表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂気の赤ずきんちゃん  作者: 鳥見風夫
狂気の始まりと終わり
4/4

第3話(残酷描写あり)

残酷描写ありです。苦手な人は気を付けてください

 血に塗れ、ぶどう酒に浸り、肉で汚れた赤ずきんちゃんは、恍惚とした表情で、フラフラと夢遊病者のように歩いて行きます。

 「あぁ、なんて楽しいのでしょう。復讐、復讐、復讐、これこそ私が求めていた快楽。とっても愉しいですわ‼」

 アハハ、アハハハハハハハハハハハ‼ 赤ずきんちゃんは狂ったように笑い続けます。その様子に、森の獣たちも赤ずきんちゃんのことは遠く見守るだけです。

 「あぁ、もっと、もっと、もっともっともっともっともっと‼‼ 愉しみたい」

 赤ずきんちゃんは嗤います。狂ったように、いや、赤ずきんちゃんは狂っているのでしょう。最初に血を浴びてしまった、あの時から。

 「おばあさん、お母さん。ありがとう」

 その感謝は、空虚に響きました。そして、赤ずきんちゃんが歩いて行った先、そこには赤ずきんちゃんが住む村がありました。

 「ねぇ、猟師さん。私、とっても楽しいの」

 聡明な猟師さんは、その一言で察しました。察してしまいました。すると、猟師さんはいつもの様に一つ溜息を吐き、猟銃を構えました。

 「赤ずきんちゃん。君はどこまで………どこまで狂うんだい?」

 パァンッ、派手な発砲音が響き、赤ずきんちゃんは胸に熱さを覚えました。感じたことのない、灼熱のような熱さです。

 ゆっくりと、彼女は自分の胸を見下ろします。

 滑稽にも見えるような勢いで、血が噴き出していました。


 パリン


 けたたましく、ガラスが割れる音がしました。見ると、ぶどう酒の瓶が地面で割れ、赤い染みを派手にぶちまけていました。

 ぶどう酒のアルコール臭と、赤ずきんちゃんの血の匂いで、周囲にはむせ返るような香が漂っています。それでも、猟師さんはじっと、赤ずきんちゃんのことを見つめています。それが、彼なりの看取り方なのでしょう。まだ硝煙を上げる銃口を上に向け。じっと、瞬きもせずに、赤ずきんちゃんの臨終を見守っています。

 「猟師さん、ありがとう」

 赤ずきんちゃんのずきんが、はらりと落ちます。滑らかな黒髪がサラリと流れ落ち、久しく出すことのなかった素顔が露わになります。

 その顔は、笑っていました。今までないほどに清々しく、綺麗に、美しく、笑っています。その顔を見て、猟師さんもまた、笑いました。

 それが、赤ずきんちゃんの最後の言葉となりました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ