第3話(残酷描写あり)
残酷描写ありです。苦手な人は気を付けてください
血に塗れ、ぶどう酒に浸り、肉で汚れた赤ずきんちゃんは、恍惚とした表情で、フラフラと夢遊病者のように歩いて行きます。
「あぁ、なんて楽しいのでしょう。復讐、復讐、復讐、これこそ私が求めていた快楽。とっても愉しいですわ‼」
アハハ、アハハハハハハハハハハハ‼ 赤ずきんちゃんは狂ったように笑い続けます。その様子に、森の獣たちも赤ずきんちゃんのことは遠く見守るだけです。
「あぁ、もっと、もっと、もっともっともっともっともっと‼‼ 愉しみたい」
赤ずきんちゃんは嗤います。狂ったように、いや、赤ずきんちゃんは狂っているのでしょう。最初に血を浴びてしまった、あの時から。
「おばあさん、お母さん。ありがとう」
その感謝は、空虚に響きました。そして、赤ずきんちゃんが歩いて行った先、そこには赤ずきんちゃんが住む村がありました。
「ねぇ、猟師さん。私、とっても楽しいの」
聡明な猟師さんは、その一言で察しました。察してしまいました。すると、猟師さんはいつもの様に一つ溜息を吐き、猟銃を構えました。
「赤ずきんちゃん。君はどこまで………どこまで狂うんだい?」
パァンッ、派手な発砲音が響き、赤ずきんちゃんは胸に熱さを覚えました。感じたことのない、灼熱のような熱さです。
ゆっくりと、彼女は自分の胸を見下ろします。
滑稽にも見えるような勢いで、血が噴き出していました。
パリン
けたたましく、ガラスが割れる音がしました。見ると、ぶどう酒の瓶が地面で割れ、赤い染みを派手にぶちまけていました。
ぶどう酒のアルコール臭と、赤ずきんちゃんの血の匂いで、周囲にはむせ返るような香が漂っています。それでも、猟師さんはじっと、赤ずきんちゃんのことを見つめています。それが、彼なりの看取り方なのでしょう。まだ硝煙を上げる銃口を上に向け。じっと、瞬きもせずに、赤ずきんちゃんの臨終を見守っています。
「猟師さん、ありがとう」
赤ずきんちゃんのずきんが、はらりと落ちます。滑らかな黒髪がサラリと流れ落ち、久しく出すことのなかった素顔が露わになります。
その顔は、笑っていました。今までないほどに清々しく、綺麗に、美しく、笑っています。その顔を見て、猟師さんもまた、笑いました。
それが、赤ずきんちゃんの最後の言葉となりました。