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無限の書  作者: まる
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能力の目覚め

【能力の目覚め】


僕は東国と言う国の、大公と言う爵位を持った家柄の長男として生を受けた。

そして僕には・・、前世の記憶と言う物が存在するらしい。




その兆しは4歳頃からあった。


僕の名前はエールデ。鏡に映る自分は少しくせっ毛の金髪に碧眼だった。

やや褐色の彫りの深い顔に、黒髪に黒ひげ、黒い瞳の目の前に立つ人物もエールデと言う。


君は誰? 君が僕? どういう事・・?




もう一人のエールデが、多くの人たちと話している。


見知らぬ衣装・・


「(この服は何処の国の物・・?)」


見知らぬ人々・・


「(あなた達は誰・・?)」


聞いた事のない言葉・・


「(何処の国の言葉? 何を言っているの・・?)」


最初の頃は黒のエールデに話しかけていた夢だった。

いつの間にか金のエールデ、僕自身に話しかけてくる夢を見るように変わっていった。




この時、僕はまだ4歳・・。前世の記憶の片鱗と言う言葉するら知らなかった。




東国の建国時の戦争の歴史や、今ある隣国との小競り合いを学んだ頃から、見た事も聞いた事もない武器を使って、戦っている夢を見るようになった。


「(この武器は何? 君たちも戦っているの・・?)」




6歳の頃になると、この世界を創ったと言う神様と話をする夢を見始める。


「(貴方は・・、誰?)」

『神と呼ばれる存在の者だ』

「(神・・様・・?)」

『そう。そなたに『大いなる力』を授けに来た』

「(『大いなる力』?)」

『『大いなる力』をどの様に使っても構わない。

しかし出来る事ならば、君の国を守る事に使って欲しい』

「(僕の・・国を守る?)」

『まずは夢から覚めたら、『大いなる力』を使うための鍵を作ると良い』

「(鍵? どうやって・・?)」

『鍵の創り方を教えよう』


この夢は、実際に『大いなる力』を使えると言う、鍵を創りだすまで続いた。


『鍵を創るためには媒体が必要となる』

「(媒・・体?)」

『元になる物の事だ。鍵と言うイメージから、家の鍵を用意するのも良いだろう。

『大いなる力』から魔法をイメージして、杖でもローブでも構わない』


媒体・・、神様・・、鍵・・、『大いなる力』・・


そんな事を考えながら家の中を歩き回っていると、ある物に目が止まる。


「(これなんか良さそうに思うけど・・、大丈夫かな?)」


世界の始まりの物語が描かれた、子供の僕が抱える程の大きさの絵本だった。

神様と話をしたからなのか、この本が良い様な気がした。


「(上手く出来なかったら、神様に聞いてみよう)」


そう考えて夢の中で、神様に教わった通りの手順を行ってみる。

夜の遅い時間、月が一番高い位置にある時間。


「目を瞑って、空に浮かぶ月からの光が、強く自分だけに当たる様に想像する」


(カチッ・・ 鍵生成第一段階クリア)


どんどん月に自分が近づいて、手の中に月を持っている様に想像する」


(カチッ・・ 鍵生成第二段階クリア)


「神様から教わった言葉を口にする。


神の御名を褒め称えよ

神の御名に栄光あれ

神の『大いなる力』具現せよ


だったよね確か・・えっ!?」


(カチッ 鍵生成第三段階クリア。鍵の生成を開始します)


抱えていた絵本が小さくなっていた事に気付く。

目を開けると腕の中の絵本は、大人の掌よりも一回り程大きい、豪華に装丁された本に変わっていた。


本を開き捲っていくと、その中には楔の様な模様が連なっており、何が書かれているのか、何を意味しているのか全く分からない。


ただ持っているだけで『大いなる力』の説明や使い方、注意事項など必要な事や欲しい情報は思うだけで、頭に浮かんできた。


ただ『大いなる力』の鍵に触れていなければ、『大いなる力』は使用できなかった。




夢と思われた事は、その時に前世の僕が体験した記憶であると知った。


そして神様に会った時に言われた通り、自分にはこの国を守るために『大いなる力』が与えらると言う約束も思い出したのだ。






8歳まで『大いなる力』の使い方を、十分熟知する事に専念した。


この頃は神様ではなく、『大いなる力』の鍵に問いかける事で色々な知識が得られた。

そして使用の際の注意事項も、6歳の子供でも分かりやすく、映像つきで説明してくれたから。


天空の月が地面にぶつかり、人が、国が、世界が滅びる様子が映し出されていた。

想像を絶する力の大きさ・・ 正に『大いなる力』なのだと、幼いながらに理解した。


だから正しく『大いなる力』を使えるように、必死に勉強をした。




小さな事を繰り返し繰り返し、少しずつ『大いなる力』の使い方を学習する。


大公家の目的を果たすために、必要な力を作って見たり。

魔法使いと呼ばれる人々が使う不可思議な力を、聞きかじって真似してみたり。

あったら便利だなと思う事を、成し遂げられる様に試してみたり。

前世の記憶に残る、後悔の念を晴らす方法を考えてみたり。


その度に頭の中で色々な方法を思い描くだけで、『大いなる力』を使う事ができた。




思うだけで使えてしまうのは危険と感じて、前世の記憶を頼りに安全装置を考える。


大公家が国王家の血筋を守るためや、大地など長期間に祝福するなど、恒常的に効果を及ぼす必要がある『大いなる力』をパッシブとして、必ず宣言が必要なものとする。


魔法使いたちが攻撃の際に使う様な、任意のタイミングで発動させる『大いなる力』をアクティブとした。

特にアクティブが使用可能状態の場合には、視野に前の世界の兵器についていた、ターゲットスコープと呼ばれる物が、自分だけに見える様に細工した。


『大いなる力』を使用するために、必ずパッシブやアクティブと言った使用の宣言を必要とする設定を思い浮かべると、『大いなる力』の鍵にその通りの効果が追加された。


2年間『大いなる力』と向き合って、力の使い方をより深く身に付けて行く。






『大いなる力』とは別に、8歳になると、次期大公として領地を見て回る様になる。


大公家に与えられた、先祖代々の土地からの収益や税収を還元して、人々は豊かな活気ある生活をしていると聞いていた。


邸宅のある町を巡ると、正にその通りの状況が見て取れた。

道は多くの人で満ち溢れ、屋台も多く活気があり、色々な物が行き来していた。


「(大公領は富を民に回しているからこそ、豊かなんだ!)」


大公として、民との関係の大切さを知る。




しかしその町を離れると、少しずつ事情が変わってくる。


観光地としている地域は、確かに豊かで活気があった。

傍にある湖で漁業を営む人々は、このままでは良くないと訴えていた。


「最近、湖から取れる魚が小さくなってきているし、量も減っている」

「観光地に来る人たちは、魚料理目当ての人たちが多いから、違法な乱獲も心配だ」

「(地域や場所の特性によって、抱えている問題が違って当然か・・)」


漁業に携わる人々の声を聞きながら、自分が出来る事を考えて行く。


「皆さんのおっしゃる事は分かりました。一つ提案があるのですが。

(『大いなる力』を使ってみよう。今まで準備してきた力を)」

「どの様な事でしょうか? 領主様」


漁業組合も観光組合もあり、役所の人たちも協力して、少しでも状況を良くしようとしているらしい。

こう言う所にこそ『大いなる力の』出番だと思った。


「皆さんは、日々この湖からの恵みに感謝してきたと思います」

「勿論です」

「今度は漁業組合やこの湖から恵みを受けている皆さん揃って、感謝を捧げる儀式をしては如何でしょうか?」

「感謝を・・、捧げる儀式? ですか・・」


初めての言葉に、関係者全員が顔を見合わせて首を傾げている。


「お疑いかと思いますが、是非一度やって見ましょう」

「分かりました。領主様のお言葉に従いましょう」


領主の権限で、漁業関係者を集め、神に今までの恵みに感謝し、これからの恵みを願う儀式を行う事にする。


エーデルは胸元で、『大いなる力』の鍵を両手で握りしめる。


「パッシブ:祝福 湖と湖に住む魚と、湖から糧を得る人々に」


『大いなる力』を皆の見ている前で発動する。


間近で見る魔法の発動、金色で描かれる幾何学模様が湖に吸い込まれるのを見て、その場に居た全員が茫然とする。


「この湖が豊かになる魔法をかけました」

「・・えっ!? あっ・・はい・・魔法?・・ですか」


儀式と言うのが魔法を指していた事を、人々はその時初めて理解する。

『大いなる力』の事は誰も知らないので、魔法と言う言葉を使って説明したのだ。


「どの位効果が出るか分かりませんので、近い内にまたこちらにお伺いしますね」

「・・分かりました。お待ちしております」


未だに呆然とする人々を解散させ、一度邸宅のある町へと帰る事にする。






流石に1日、2日では成果を期待するのはおかしいと、別の地域へ行ってみる事にする。


向かった先は酪農を主に行っており、大公牛と言う有名な食材を生産している。


「領主さまの支援もありまして、うちらはとても助けられています」

「そう・・、ですか」


支援と言う言葉と、酪農家たちの表情の疲れに引っ掛かりを覚える。


「何か問題があるのですか?」

「・・領主さまに言ってもと思うのですが、大公牛は病気に弱いんです。

そのせいか死産も多く、なかなか安定した生産が難しい状況でして・・」

「その様な事があったのですね」


病気と死産・・、酪農家としては気が気ではない事だろう。


「皆さんの苦しみにどれくらい応えられるか分かりませんが、一つ提案があります

(どの位効果が出るか分からないけど、『大いなる力』を使ってみよう)」

「どの様な事でしょうか?」

「この牧草地に、神様の祝福を求めてみては如何でしょうか?」

「・・神様に? 祝福を?」

「そうです。酪農組合や酪農関係者皆さん揃って、感謝を捧げる儀式をやって見ようと思うのです?」

「感謝を・・、捧げる儀式? ですか・・」


初めての言葉に、やはり関係者全員が首を傾げている。


「お疑いかと思いますが、是非一度やって見ましょう」

「分かりました。領主様のお言葉に従いましょう」


領主の権限で、酪農関係者を集め、神に今までの恵みに感謝し、これからの恵みを願う儀式を行う事にする。


湖で行ったと同じように、『大いなる力』の鍵を両手で握りしめる。



「パッシブ:祝福 牧草地と牧草地にある動植物と、牧草地から糧を得る人々に」


『大いなる力』を皆の見ている前で発動する。


間近で見る摩訶不思議な現象、金色で描かれる幾何学模様が牧草地に広がっていくのを見て、その場に居た全員が唖然とする。


「この牧草地が豊かになる魔法をかけました」

「あっ・・はい・・。・・えっ!? 今のが魔法?」


儀式と言うのが魔法をかける事で、魔法にしても今まで見た物と違う事に驚きを隠せない。

『大いなる力』は知らなくても、魔法を知る者もいたのだろう。


「どの位効果が出るか分かりませんので、近い内にまたこちらにお伺いしますね」

「・・分かりました。お待ちしております」


未だに呆然とする人々を解散すると、邸宅のある町へと帰る。






やはり直ぐには成果を期待出来ないと思い、別の地域へ行ってみる事にする。


領地の森林地域で、薬草が豊かに育成し、狩人の活躍の場でもある。


「領主様から森を解放されており、我らはとても助かっております」

「それは良かった」

「ただ・・」


森林の解放だけでは、何か問題があるのだろうか。


「ただ・・何でしょうか?」

「薬草の育成が悪く質が落ちています。採取出来る量も減っています」

「獲物も減っていて・・」

「そう言う状況なのですか」


薬草のや野生動物の減少、どちらも生活に大きく関わってくる。


「どれ位効果があるか分かりませんが、一つ提案があります

(湖や牧草と同じ様に『大いなる力』を使ってみよう)」

「何でしょうか?」

「皆さんは、日々この森からの恵みに感謝してきたと思います」

「勿論です」

「今度は薬草組合や狩人組合、この森から恵みを得ている人々全員で、この森林を与えてくださった神様に感謝の言葉を伝えるのです」

「・・神様に? 感謝・・ですか?」


前と同じ言葉を繰り返すと、関係者全員が同じ様に首を傾げる。


「お疑いかと思いますが、是非一度やって見ましょう」

「分かりました。領主様のお言葉に従いましょう」


領主の権限で、森の関係者を集め、神に今までの恵みに感謝し、『大いなる力』の鍵を持ち、恵みを願う儀式を行う。


「パッシブ:祝福 森林と森林にある動植物と、森林から糧を得る人々に」


『大いなる力』を皆の見ている前で発動する。


間近で見る魔法の発動、金色で描かれる幾何学模様が森の中に広がっていくのを見て、その場に居た全員が驚いている。


「この森が豊かになる魔法をかけました」

「・・えっ!? 魔法ですか? 今のが・・」


実は魔法をかける事が儀式と知って、見た事も聞いた事もない魔法に驚嘆する。

『大いなる力』は説明していないので、前の所と同じ様に魔法として伝えておく。


「どの位効果が出るか分かりませんので、近い内にまたこちらにお伺いしますね」

「・・分かりました。お待ちしております」


驚きと困惑する人々を家に帰すと、自分も邸宅のある町へと帰る事にする。






初めて各地を回り終え、邸宅に戻って来た夜の事、一人バルコニーに佇む。


「同じ人なんかいない様に、土地だって同じ場所なんかありはしないんだ」


その場その場にあった営みがあり、その時々の問題が存在する。


バルコニーに寄りかかり、目を瞑り天を仰ぐ。


「大公領に暮らす人々に、僅かでも喜びが訪れる様に・・」


病気にかかりにくくなるでも、病気が少し軽くなるでも良い。

明日、いつもより早く起きられるでも、何時もより良い目覚めでも良い。

ちょっと疲れにくくなるでも、ちょっと元気になるでも良い。


目をゆっくりと開き、『大いなる力』の鍵を両手で掲げ発動する。


「パッシブ:祝福 この大公領に住む人々に、ささやかな恵みを」


超巨大魔力精製炉である月から、エーデルに黄金の光の線が注がれ、彼を中心とする幾何学模様が一気に広がっていく。






しばらく時間をおいて、再び各地を回る事にする。

自分が使った『大いなる力』は、人々に、大地に何らかの影響を与えたのだろうか?


最初に訪れた湖の町へと向かう。


エーデルの馬車を見かけた漁業関係者は、手を振って挨拶をしてくれる。


「(何か良い事があったのだろうか?)」


もしそうなら良いのにと手を振り返す。




役場に行くと、町長や漁業組合の代表が興奮した様子で駆け寄ってきて話してくる。


「領主さまの魔法のお陰で、湖の漁業は改善しております」

「そうなのですか? 例えばどのようにでしょう?」

「まず漁獲量は増えております。又、魚のも良く育ち多きなっており、更には質も良くなっております」

「そうですか、それは良かった・・」


まだ言葉の途中を遮ってまで、祝福の効果を説明してくれる。


「まだまだありまして。ご覧ください! この貝は今まで湖に居なかったのです。

領主様の魔法の後から見つかる様になりまして!」

「そんな事があるのでしょうか?」

「もしかしたら以前から居たのかも知れませんが、魔法の祝福による物と思っております。

何人かで調べましたが、毒の様な物も無く、食せばかなりの美味でありました。

それから・・」


そっと箱を出し蓋を開けると、薄ピンク色の珠が三つ入っていた。


「これは・・?」

「真珠です。稀に貝から見つかる物です」

「文献で呼んだ事があります。貝の種類の中には真珠を育てる物があると」

「この貝もそうだったようで。真珠は領主様にお納めします」

「分かりました。貝については魚と同じように取り扱って下さい」

「おお! ありがとうございます」


漁業組合の代表は礼を言う。


酷いように思えるが、大公領関わらず、その土地に住む代わりに領主に税金を納める事が求められる。

また領地の資源を使う代わりに、使用料を支払う必要があるのだ。


嫌ならば他の領地に移れば良い。


ただ領主も人を招き居住してもらうためには、得た収益を民に還元したり資源を解放する。

搾取する領主も多いが、本来はギブアンドテイクの関係なのだ。


今まで湖に自生せず、腐りやすいため手に入りにくかった貝が、新たな使用料を負担する事無く獲る権利を得られただけでも、領主の大盤振る舞いと言えるだろう。


「注意していただきたいのは、魔法の効果なのか、一時的な回復、偶然なのかはまだまだ分からないと言う事です」

「確かに、尤もですな」

「注意深く見守って、何かあれば直ぐに連絡する様にして下さい」

「分かりました」


これほど広範囲で『大いなる力』を使った事は無く、まだまだ未知数である。


町長や漁業組合の関係者に注意を促すと、次の地域へと向かう。






牧草地でも、同じように酪農家たちから熱烈な歓迎を受ける。


「領主様の魔法で祝福していただいたお陰で、全てが上手く言っております」

「魔法と言うのは、そんな万能な物ではありません」

「いやいやご謙遜を。

牛たちが病気に強くなり、そのためか死産も減っております。

加えて言わせていただきますが、肉質も向上しております」

「そんな簡単に効果が分かるのですか?」

「勿論です。伊達に毎日、牛たちを見ている訳ではありませんからな」

「なる程・・」


酪農家で生計を立てている人たちの、経験からの言葉には疑いようもない。


「魔法であっても一時的な事もあります。家畜たちの状況は常に目を光らせて下さい」

「分かっております」


酪農家たちに注意を促し、次の目的地へと向かう。






森から糧を得ている人々からも、感謝の言葉を多く掛けられる。


「領主様、ありがとうございました。

お陰で薬草が次々と育ち、中には珍しい種類の薬草まで自生する様になりました」

「それは良かった」

「狩人たちも喜んでおります。野生動物を多く見かけるようになったと喜んでおります」

「何よりな事です」


薬草や狩りで生計を立てる人たちの生活に、良い兆しがる事は喜ばしい限りだ。


「それから、こちらをご覧下さい」

「これは・・? 何かの果実でしょうか? 見聞きした事がないのですが?」


彼らが二種類の果実らしきものを差し出す。


「領主様の魔法の祝福の後から見つかった物で、この森に自生しておりました」


一つは紅色の固い殻に覆われており、殻を割ると白い果肉が現れる。

もう一つは赤橙色の皮に覆われれ、向けば黄色い果肉が現れる。


勧められて食してみた所、上品な甘さと香りの白い果実と、濃厚な甘みを持つ黄色い果実。


「これは・・、美味しい!?」

「そうでごさいましょう」

「今までにない果実なのですよね? では白い方を茘枝、黄色い方を檬果と名付け様と思います」

「畏まりました」


名前を決めた後、薬草組合や狩人組合の関係者が言いにくそうに口を開く。


「つきましては・・」

「使用料につきましては、魔法の効果なのか、皆さんの働きなのか十分分かっていません。

今まで通りで構いません」

「ありがとうございます」

「但し茘枝と檬果に関しては、大公領内だけの流通に留め、こちらの求めに応じて納める様にして下さい」

「畏まりました」


大公領には観光地がある。

この地でしか手に入らない果物があるとすれば、観光客のみならず美食家たちもこぞって集まってくるに違いない。


「先ほども言いましたが、魔法の力なのか、どちらにせよ一時的な物なのか、しっかりと見極め、何かあれば直ぐに対応できる様にして下さい」

「承知いたしました」




今の今は領民たちは魔法の祝福による恵みに沸きたっている。

逆にエーデルはこの豊かさを維持するために、多くの領民たちの声を聞かなくてはと自身に言い聞かせる。


そんなエーデルの心配を余所に、領民との関係は良く、領地の豊かさは長く続いていく。





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