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~3~狼の月の皇子と半獣人のかぐや姫

長らくお待たせしましたっ。最新話はかぐや姫をモチーフにした人外×ハーフ人外(半分人外と人間が混じっている)の物語です。

楽しんで読んでいってください。

あれ・・・どこにいったんですかね?」

ガサガサ本を物色している

「あの本珍しいから確か・・・」

アレ、あの子聞いたら喜ぶけど・・・ とヴィヴァンは思いながら探していると


カランッ・・・ 少女が来たようだ


「あっ・・・いらっしゃいませ」


「前回の林檎の花束のお礼に、東にある物語集の一つを読み聞かせをしようと思い・・・」

珍しい話のことだと思い、少女は聞きたいとねだった

「ふふっ、気になりますか?」

大きく頷いていると、ヴィヴィアンはその本のページをめくり始めた

「では・・・コホン。むかーし、むかし あるところに・・・・・・」



むかーし、むかしあるところに月の国がありました

そこにいる半獣人の姫・篠子は月の国の皇子・昴の正妻でしたが、陰で周りから

『おお・・・なんて醜いのだ』『なんで皇子はあの女を娶ったのだ』と言われ続けられていました



そんなある日、篠子は足を滑らせ下の国に落ちてしまいました


「ーーーっ!!」


その後、月の国中で姫を探しましたが行方が不明になっていたのです

皇子である昴はとても悲しみましたが、陰で周りは「これで皇子は美しい獣人の花嫁にするはずだ」

「あの女には悪いが・・・私の娘を見て貰えるいい機会だ」と好き勝手に言っていました


一方その頃、下の国に落ちた篠子は竹の中にはまってしまい、竹を採っている仕事中のお爺さんに

危うく体を真っ二つにされかけそうになりましたが、

篠子が中から「ちょっ、待って待ってっっっーーー!!」と大声をあげたので、

九死に一生を得て、なんとか無傷のまま竹の中から出してもらいました



驚いたお爺さんは「きっと神仏が日頃子が欲しいと毎日祈りをしていたワシら老夫婦に

授けてくださった子に違いない」と考え、篠子を家に持ち帰りました

それを見たお婆さんは大喜びしました

それからいうものの、子のいなかった老夫婦はお爺さんが竹を採りに行くたび小判がザクザクと

出てくるので、瞬く間に老夫婦は大金持ちになり姫の方も、光り輝く女竹(なよたけ)から生まれた姫と

いうので、篠子はやがて『女竹(なよたけ)輝夜(かぐや)姫』と周りから言われるようになりました



艶やかな黒髪とちょこんとその頭に揺れ動く黒い獣の耳、濡れ烏色の瞳という姫の美しさを聞きつけ、

身分の高い男もそうではない男も、一目見ようとやってくるようになりました


ですが姫の姿がなかなか見られないから、やってくる男たちは段々減っていき最後に五人の貴公子だけが

残りました

石作皇子(いしづくりのみこ)車持皇子(くらもちのみこ)右大臣阿部御主人(うだいじんあべのみうし)大納言御行(だいなごんおおとものみゆき)中納言石上麻呂(ちゅうなごんいそのかみのまろ)

五人でした


五人はそれぞれ篠子に手紙を送りましたが返事が届かず、歌を詠んでも返歌もありません

それでも五人の求婚者は「どうか、姫を私に下さい」とお爺さんに懇願していました


お爺さんは『他の娘をあたってくだせぇ』と断りましたが、五人は一向に姫を諦める様子はありません



そこでお爺さんは、篠子にこう申しました

「どうか、五人の求婚者の中から夫を選んでくれないか」

「・・・・・・それでは、五人の方たちが本当にわたしを愛してくれているのかどうか、本心を確かめても

いいでしょうか?」

「それはもっともじゃな」


実は篠子は長い間月の国独身でいる間、男から言い寄りもなかったので男の扱いも分からく

実現不可能の無理難題をふきかければ諦めてくれるに違いない、そう思い


「わたしは皆様方の御本心を確かめたいと思います。わたしが言ったものを持ってきてください。

持ってきた方の妻になります」

そういって篠子は五人に持ってくるものを、言いました



全員全ての実現不可能の無理難題のものを聞いて、なんとかしようと思っていましたが

そのお目当てのものは手に入らない結果が出せられませんでした  コレを見て、篠子は安心しました

これで求婚者はいなくなった、と・・・

だが篠子の思惑通りにいきませんでした 五人の求婚者が通わなくなって数か月経った頃、この噂が

帝の耳に届き、こっそり篠子に気付かれないよう邸に通いだしていたのです


なかなか姿をみせない篠子に会いたいと思った帝はお爺さんに「そなたの家の近くに参ろう」と

言ったのです


話がまとまると早速帝は狩りに出かけました

山の麓近くの老夫婦の家を見つけ、お爺さんにそっと案内されて帝は庭をふと見ました

そこで月明かりに照らされて、縁側に座っている篠子を見つけました


視線を感じた篠子は部屋に逃げ込もうとしたら、帝はその袖を掴み、


「こわがらなくてもよい」 と篠子を抱き締めました


ですが、篠子が自身の姿を消してしまうと帝はパッと離れ篠子を探しましたが見つかりません

嫌がられたことに気付いた帝がこういいました

「もうよい、わかった。そなたに触れないから、姿を見せてくれ。一目見たら帰るから」


この言葉で、篠子は安心して再び姿を現しました

それ以来帝は篠子と文を交わすようになりました


文通を続けていくうちに帝は、文から感じるどの季節もいいところを嬉しそうにしていることや、帝ではない自分のことを知ると自分とし続ける文通は楽しいと書いている文面を見て、帝は次第に心惹かれ始めました

文通を続けていくうちに帝は篠子にある疑問を持ち、手紙に書きました

『なぜそなたは竹の中から生まれたのだ?私たちにない黒い耳は違う異種族の証であるなら、何故この国に来たのだ?』

その手紙の返事にすぐさま帝に届きました

『わたしは遙か上にある月の国の姫です。足を滑らせて落ちていったら、気が付いたら竹の中にいました・・・わたしは元いた国では不美人ブスと認定される半獣人で夫がいる身でした・・・

夫もわたしのことを構うくらいなら、他の女性と楽しむくらいのようでしたし。

そんなわたしがここに来てから、こんなにたくさんの殿方に言い寄られるのは正直、喜べませんでした。今までの女性とは違うようだ、見てみたいものだと好奇心だけで四六時中屋敷を覗く殿方をみて今まで好いた女性の方はどうしてしまうの・・・? わたしみたいな思いをする方が増えるくらいなら・・・

全員を振ってしまう身の程知らずで、いい  そうおもったわたしはあのような行為をいたしました。

自分を好いてくれる人がいない故郷と物珍しさと噂でわたし自身見てくれない異郷には孤独感にわたしは潰されそうです、苦しいんです・・・っ

美人は豪華絢爛な花によく例えられますね。ならば醜いわたしは一体どのような花に例えられるのでしょうね』  後半が涙ぐんだままの、ぐしゃぐしゃに綴られていた手紙だったそうです


その手紙の後、篠子に急いで会いに行った帝は全力で走っていたグシャグシャの服と髪をなりふり構わず驚いて固まっていた篠子を抱きかかえ外に連れ出していきました


「ちょっと・・・っ!!帝様!?」

「篠子よ、しばし怯えるかもしれなん。目的地まで・・・しっかり掴まっていよ」

そう言うと帝はその言葉通り乱暴に篠子を抱きかかえ、ただ目を瞑り不安定な場所の揺らぎに怯え惑っていた篠子をとある場所に連れて行きました


「いいぞ。・・・ 目を開けてみよ」 帝の言葉で恐る恐る目を開けると・・・

「・・・キレイ」 夜空が見える場所でした

そこに広がる青い夜と煌めく星の光景に篠子は感激の言葉をこぼしました

そんな彼女の隣に帝は言葉を紡いだ


「心優しい、そなた自身に心奪われたのだ、恋愛事に聡かったはずの私を夢中にしたのだ」と

言ってくれました

月の国に戻れなくてもいいかもしれない・・・ 昴は愛人と仲良くしているみたいだし

篠子は使用人の手から渡される他の女性からの手紙に安堵の顔を浮かべた昴の顔を苦しく思っている頃、月の国では昴が篠子の居場所を見つけ出していました

次の満月の夜、下の国に行けられるから篠子を見つけ出そう、そう昴は誓いました


満月の夜になる日まで篠子と帝はどんどん仲良くなり、満月の夜帝は篠子にプロポーズしました

篠子の心は帝と昴に揺れ、どう返事を言おうか悩んでいたその時

「篠子っ!」



今まで会えなかった昴がいました


「・・・昴」

「誰だそなたは??」

「私は月の国の皇子昴と申す。そちらにいる篠子の夫だ」

「はっ・・・何を申すかと思えば。早く会いにいかない夫の分際で、横取りをするなとほざくのか」

帝の言葉にたじろいた昴の姿を見て篠子は

パンッ・・・! 平手打ちをしました


「・・・昴、愛人と仲良くしているんでしょ? だから言い淀んだのよね」

「ちが、」

「じゃあなんで今まで手を出してこなかったのに、会いに来たのよっ!?!?」


その言葉を区切りに三人は黙ってしまいました

重い空気をようやく壊すように昴は口に出せなかった言葉を篠子に伝え始めようとします


「・・・すまなかった、不安がらせて。篠子、キミに伝え足りていない部分があるんだ。それを聞いてから、私を選ぶかそっちの世界に残るか判断をしてくれても・・・構わない」



昴が聞く体勢になると昴は語り始めました

「私は君の言ってたいた通り、私は君に女性として手出しをしていない。だが、私はその ・・・相談してもらっていたのだ」

「「相談???」」

篠子と帝が口を揃えて発言した様子を見てわずかに機嫌を損ねた昴は少しムキになり始めたのです

「私は長年篠子の夫になるまで、男女の駆け引きというか女に関することなどさっぱりでな・・・

そのことを見兼ねた幼馴染みに手紙を通して教えてもらっていたのだ」

「幼馴染みって・・・ 愛人じゃないの?」

篠子が疑いの目を向けていると

「あやつは夫のいる身の女子だぞっ!私が妻といる身で不倫なぞ仕掛けるか!? ・・・あやつはその豊富だったからで・・・」

「なんだよく聞こえぬ、もっと大きな声を出さんか」

「~っ、恋愛経験が豊富だったからだっ!!」

「「恋愛経験???」」

半ばやけくそになりながら言いました

「私は仕事にしか頭になかった男だ、女子はそなたが初めてで・・・どう接すればいいのか分からなかったのだ。助言を聞きながら、実行しようにも好機に恵まれなくて・・・っ!!」

「要は不器用すぎた男の恋愛駆け引きが下手くそというだけだろうが」


ズバッと昴に棘のある言葉を吐くと帝は篠子と昴から距離を取り始めました

「帝様っ!?」

「・・・篠子よ、ソイツの話を聞き終えてから声をかけてくれ。私はしばらくこの月をながめておるから」

「「・・・・・・」」

「・・・篠子」

黙ったまま昴の顔なんか見たくないと顔に書いてある篠子にどう声をかけたらいいか分かりません


不安な顔の昴に少し許す気になった篠子は声をかけてくれました

「・・・昴、さっきの話本当なの??」

「・・・ああ」 さっきのことが恥ずかしいからか顔を仄かに赤く染めた昴が答えます


「・・・わたしたち、素直に言わなかったからこんな風にぐちゃぐちゃな関係になっちゃったのよね」

「・・・・・・???」 昴の恋愛事に不安でいることやあやふやで分からないことだらけで怯えることを知った篠子はよく知っています

昴の妻になるまで『本命が暇な時の退屈しのぎ(オモチャ)』や『からかいがいのある人』といった扱い、たくさんの恋愛の辛酸だけを味わってきた

そんな男不信の篠子が勇気を出して伝えなければならない・・・

そう心に決め、

「昴、わたしはあなたがどんな理由で妻にしたのだとか見当がつかない。だけど・・嘘が下手くそすぎるあなたを信じるわ」



篠子が言い終えると同時に昴は篠子を抱きかかえ、月を見ている帝の元へ行きました

「・・・・・・」

「この国の若き帝よ、よくも私のものを奪おうとしたな」

「ふっ・・・そちらが目を離したのが悪い。 篠子はより魅力的な男に心が移っただけだが」

「女心を分かっていないのはどちらだが知らぬようだな」


「「・・・・・・」」

顔は笑っているものの、言葉の一つ一つがお互いトゲがあります

そんな状況を見兼ねて、篠子は

「・・・嫌いならさっきみたいな言い合いしなければいいじゃない」と正論を出しました

「「うぐっ・・・」」


図星をされ、二人はふてくされてしまい黙ってしまいます

篠子は男二人の様子に安心したのか帝に自分の思いを伝えました


「・・・帝様、貴方の思いに答えられなくて申し訳ありません」

「っ、いいのだ。私はそなたの気持ちを尊重する」

あちらの世界で達者に暮らせよと篠子に寂しそうに笑いました


帝に感謝の言葉をかけると昴と篠子はお互いの手を取り合うと、月の国に行けられる牛車に乗り込みました

牛車は上に浮かび上がっていき、動いた跡は淡い星の光が道を照らしているようです


以前篠子と共に見た夜空のようだと帝は思うと涙が一筋流れ落ちました

しばらく帝はその光が消え失せるまでその場から離れなかったそうです


別の場所から月見をしていた貴族たちは『かぐや姫は月の住人に連れ去られた』と都中はそのことで騒ぎました


その後月に帰って行った篠子と昴は喧嘩や、意見のぶつかり合いもしたりものの仲良く暮らしているようです


一人失恋した帝は浮き名を流すことはもうしなかったそうですが、彼は再び帝としての仕事により一層励みました

帝は数年後運命的な出会いをし、その恋は実ったのだとか

昴の愛人と誤解された獣人の幼馴染みも複雑な恋模様を描いているとか・・・

その話はいずれ語るかと思います



昔の世は雁字搦めの赤い糸もあったのかもしれません



「―どうでしたか?」

ヴィヴァンは物語の感想を聞こうしたら、ムスーッ・・・と頬を膨らます小さなお客様に苦笑いしてしまった

「おや、この結末は微妙でしたか??」

コクコクッと大きく頷いたお客様にこうヴィヴァンはこう言った

「必ずしもお伽噺はハッピーエンドだとは限らないんですよ」

するとショボーンと落ち込んでしまった

「まあまあ、この東にある物語集は様々な登場人物をスポットライトを当てているので、話に出ていた『昴の愛人と誤解された獣人の女性』とかその後の帝が主人公として出てる話は入っていたはずです」

すると少女の顔がパアッと嬉しそうな笑顔がこぼれた

「ですが、今日はもう遅いです。続きはまたいずれ語るので、家に帰って温まるものを召し上がっていってください」



「今日も面白い物語、聞かせていただいてありがとうございました

また、違うお話でもいいので読み聞かせてください、ですか

では・・・-お客様、またのご来店を心からお待ちしております」

―カランッ・・・ ドアのベルが、冷え込んだ夜の空に響きましたとさ・・・・・・


後書きまで読んでくださり、ありがとうございます。

次のお話は、人魚姫をモチーフに書いていこうと思っています。人魚姫にも原作と異なっている筋書きの物語がありますが、私の方は・・・?

それは次回の後書きにとっておこうと思います。

日に日に寒さが増してきますが、皆様体調に気を付けて過ごしてください。


では・・・ 

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