~6~腹黒ロミオと猫の人外ジュリエット
一年ぶりの更新だとは、驚きです。前の話とは一年くらい経過しているんだ~・・・(遠い目)
今回はロミオとジュリエット! どうぞ、楽しんで見て下さいませ
昔々、互いが敵対している貴族の名家がいました
「おい、そこをどけよ。腰抜けキャプュレット一派の野郎」
「なんだと!!?野蛮なモンタギューの一味のカスに言われたくないわ!」
モンタギュー一族率いる組織とキャプュレット一族率いる組織はそれはそれは仲が悪いことで有名でした
モンタギュー家のロミオもキャピュレット家の猫の人外・ジュリエットも、組織の人たちと同じように仲が悪いかと思えば実はそうでもありません
というと・・・
「ジュリエット、大丈夫かい?君の周りの女の友達、僕らのせいで避けられていないかい?」
「ロミオ、心配してくれてありがとう。大丈夫、彼女たちはそんなことしないわ。変わらず接してくれているわ」
組織の人たちが罵詈雑言を吐き捨てているのを小さい時から見ているからでしょうか
二人は良好な関係で、お互い友達でいます
その時ジュリエットは『なんてロミオは心優しい紳士なんだろう・・・』と思っていました
あの瞬間を、見るまでは・・・
その日、酒場でたまたま忘れ物をしたロミオに用があったジュリエットは知人に恋文と手作りのお菓子を渡すよう強引に頼まれロミオを探していた時のこと
「いた!ロミオ、忘れ物をした貴方に贈り物よ?はい」
先に贈り物を渡されるとロミオは嬉しそうに
「悪かったね、ジュリエット。ありがとう」とお礼を言った後、二人は別れました
別れた後、ジュリエットは忘れ物の本を渡していないことに気付き、ロミオの後を追います
誰もいない街角の方で、ロミオの後ろ姿が見えるとジュリエットは声をかけようとした瞬間
―・・・ビリリッ!紙を引き裂く音と、
「十人並みの家柄と容姿の女が、俺に付き合える妄想なんかして・・・笑える―」という嘲笑う言葉がジュリエットの耳にも届きます
ロミオが知人の手作り菓子をどうするか悩みふと顔を上げると
「「・・・」」
驚愕で固まったジュリエットと視線が絡まりました
「・・・ちっ」
ロミオは固まったままのジュリエットの手を掴み、壁際までし
ドンッ!!!両手で壁にジュリエットを押し付けると
「・・・ねえ、ジュリエット。【僕】のお願い聞いてくれる?」
女の子が垂涎しそうな甘いシチュエーション(見た目)にジュリエットは涙目になりながら、最悪なことになったと思ったそうです
そのジュリエットの予想は的中しました
「ジュリエット~。見てごらん、綺麗な花だろ?」
「ジュリエット!僕を置いていかないでよ」
「ねえねえジュリエット」
ロミオはジュリエットが先月目にした自身の変貌を誰かに喋っていないか始終ジュリエットの側から離れません
「ジュリエット、あなたいい人いたんだ」
「『春が来ないから、寂しいな』って言っていたんじゃないの?あれ、ロミオ様を嫉妬させようと・・・??」
「ちが「そうだったんだ・・・。ゴメンね、ジュリエット。寂しい思いをさせていたみたいで・・・・・・」」
しょんぼりとし顔をほの暗くさせたロミオを見て、ジュリエットの女友達は温かい励ましとフォローの言葉を送ります
そんな風景を見せつけられたジュリエットの心中は(みんな、事実が違うのぉ・・・っ!)と泣き言を吐く術しか知りません
こうして度々敵同士の家の娘息子の二人が一緒にいることが街の噂になるのは時間が掛かりませんでした
当然この噂を良く思わない人たちがいます
モンタギュー一族率いる組織で現当主を務めているアレンと右腕であるクラウスです
夜彼らは屋敷の人も知らない場所で密談をしていました
「嘆かわしい・・・何故ロミオはあのような小娘を・・・・・っ!!」
「アレン様、落ち着きなさいませ。わたくしめに良い案がございます」
クラウスがアレンに耳打ちすると「・・・なんと」と言い、落ち着きを取り戻しました
「ロミオも、目を覚ますだろう」
「ええ、きっと・・・」
二人の計画は闇に消え、彼ら以外誰もそれを知らずに夜が終わりました
一方ジュリエットの方はというと屋敷にある自分の部屋で夢を見ていました
【ねえジュリエット。なんで父さんは好きでもない女の人と結婚をしたんだろう?君のお母さんのことが好きだったのにさ】
【ロミオ仕方ないわ。お母様たちの家と貴女の家の仲が良くないから、他の名家との政略結婚をするほかなかったと思うの】
【・・・今は、こっそり会えるけどいつか会うのでさえ難しくなるのかな?】
【!!それ、は・・・否定できないわ】
【・・・ジュリエット、僕は馬鹿げた話だと思うんだけどさ】
【??】
【年月単位で険悪の仲のモンタギュー家とキャプュレット家がいつか、手を取り合うとまではいかなくても互いの顔を見合わせる度に悪口の応酬をしなくなる間柄になれたらさ・・・・・・になって欲しい】
「・・・あれ?」
ジュリエットは眠りから覚めるといつもの景色が目に映りました
先程の夢は小さい頃ロミオと交わしたやりとりなのです
なんで昔のことを思い出したのだろう・・・? 最後の言葉はなんだっけ・・・??
そう思いましたが、今日もロミオとの約束があることを思い出すと朝の夢のことをすっかり忘れていったのでした
今日はロミオの誕生日でジュリエットは招待をされた身、なのですが・・・
「あれがキャピュレット家の次期女当主・・・」
「何故ロミオ様はあんなのをお選びになったのか・・・」
「いくら期間限定のお遊びとはいえ・・・・・・」
ジュリエットは無数の悪意にさらされていました
敵意のある言葉をかけられる想定はしていたジュリエットですが、聞き捨てならない言葉が耳に入りました
期間限定のお遊び?それはどういうことだろう?? ジュリエットはロミオの所へ行き、説明をしてもらおうと足を向かわせようとすると・・・
「おおっ!ご当主がお選びになった婚約者のメリーゼ様ではないか」
「なんともまあ・・・絵になる二人だな」
ジュリエットの目にも二人の姿が映ります
(おっとりした優しい性質モードの猫かぶり状態とはいえ)イケメン利幼馴染と彼のターコイズのような瞳にも似た目を持っている大人びた雰囲気の婚約者
周りがお似合いの二人だと囃し立てるのも無理はない そう思ったジュリエットは無意識に酒の飲むペース
が止まりません
二人の姿にモヤモヤした気持ちのまま、自分のアルコール摂取許容範囲のことをすっかり忘れて酔いつぶれてしまったのです
ぐでんぐでんになったジュリエットの元にキャプュレット家に、長年勤めているメイドが遅い帰りを心配して屋敷に来てくれました
メイドは自分が使えているお嬢様を休ませる場所に連れて行こうとロミオの屋敷を後にしました
その一部始終を見ていたメリーゼは
「まあ・・・あの女はしたないわ。女は醜い感情を顔に出さないからこそ、美しさは際立つというのに・・・・・・。浮気性の夫はそんな妻を愛しく思い、愛人を愛することをやめるの」
メリーゼの自分は嫉妬深くないわ。あの女よりあたくしが好き。そうでしょ??とロミオの方に同意を求めながら話し続け、顔を向けると
「・・・メリーゼ嬢、少し僕の意見を拝聴して頂けるかな?」とロミオがにっこり笑いながら答えてくれました
が、笑顔を向けられたメリーゼは違和感を感じましたが、言う通りにロミオの話を聞き入れ始めた一方泥酔状態のジュリエットと彼女を迎えに来ていたメイドはというと・・・・・・
「むにゃあああぁぁ・・・ZZZ」
(現当主様ったら『ジュリエットがあの青二才にフラれていたことをうじうじ悩んでいるようだったら、死を疑似体験できる薬を飲ませろ。少なくても己の役割を思い出させるのに適している。着付け薬くらいにはなるわい』だなんて・・・しかも現当主様の言うことを犬よろしく嬉々と従う婚約者・パリス様の方を好きになるよう、頭ごなしに言うのだからジュリエット様が嫌がるのは無理もない・・・・・・)と泥酔して酔い潰れている主のジュリエットを横目にそう思っていると
「ごきげんよう、キャプュレット家の家政婦長殿」
「・・・これはモンタギュー家の次期当主様、こんな所でお初にかかれて光栄です。・・・が、パーティーの主役がこちらにいては、あちら側の一族の皆様方が心配していらっしゃるかと思いますの。ですから、心遣いに持ってきてくださったその水は私がお嬢様に渡します。・・・空になったコップは後でちゃんとお返しいたしますので」
「いやいや、ジュリエットに用があるから来たのです。出来れば、二人っきりで話したいのです」
ロミオが二人っきりの言葉を強調すると
「あらまあ・・・では何故メリーゼ様との雑談を早めに切り上げて側ににいて下さらなかったのでしょう??あそこで二人っきりに馴れない後ろめたい理由でも、ないかぎりは・・・???」
「・・・そ、それは・・・・・・」
ロミオはメイドが皮肉交じりの返答に困っていると
「・・・・・・っ、??」
寝起きのジュリエットと目が合いました
「・・・ジュリエット」
「ねぇロミオ、わたしを・・・弄んで楽しかった?」
「ジュリエット!!?」
「だって・・・わたしといる時より楽しそうだったじゃない。それに・・・」
ジュリエットが言い淀むと二人は首をかしげながら言葉の続きを待っていると
「一族皆から、正々堂々と公認されているじゃない。・・・恋仲を」
ジュリエットはメリーゼとロミオがいた時の場面を見て、思っていました
が、
「・・・メリーゼ嬢、のことは・・・・・・その。話?終えたから・・・・・・」
「?ロミオ、女の子のあしらい方に関しては上手い方の貴方が上手くいかないことがあるのね。あの娘にはなんて言ったのよ」
「・・・そ、それは・・・」
ジュリエットの疑問にどうこたえようかロミオが悩んでいると
『・・・・・・っ!!!』
『~・・・・・・っ!!』
『メリーゼ様、どちらに行かれるのですか?!!ロミオ様との正式な婚約のG『そのロミオから婚約破棄の意思を示されたのよ!!?』』
『え』
『【悪いけど君は好きになろうと努力しても、好きにはなれそうにない。すまないな】だそうよ??!しかも【君は自身の家の言うことに異を唱えることも、それに疑問を持つことはしないっていうのは・・・・・・ちょっと。相手に己の全てと責任を押し付けているみたいで。これなら自分の家の意味に疑問を持った、僕の幼馴染の方がこの謀略多いこの世界に生き抜くには適している】・・・あたしを馬鹿にしているとしか思えないのよっ!!!?』
『メリーゼ様、まだロミオ様は貴女の魅力を知らないのです。ですから、ここは我慢なさってくださいませ・・・っ!!』
『どちらにしろ、もうこんな結婚契約しないわっ!!お父様に言いつけてやるんだから!!!!』
『メリーゼ様、お待ちください!』
「・・・ロミオ、貴方意外とえげつない言葉を女の子にぶつけることあるのね」
「ジュリエット、メリーゼはほんと・・・その、ええっと・・・・・・」
いつもと違うロミオの一面を思いも知れず見られたジュリエットは思わずフフフと笑うとロミオに微笑んだまま、話しかけます
「ロミオ、なんだか昔を彷彿させる場面ね。昔の少し要領悪いところをまた、見られるなんて思ってもいなかったわ」
「・・・昔のことを掘り返さないでくれるかな?昔はかっこつけで見栄っ張りだった黒歴史を耳にしたくないんだけど」
「そうね、昔の貴方と今の貴方は違うわ。・・・今も和解が困難な茨の道を一緒に歩もうとしてくれる意思をはっきりしてくれたとこなんて・・・・・・見違えたわ。かっこいいじゃない」
見直したわと言い終えたジュリエットの言葉を聞いたロミオの顔はみるみる真っ赤になり、口をパクパクし始めました
その様子を一部始終見ていたメイド長は一言、「・・・見てはいられないですね」と呟きましたが二人の様子を見て、キャプュレット家とモンタギュー家の対立の場が減るのではないかと思ったそうです
そしてその後、ほんの、本当に少しずつでありますがキャプュレット家とモンタギュー家のいがみ合いの回数が減りました
二人の恋人関係が認められ、夫婦になるのは時間の問題・・・かもしれません おしまい
パタンと本を閉じ、ヴィヴィアンは『ロミオとジュリエット』を本棚に仕舞うと、明日に向けて他の本を探しているとふとこう思った
(・・・隣に聞いてくれる人がいないと、楽しみが減少するんですね)と物足りなさを感じながら新たに一冊の本を本棚から出し、机に並べると彼女は店の看板に『Close』を出し、店を閉めた
後日、ヴィヴィアンは明日読む本のタイトルを呟きながら寝る準備をし始める
「『眠り姫』・・・前に見た『シンデレラ』と関連しているヒーローが出てくる話ですか。これも複雑な事情が出てきそうですねえ・・・」
見て下さり有難うございました。これからは少しずつ見て下さる方々のために最新話を更新していきたいなと思っています。
次回は眠り姫です、お楽しみに。