第一話
初投稿作品です。読みにくい点も多いかとは思いますが、温かい気持ちでお読みください。
「父さん、それって4月から一人暮らしになるってこと!?」
夕飯を食べながらの父さんの発言に、驚いた感じのリアクションをしてしまったが、俺の心の中は意外と落ち着いていた。いつも突拍子もないことを突然提案してくる父さんのことだ。訂正、提案ではなく既に決定事項である。
「いきなり一人暮らしは厳しいだろう。それくらいは父さんにだって分かる。なにせ俺の息子だからな。」
そんなことを言って笑う父さん。悔しいが父さんの言うとおりである。俺は家事は一切できない。しかし、高校2年の男子で家事ができないのは普通だと思っている。
「なんだ、じゃあ4月からは母さんと二人暮らしか。」
正直何も変わらないだろうと思いながらつぶやくと、
「私は一さんについていくわよ。一さん一人じゃなにもできないから。」
ここで俺の頭は?マークに埋め尽くされた。よくアニメとかである頭の上に?マークが浮かんでるやつ、まさにアレだ。まず高校2年で両親と離れて暮らすことになるなんて思ってもみなかったし、一番の疑問は二人暮らしの相手が誰なのかということだ。母さん以外に心当たりのなかった俺は、その疑問を口にすると、今日一番の衝撃的な返事が返ってきた。
「その相手は、杏奈だよ。」
この時俺は悟った。あと2年の俺の高校生活から「平和」の2文字がなくなってしまったことに・・・
俺はこの物語の主人公、和田一希よろしくな!なんて柄でもない自己紹介をして気を紛らわしていないと正気でいられないほど俺の頭の中は混乱していた。いやだって、考えてみれば分かるだろ。いきなり4月から杏奈と同居だなんてこれが落ち着いていられるわけがない。
杏奈とは父さんの会社の同僚の娘で、俺と同じ高校に通うクラスメイトである。そして何より俺の初恋の相手で、今でも好きである。しかし、告白はしていない。才色兼備、文武両道の杏奈に告白なんてできるわけがない。
「はぁー、4月からの高校生活には希望と不安が半々ってか。このセリフは新1年生にためにある言葉だろうが。」
そんなことを考えながら衝撃の一日は幕を下ろしていくのであった。
ここで俺の家族について紹介しておこう。
俺の名前は和田一希。県立高校に通う高校2年生である。特徴の少ないどこにでもいる高2男子を思い浮かべてほしい。それが俺である。しいて言うなら勉強はできる方、運動は少し苦手といったところであろうか。文芸部に所属している文系男子である。そして悲しいことに彼女いない歴=年齢である。
俺の父さん、あの突拍子もない父さんである。名前は和田一。実はIT企業の社長である。社長といっても大学の同期と2人で起業したベンチャーだが。自身もプログラマーでかなり頭はいい。会社も上手くいっていて今回海外展開することになり、社長自らアメリカに行くことになった。それが同居話の発端である。
俺の母さん、名前は和田希未子という。勘のいい人ならお気づきだろうが、俺の名前は父さんと母さんに一字ずつもらってできている。そしてけっこう抜けたところのある父さんをフォローする達人である。会社では父さんの秘書のような役割である。父さんとは社内結婚で、夫婦仲はとても良い。これは良いことなのだろうが、たまに俺が忘れられてる感がある。
そして、家族ではないが杏奈。若林杏奈である。彼女は先にも言った通り完璧人間である。そのため、これまで多くの男子がわずかな可能性に賭け告白してきたが、結果はことごとく玉砕。そして断るときの決まり文句、「私には好きな人がいるので・・・」はもはや伝説になっている。そしてなぜか高校では文芸部に所属している。
杏奈の父、若林公平は先ほどの父の大学の同期である。俺の父さんと二人で共同経営責任者として会社を支えている。会社の成長にともない、日本の本社を東京に移すことになり、そこの責任者として彼は東京に行くことになったのである。その際、単身赴任を提案したが、奥さんに「あなたに一人暮らしはできないから私もついていく。」と言われ、娘には「転校したくないから私は残る。」と言われたため、今回の同居話が生まれたのであった。