東海岸に被害をもたらす台風になるかどうかが分る。つまり東大西洋を観測すれば警報を発したり備えを固めることができる。でも今の科学では、どのハブーブが台風にまで発達するのか、この段階でははっきり特定できない。私達はその謎を解き明かそうとしている」。研究を始めて5年、ウイリアムズはアフリカの低気圧が台風になる要因について重要な見解を発表する。秘密は雷にあった。


ウイリアムズ

「2004年に熱帯低気圧にまで発達した暴風のほとんどが雷雲を伴っていたことを突き止めた。」ロバート・ディッカーソンも雷がカギだという。彼はニューオリンズを愛する空軍用化学レーザーの専門家。台風にまで発達する熱帯低気圧が雷を伴うことを知った彼は、もし雷雲の中の電気をレーザーで発散させれば、台風の発達を抑えられるのではないかと考えた。


ATLL高度戦術レーザーを前輪の後ろに搭載したC130輸送機で台風の目に飛び込む。そしてアイウォールに向かって強力なレーザーを1秒間発射する。レーザーはアイウォール「目の壁」を振動させる。すると雲の粒子に溜まった電荷が発散しアイウォール「目の壁」は内部崩壊し台風も弱くなるという。しかしハリケーンセンターのクリス・ランドシーは発達した台風に対して今のレーザーなどでは太刀打ちできないという。


ランドシー

「台風が海から吸収したエネルギーは膨大で、雷雲が放出するエネルギーもまたとてつもなく膨大なもの」。もし台風を止められないなら、向きだけでも変えられないのだろうか?。 


ロスホフマン

「これは『台風イニキ』をモデルにして条件を設定したコンピューターシミュレーション。」大気研究の権威ホフマン博士はこのシミュレーションを使ってイニキのコースを変える条件を探した。


 ホフマン

「黒い太線は台風の中心が通ったコースでこれで30時間分。でも気温や風、その他の気象条件を少し変えて発生させた極小さな力を台風にぶつけてみると台風は黒い線から少し左にそれて赤い線を通った」。ホフマンはこの気象条件を少し変える力を、宇宙ステーションを使って作り出そうと考えている。


ホフマン

「将来建設が予想されている宇宙の太陽熱発電所ではマイクロ波で大気のある1点を熱する」。宇宙に浮かんだ発電所から台風の傍の特定の空間にマイクロ波を放射する。ホフマンは、これによって海面上の気圧や温度、風、あるいは湿度を変えられると考えている。そしてコースをそらす。ネーベル・マーザベル博士はNASAの先端技術部門のマネージャーで、国際的に著名な専門家。彼は宇宙での太陽エネルギー利用技術を開発する国際チームを率い、また80年代には宇宙ミサイル防衛にも取り組んだ。彼はホフマンのアイディアを高く評価している。


 マーザベル

「技術的にはどの部分をとってもすでに実用化されているものばかり。ソーラーパネルで作り出した電気パワーをマイクロ波に変換するがマイクロ波は携帯電話でも使われていて電話をかけて発信するように地上へ向かって発信する。ただし実現の容易性とコストが問題になるだろう」。ウイログビもこのアイディアは気に入った。ただしマイクロ波で台風の方向を変えるだけのエネルギーを作り出せるのか検証が必要。しかしこのアイディアは新たなジレンマを生む。


ウイログビ

「台風のコースを変えることができるようになれば、新しい問題が生じる。社会的な問題、例えばカトリーナのコースを変えることにした時、いったいどっちに向けて変えるべきかという問題。その町の社会的経済価値を判断する経験をつんだ誰かがニューオリンズの変わりにどこをつぶすのか選ばねばならなくなる」。


 レオロフ・ブルインチェス「大気研究の国際センター」

「もう1つ考慮しなければいけないのは実際に台風のコースを変えれば気象は全て相互関係にあるので地球の裏側に影響が出ること。地球は文字通り1つ。エネルギーの均衡、もろもろの均衡、グローバルに考えねばならない。もしどこかに力を加えれば、その力は回り回って地球のどこかで何かを起こすことになる」。

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