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第三話

 「よし、じゃあこれからの二人の同居生活に必要なことを決めていこう。」

 くだらない話で緊張がほぐれたところで俺が話を切り出すと、


 「寝室は一希君のお父さんとお母さんが使っていた部屋を使っていいんだよね?」

 父さんと母さんは長期でアメリカにいなければならないみたいだからそれでいいだろう。


 「そうだね、俺は今まで通り自分の部屋を使う。リビングとかキッチン、お風呂は共用でいい?」

 俺は今まで通りだな。意外と生活は変わらないんじゃないか?


 「それでいいよ。家事の分担はどうする?一希君って料理できるの?」

 家事なんてできるわけがない。あとできれば毎日杏奈の料理が食べたいのでこんな提案をしてみよう。


 「意外なことにできないんだよ。できれば料理はお願いしたい。その代わり杏奈の部屋以外の掃除は俺がやるよ。」

 自分の部屋は自分で掃除するだろうからな。これでオッケーしてくれたらうれしいんだが、


 「別に意外ではないけどそれでいいよ。生活費はお互いの両親が話し合って口座に入れといてくれるみたいだから心配はないね。」

 簡単にオッケーしてくれた。これは革命です。これから毎日好きな人が作るご飯を食べられます。神様ありがとうございます。これからはより一層食事に感謝しようと思います。


 「買い出しは週末にまとめてのほうがいいよね?平日は学校あるし。」

 お互い文芸部で忙しくないとはいえ、一応地域で一番の進学校に通っているのだ。授業が終わるのは4時を過ぎることが多い。やはり平日に買い出しは厳しいだろう。


 「そうだね。買い出しは週末に二人で行こう。」

 杏奈から二人でという提案。夫婦みたいでうれしいが、買い物くらい一人でできる。なので、


 「俺が一人で行くよ。重いものとかあるだろうし。買いたいものを指示してくれれば大丈夫。」

 さすがに指示は欲しいよね。料理担当は杏奈なんだし、


 「一希君に任せると不安だから私も行く。料理するのは私だから自分で選びたいの。」

 確かにね。新鮮な野菜とか見分ける自信ないけどさ。夫婦みたいでうれしいけどさ。


 「じゃあ、買い出しは週末に二人でってことだな。」

 杏奈がいいって言うならいいのだろう。


 「あと、決めることってある?」

 大事なことを決めておかなければならない。それは、


 「この関係を学校でどう話すのかは決めとく必要がある思う。」

 やはり、これだろう。友達に話した時の反応なんて話さなくてもわかる。絶対面倒なやつだ。


 「一希君はどうするつもりだったの?」

 ここはこれしかないだろう。


 「俺としては余計な詮索をされるのが嫌だから、秘密にしようと思ってた。」

 杏奈には好きな人がいるみたいだし、変な噂になるのは避けた方がいいだろう。


 「私も賛成だよ。二人の秘密ってなんかいいいね。」

 さっきから、杏奈の反応がおかしくないか?二人で買い物に行くことにこだわったり、二人の秘密ってところを強調したり。まあいいか。


 「よし、じゃあそういうことで。」

 ちょうど人生最高のオムライスを食べ終わるのと同時に、これからの方針も決まった。





 食事をするということは洗い物がでるということでもある。これがなかなか面倒なものなのである。しかし、食事を作ってもらったのである。ここは俺が洗い物をすべきであろう。ということで、


 「洗い物は俺がやるからいいよ。休んでて。」


 「いや、わたしがやるよ。」


 「作ってもらって洗い物まではさすがに悪い。俺がやる。」


 「じゃあ、二人でやろう。」

 出ました。杏奈の「二人」で発言。なんでそんなに「二人で」と言ってくるのかはわからないが、それでは罪悪感が残るので、


 「杏奈の担当は料理を作ること、俺は洗い物をする担当、適材適所だ。」

 と言うと、


 「二人でやったほうが早いよ、効率重視で。」

 言い負かされてしまった。せっかく四文字熟語まで使って説得しようとしたのに失敗した。学校の勉強は俺の方ができるのに言い合いになると必ず負ける。女子ってなんであんなに口が回るのだろうかと不思議に思う今日この頃であります。そんなことを考えながら悔しい気持ちを紛らわし、結局「二人で」やることになった洗い物も二人だとかなりのペースで進み、


 「終わったー。」


 「やっぱり二人だと早いね。」


 悔しいが言い返せないのであります。しかし、杏奈はやっぱり「二人」推しをしている気がする。なぜだろう。わからないものは考えても仕方ないって父さんも言ってたことだし、考えるのはやめよう。


 「じゃあ、次は買い出しだね。」

 この杏奈の言葉で親のありがたみを再認識した俺であった。


 「家事ってこんなに面倒なことだったのか。」

 俺の心の叫びは誰にも聞こえなかった。

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