~5~ ロリコン疑惑の狼さんと死にたがりの赤ずきん
ここはとある王国にある町の片隅、古書を売買している店の中
今日も、小さなお客様が一人・・・
「・・・・・・」
?? 小さな淑女は???
予定表をぐた~と見ているヴィヴィアンはいつものお客様の、前々聞いたことを呟いてみた
「此処二日は、行けられないですか・・・」
暇を持て余していると子供向けではない本の存在に気付いた
「丁度アレが読めれますね」
身体をゆっくり起こし、本棚に入っている一冊の本を取り出した
その本のページを捲ると呟いた
「この話、倫理観をえぐる話ですし・・・」
このつぶやきを最後に本に集中するのだった
昔、ある二つの奇病が世界中に流行りました 命は取らないまでも、人間にある能力与え、容姿を変える真奇妙な病です
一つは瞳が紅く、髪が白髪化してしまうものの人の過去が知れる能力が得られる
もう一つは瞳だけ真夜中の夜を象った色に変化し、見た人の恋心が分かる奇病です
この奇病はある村娘と国の姫にかかってしまいました
今回は、村娘について語りましょう
その村娘は・・・
「リリィ」
光当たるとキラキラ光る長い白髪は声のする方を向くと、紅い瞳が誰かを映します
映っているのは、彼女のお母さんです
「お母さん」
呼ばれて近寄ってみると抱き締めて、こう言いました
「外なんかに恋い焦がれないで。私の可愛い娘」
「なんで? お母さん」
「今、食糧難になりかけなの。今、あなたが外に出てしまうと食べられちゃうわ・・・ 貴方は特別だから、尚更」
外が見られないようにギュウウウと抱き締められます その状態から、リリィはボンヤリとこう思いました
『外に出たのが、いつが最後だっけ・・・?』
リリィの村は貧しいながらも頑張ってやってきました
多めに取られる教会の税金も、長い干ばつも、雨が降らなくなった時だって
でも・・・
「あちらの方で食料を配っているらしいぞ!!」
「なんだって!!!」
そう聞くと真っ先にその場所に行き、我先に食べ物を奪い合う
・・・食糧難には、ひもじさには誰も勝てれない
「むぐっ・・・ ムシャムシャ」
美味しそうに食べている姿を見ていると
「・・・ただいま」
隣の部屋からリリィのお父さんが帰ってきました
「お帰り、アンタ」
以前病が身体を蝕む前はお母さんと一緒に出迎えをしていたけれど
「触るな、穢らわしい!」と拒絶されてからしなくなった
それが当たり前になってから数年経っている
母親といえば、リリィを『形』だけ愛してくれている
「聞いたか?」
「何を?」
「食料がなくなりかけているらしいぞ・・・」
「なん・・・ですって」
リリィは横目で両親を見ているとそんな話が聞こえてきました
「森に行って、自給自足・・・と言いたいところだが危ないらしい」
「森なら胡桃や、茸、山葡萄などの山の幸がたくさんあるじゃない。鹿や兎肉だってあるし・・・」
「あそこは人食い狼が住んでいるらしい」
「狼は、早々人前に出やしない「アレは好んで森に来た来訪者を尾行して、その家の者全員を食べてしまうらしい」・・・!」
父親が帰ってきたのがリリィの昼寝の前だったので、その後の会話は聞いていないのです
けど・・・
そうなると子供は役に立たないうえ、食料を減らすだけの害虫じゃないか・・・
いざとなれば、この娘を・・・というヒソヒソ声で終わった会話は、誰も聞いてはいなかったといいます
―父親の言っていた通り、食料はもう底がついたらしい いつも通り、リリィは窓から風景を楽しんでいると
「・・・リリィ、ちょっといいかい?」
お母さんに呼ばれた先はなんと・・・
斧を持って、不気味な光を宿した父親がそこににいた いつもはこの時間帯は木こりの仕事で居ないのに、薪割りをしているのに
「お母さん、なんでお父さんは、」
言い終える前に、斧が顔の前を横切ってきました
―ドスッ!!! 斧が、壁に突き刺さりました
「え」
掠れ切れて頬から赤い血が出ています
状況が分からなくて、混乱していると
優しい声で「ゴメンね、リリィ。この辺りの食料はもう全部無くなってねぇ・・・ 村のみんなは娘を娼館に売ったんだけど、あんただけどうにも売れ残ったらしくてね」
だから、私たちに『食べられて』くれない?
そう言われた だけど、
「いや、死にたくない!!」
「・・・往生際が悪い」
冷え切った声で父親はそう呟き、リリィの髪を鷲掴みにすると
「アンタ、よーく刻み込むんだよ」
父親の後ろで鍋の用意をする母親
リリィは必死に抵抗をしていると
キィ・・・ 扉が開く音がしました
「ん? なんだい?ア、」
ズバッ・・・ ピシャッ 刃物が身体を傷付け、血飛沫が家の周りを染めました
吃驚して父親はリリィの髪を放し、フードを被った侵入者に怒り問いかけると
「うちのに何するんだ! この・・・」
絶句している父親は驚愕で一杯のため、次の言葉を紡げませんでした
その侵入者は、フードを取りこう告げたのです
「長い間、この顔を忘れてなかったんだ・・・?」
「お前は、死んでいたはず・・・っ!!?」
その隙に父親の胸に刃物を突き立てました
命の灯火が消えかけている父親に侵入者・・・いや人狼がそう言いました
その後、リリィが最後だと知ると、人狼はその刃を幼き少女の胸元に振りかざそうと・・・
「・・・もうあたしを、消して」
人狼に顔を合わせ、リリィがそう言ったのと同時に刃を向ける手が止まりました
カラン・・・ 人狼の持っていたナイフが落ちた音が響き渡り、二人は共に驚愕の表情を浮かべました
リリィはあれ?なんでナイフを放したの?という意味で
人狼の方は・・・
「え・・・嘘。この娘」
「・・・?」
リリィの手を両手で包み込むと
「オレの好みの娘なんだけど!!殺すわけないじゃーん❤キミオレんち来てよ❤❤」
運命の人に出会った時のリアクションだったといいます
「オレここの森に住んでいるスウィンっていうんだ♪ キミは?」
「・・・リリィって言います」
森に連れかれながら、自己紹介をし合いました
「あの・・・」
「ん?なぁーに???」
「殺して、食べないんですか?」
そう言うと
「、そ、そりゃあオレたちから見れば高級食材の一つだけどさ!!」
その言葉を聞いて、こうきゅうしょくざい・・・と薄くリリィは思っていると
「それ以前に、キミは両親を殺したオレに動じずに真っ直ぐ見たんだ。 ・・・気にもなるよ、知りたくなるよ」
「・・・変な人」
リリィはスウィンに聞こえないようにそう呟いたそうです
スウィンに拉致されてから早数週間後、リリィはこの狼を気に入りました
ご飯は別々のものでしたが、一緒に食べてくれたり挨拶を必ず交わしてくれたり、感謝の言葉や
謝罪の言葉をリリィ本人に向けてくれていたからです
病となって、異なった身となり家族や村の人たちは腫れ物を触るのさえ拒むかのような扱いを
していたので、余計にこの行為を見ていると切なくなりました
段々、こう思いが強くなりました
せめて、一度だけでいい 生きている間に、家族に『前』のように愛されたかった
この思いを、誰にも言わないつもりでしたが・・・
数ヶ月で村が滅亡したことを知った教会の、いや・・・
「ねえ!騙し取る物、もう底がついたわよ」
「今度は、どんな手で『騙し』やすか?・・・お頭!」
近辺の物を奪い尽くし、建物内を金貨や宝に埋め尽くした場所に集まる三人の男女
そう、彼らは盗賊団なのです
お頭と呼ばれた男は下卑た笑みを向け、とんでもないことを言い出したのです
「そうだ・・・❤」
「何すんのよ!このボケ!!」
「私たちを誘拐して、どうする気なんです・・・?」
口が悪いにもほどがある名家の美女のベルと気弱であるがこの辺りでは有名な貴族の美青年・
オーギュストを誘拐し、最後に見目麗しくも珍しい容姿のリリィを誘拐した後、彼らに売春行為をさせ
自身らの富を増やさせるつもりなのです
「うえへへへ・・・」
「お頭、なんか変。きも」
「しっ!後で疲れが取れるもんをやれば、正気に戻るよ」
男は手に入るであろう大金を夢見ているのを仲間は気付きません
それもそのはず、男は仲間に三人を集めた後この計画を話すつもりだったからです
小声で自身を罵っている部下二人に気付かないまま妄想にトリップする男
男は考えを中断させると計画は、後日決行するとか・・・
そう悪事を企んでいました
「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん」
スウィンと一緒に来ている森の中間にある花畑で、花を摘んでいたら知らない男たちに声をかけられた
リリィ
・・・見るからに怪しさ爆発の二人組だ
無視して、近くにいるスウィンにボコッてもらおう・・・
そう思ったリリィは
「スウィ「らめぇぇぇっ!!」!!?」
呼ぶ行動を阻止されると同時に身体を抱え込まれてしまいましたが
「どうしたのっ!?リリィ・・・お前ら」
男が行動を阻止しようとした時に大声を出していたので、スウィンが駆けつけてくれたのです
グルル・・・ッ 人狼の警戒した姿に二人組は、一瞬怯えますが一人が煙玉を出すと
ボシュンッ・・・!!! 一面が白く濁ります
スウィンの視界がハッキリした頃、リリィは誘拐された後
「リリィー・・・ッ!!」
スヴィンの呼ぶ声が花畑に響き渡ったのでした
場所は変わり、捕まったリリィはというと・・・
キイッ・・・ 錆びついた扉の音が鈍く響き渡る牢屋にいました
「逃げようなんて思うなよ、嬢ちゃん。大人しく牢屋に入っていろよ」
リリィを投げ入れるように男たちは牢屋の中に入れます
「なんでまたこんなことに・・・(イライラ)」
「まあまあ・・・」
イライラしているベルを宥めているオーギュストは連れられた少女が何も反応をしていないことに
気が付くと
「どうしたんですか?おじょ「見張りは男一人、持ち物は摘んでいた花とハンカチの二つ・・・。どういう手段で・・・」
冷静に、此処から脱出しようと計画している姿に吃驚した二人ですか、ベルが先に我に返ると
「!!・・・ねえ、アナタの名前は??」
「・・・??リ、リリィっていいます」
脱出の手立てを途中で途切れさせられたからでしょうか
リリィはベルの言葉に少し驚きながら答えます
「今脱出の手立てを考えていたでしょ」
「は、はい。そうです・・・」
「あたしたちにも、手伝わせなさい」
こうして三人の脱出劇が始まろうとしているのでした
バサッ・・・ リリィたちのいる牢屋の廊下で番をしていた男は不審に思い、中を覗いてみると
「・・・花がバラバラになっちゃった。水とかあげていないから、枯れちゃう」
涙を浮かべつつ、牢屋の外側にバラバラに散らしてしまった花を集めようと手を伸ばしている少女の姿と花集めに協力しようとしない男女の一組が男の目に写ります
「おい、お前らはこの子の手伝いをしないのか?」
「えーあたしたちぃ、赤の他人だし~」
「べ、別に助ける義理なんてないですから」
そっぽを向いて、興味ない態度を取る一組の男女 牢屋の外側に落ちた花も懸命に取ろうとする幼い女の子の光景に男の心が痛みます
見かねて男は花に手を伸ばし、牢屋越しからリリィに渡そうとした瞬間・・・
グイッ!!! 中にいる三人の手が一斉に男の腕を掴み引っ張りました
すると男は思いっきり牢屋の柵にぶつかり、あまりの痛みに気絶したではありませんか
実は先程のリリィたちの行動は演技で、牢屋の番をしている男の腰元に付けている鍵束の中に牢屋の鍵を
見つけたリリィが思いついたものです
幼い子供の行動を甘く見ているとこを狙って、お姉さんたちはその時のタイミングを狙っていて・・・と
作戦が成功し、鍵束を取るのに成功しました
三人は鍵を開けると牢屋の外に出ていき走り出します
「待てごらあああぁぁぁっ!!」
森に入っていこうとしたところで盗賊三人組が追ってきました
逃げられたことに憤りを感じている盗賊たちの表情は怖いもので、リリィたちは必死に逃げ切ろうとします
あと少し・・・というところでリリィは木の根元に引っ掛かり転んでしまったのです
ベルたちはリリィを起き上がらせようとしますが、段々距離が縮まろうとしています
そうこうしているうちに盗賊たちが追いついてしまいました 絶体絶命です
「手間かけさせやがって・・・っ!!」
リリィたちを捕まえようとした瞬間―・・・
「やぁっと、追いついた・・・。花の香りと人間の香りが混ざっていた時は焦ったわ~」
盗賊の主犯の背後から腕を掴んでいる人影が見え、声も聞こえました
仲間の声ではないことに顔に脂汗を掻きながら、後ろを振り向くと男の目には・・・
「スウィン・・・ッ!」
怒りを滲み出せている人狼の姿でした
スウィンの姿を確認すると、盗賊たちは顔を青ざめると逃げ出していきました
この場に残っているのはリリィたち四人
ベルはスウィンとリリィの姿を交互に見ると
「・・・アナタたちが、例の二人なのね」
「なんだよ・・・?」
警戒心丸出しのスウィンの様子を意に介さず、値踏みをするような視線をするベル
その理由を慌ててオーギュストが説明します
「わ、私たちはこの辺りのことを調べに来たのです。教会が過度の税金領収していることを
聞いたので、警告しに来たのですが・・・」
「あの盗賊たちが教会の人を騙っていたから、あたしたちは気が付く間もなく騙され捕まっていたわけ」
スウィンをあまりよく見ない視線にリリィは小さい身体で守るように寄り添うと三人は苦笑いを
してしました
「さて・・・あたしたちは戻らないとね」
「私たちの家の者が心配していると思いますし・・・」
リリィの頭を優しく撫でると二人は帰っていきました
リリィはスウィンと家に行こうとしますが、スウィンは動きません
「スウィン・・・?」
「リリィ、オレと一緒に来てから。ううん・・・あの家で弱音とか吐いたことないんじゃないの?」
「ど、して分かったの・・・?」
驚きのあまり、声が出ないリリィ それもそのはずそのことを今まで声に出してもいない
事実だったからです
「ちょーっとなんかよそよそしい部分がチラチラするから・・・ね」
「・・・スウィン、あたしの話を聞いてくれる?」
リリィはスウィンに自分の過去について話しました
自分がこの姿になる前の環境や、奇病になってから周りが冷たくなってしまったことなどを・・・
とにかく自分のことについて、リリィはたくさん語りました
スウィンは黙って話し終えるのを見届けると
「・・・リリィ、オレは進んで人と関わっていないからオレの無意識な言葉で傷付けるかもしれないし、泣かせちゃうかもしれない。・・・だけど一人になんかさせないし、する気もない。一人ぼっちから、
二人ぼっちで幸せになろ・・・?」
「、うん・・・っ!!」
【友愛】と呼ぶには狂っていて歪な関係に変わった二人は手を繋ぎながら、家に続く帰路を
歩き始めるのでした
・・・所変わりリリィとスウィンの二人と別れてしばらく、デイジーとオーギュストは
「あの人狼、幼女趣味なのかしら・・・?」
「え゛っ。リリィさんのこと、恋愛対象じゃないかと思いますよ?・・・多分」と
スウィンの性癖=幼女趣味と誤解していたことが本人に伝わるのは
いつの事やら・・・・・・?
ともあれ、半年後この出来事を忘れ、会うことはもうないかと思われた二人だが・・・
特殊なシチュエーションで再会することになるのは、別の話である
「・・・はあ~❤面白かった」
ヴィヴィアンは『赤ずきん』の本を読み終えると、次の本に手を伸ばす
「次は~・・・ コレにしようかな??」
ヴィヴィアンはその本を手にすると、ページを捲るのであった
お楽しみはまだまだこれからと楽しむヴィヴィアン
その手にした物語は・・・?
やあぁっと最新話書けれました~(泣)
次の話に入る前に、赤ずきんの前のお話になります
人狼スウィンに出会う前のリリィのお話です
お楽しみに・・・