~4.5~ とある人魚の姫と王子様
この話は・・・ セシリアとユリウスが小さい頃に出会った頃の話です
「このお話は、あまりに結末が酷過ぎるわ!」
「コレ、実際にあったお話なの。異形のものとは相いれないっていうメッセージを込めている。
人間なんて・・・ 思いが移ろいや過ぎる生き物よ」
人魚の国の王宮で、二人の姉妹姫が本について語っている頃・・・
「・・・つまらぬわ。誕生日パーティーなど簡単に準備すればいいものを」
「しかし、ユリウス王子様。一人息子である貴方様の八歳の誕生日パーティーですぞ、盛大に祝いたいではないですか」
「だからといって、船上パーティーにしなくてもよいだろう・・・」
王子は溜め息をつきながら、夜景を見ていたとか・・・
~数日後~
「何やら今夜は、海上が騒がしいわ」
「今夜はユリウス?っていう人間の王子様の誕生日パーティーをしているらしいわ。イヤねぇ・・・」
忌々しそうに姉姫たちが話しているのを聞いて、セシリア姫はそのパーティーを見てみたいとこっそり
見ていくことにしました
ワイワイガヤガヤ・・・ 水上から船を覗くと、賑やかにパーティーが盛り上がっているのが分かります
いいな・・・とセシリアが羨み、海上から眺めていると
なんだか周りの天気が悪くなっていきました
・・・ゴロゴロ 雷鳴が顔を出し、凄まじい荒波が船を襲います
そして・・・
「雷が船根に直撃したぞーっ!!どうにか、うわああっ!!!」
船に火が付き、荒波とともに襲っていきました
その様子をただ呆然と眺める術しかないセシリア
船が沈没して、死者で海上はいっぱいに―・・・
「がっ、ゴホッ・・・。誰、か・・・」
一人、たった一人生き延びた者がいました
ユリウス王子様です
咄嗟にユリウス王子様の手を、セシリア姫は
ガシッ!! 掴み握りしめ、そして・・・
王子様、あなたは生きて欲しい・・・
「・・・王子!」
「・・・リス王子!!」
・・・誰だ? 私を呼ぶ者は??
声に反応し、ゆっくりと目を開けると・・・
「・・・なんだ?」
「!!おーいっ!!!皆ぁ、起きたぞ~!!!!」
『良かった~!!』
ドドドッ!!! 周囲に人が集まり出します
「ど、どいうことだっ!!?」
「貴方様は、船の沈没から丸三日意識を失っていたんです!」
「三・・・、日??」
私だけ・・・なのか??
「生き残った、いや私以外の者はいないの・・・「残念ながら・・・」・・・」
それを聞いた王子様はとても悲しみました 絶望しました
自分以外の大切な人たちが、いなくなったという事実に・・・
死にたくなり、ふらりと海に向かおうとすると
『!!?どこに行こうっていんだあ!?!?』
「私は・・・もう生きる意味が・・・ん?」
どこからか歌声が聞こえます
どこか聞いたことのある声です
ユリウス王子はこの声の主はきっと誰かが知っている人だと思い、周りの人たちにこう聞きました
「この声の主の女を知っている奴はいないのか?」
「ここらは漁師が集う地、女は一人もいません。どうしたので・・・?」
聞くとあの声は、ユリウス王子が気を失っていた時に聞こえたものです
ですが、姿は見えません ユリウス王子はその声に少しだけ励まされました
ユリウス王子は自分がいなくなれば、国民がみな死ぬことを思い出し
自殺をやめ、助けてくれた土地の方々に礼を言うと自国へ帰っていきました
船上パーティーに参加していなかった人々に王子は支えられながら、国を守ってきます
・・・これは、人魚姫の始まりの前の始まりのお話
運命に導かれて、再びユリウス王子様とセシリア姫様が出会うのはあと―・・・
次回は赤ずきんです、お楽しみに・・・