時計草
泣かないでください
私はきっと
ここに あなた方の元に
戻ってきますから
私の命の灯火は
もうすぐ消されてしまうけれど
それでも私は
私の命を奪おうとする
そんな人々のことでさえも
赦そうと思うのです
あなた方は
泣き叫ぶでしょうか?
悲嘆に暮れるでしょうか?
消えゆく私の名を
何度も何度も叫ぶのでしょうか?
私の命を奪い去る人々のことを
心の底から憎むのでしょうか?
そんな私の頼みを一つ
たった一つだけでいい
聞いてもらえるならば
どうか 泣かないでください
どうか 悲しまないでください
どうか 誰も憎まないでください
私はきっと
私を信じるあなた方のために
ここに戻ってきますから
消えゆく私の最後の言葉を
どうか信じてください
あなた方が私を信じるように
私もあなた方を信じています
あなた方を見守る存在に姿を変えて
トケイソウ(英名:passion flower)
トケイソウ科トケイソウ属の花。別名、パッションフラワー、パッシフローラ、ハナトケイソウ。七月から八月にかけて、白色や赤色や赤紫色などの花を咲かせる。原産地は、ブラジル、ペルー。花言葉は、信ずる心、信仰、聖なる愛、宗教、恋の激しい苦しみ。
以上、第三十三回「時計草」の解説でした! 今回は、以前何で書こうか悩んでいたときに、姉からリクエストという名の無茶振りがあったので書いてみました。
私の「小説家になろう」用Twitterアカウント(アカウント名→葵枝燕@小説家になろう)をご存知の方は知っているかもしれませんが、実はトケイソウでつくった詩は二パターンあったんです。一つは今回掲載したものです。トケイソウが磔にされたイエス・キリストから生まれた花、という話を思い出して書いたものになっています。もう一つは、数あるトケイソウの花言葉の中でも「恋の激しい苦しみ」を重視したものです。あとは、トケイソウという名前から“時間”にも着目してみた部分もありました。実はこの、掲載をしなかったものから先につくっていました。こっちも気に入っているのですが……誰かの目に触れる余地があるのかどうか。
さて。
最近、Twitterに設置したお題箱に『花詩集』へのお題をいただきました。手持ちの本も調べつつ、私なりに表現したいと思うので、気長にお待ちいただけますと嬉しいです。あとは――私の一番好きな花でも、詩を書きたいと思っているので、そちらも気長にお待ちくださいませ。
それでは、また次回お目にかかれますように。
葵枝燕でした。
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参考資料
・中山草司監修『花言葉物語 贈る花に想いをこめて』、永岡書店、[一九九〇年]
・浜田豊著『花の名前 —由来でわかる 花屋さんの花・身近な花522種—』、婦人生活社、[二〇〇〇年]
・金田初代文、金田洋一郎写真『持ち歩き! 花の事典970種 知りたい花の名前がわかる』、西東社、[二〇一五年]
・二宮孝嗣著『美しい花言葉・花図鑑 彩りと物語を楽しむ』、ナツメ社、二〇一五年




