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~1~一つ目王子と灰かぶり

むかぁし、むかぁし あるところにマリアという心優しい娘と彼女の両親がいました


部屋にこもりがちになった病気のお母さんが寂しくならないように、マリアは外に出ては

綺麗な花を摘んでいったり面白い噂話を探し、お母さんに話していました


そんなある日マリアはこんな噂話を聞きました

曰く、マリアたちの街の中心地にあるお城の王族は人外と同族である人間が治めている

曰く、そこの王子は一つ目をした人外であり、変わった瞳をしている

曰く、王子の姿はあまり知られていない・・・という『王子』の話を



「・・・という噂よっ!」

「ふふっ・・・・・マリアは物知りさんね」

「だってお母さんが部屋にずっといてもつまんなくなるように、マリア、いっぱい探したんだよ!!」

「マリアはねぇ・・・―と思ったんだ」

「そっか・・・マリアこれを貴女にあげる」


チャラッ・・・とガラスの靴をモチーフにしたネックレスをマリアに渡しました

お母さんからの贈り物に嬉しそうにマリアは微笑んでいました

・・・ここまでは『マリア』という幸せだった過去で、今は―


マリアのお母さんがこの世を去ってから、お父さんはその事実から背を向けるように

仕事に夢中になってしまいました



そんなある日、マリアはお父さんから新しい家族ができることを話しました

お母さんとお義姉さん二人がいる。今まで寂しい思いをさせてきたがこれからは

家族五人と一緒に暮らそうとお父さんは嬉しそうに言いました

が・・・

仕事先の村で、今までの無理が出てしまい、そのまま亡き人になってしまったのです


その時からマリアの運命の歯車は狂い始めてしまいした



マリアの部屋や着ていた服までも奪い、ツギハギだらけのボロくて汚い服を投げ渡したり、

マリアがなにか反論しようとすればご飯抜きにしたり、叩いたりして体罰を与え

使用人扱いをし始めたのです

マリアは朝早くから夜遅くまで食事の支度から部屋の掃除、洗濯までしなければはりませんでした


継母から部屋を取り上げられているマリアは暖炉の側の灰の中にねころぶしかなく、いつも

灰まみれなのでいつしかマリアは「灰かぶり」と呼ばれ継母たちから蔑まれました




ある時、国王が王子の花嫁を選ぶため三日続けて夜舞踏会を開くことになりました

その国の年頃の女の子はみなまねかれることになり、二人のお義姉さんたちも灰かぶりに

手伝わせて着飾っていました


「ああ、なんて美しいのかしら、二人とも・・・。さすが私の子達だね」

「お母様、ありがとう」

「王子様に気に入ってもらえるかしら?」

「ああ、きっとお前達のどちらかは花嫁になるよ」と

マリアは華やかな衣装に身を包み、楽しそうな表情で夜の舞踏会に行けれる二人のお義姉さんを

羨ましそうに見たのでした

ですが―マリア達は気付いていませんでした

その夜の舞踏会の主役である王子様がこの事を嫌い・・・

「王子ーっ!!王子ーっ!!!」

「いたかっ!?」

「いや見つからない~」

「この大事な時にどちらに行ったのやら・・・」

「とにかく見つけなければっ・・・」と

城を抜け出していたのです


「灰かぶり今日の仕事はここまでいいわ」

「灰かぶり、それじゃあ私達王子様と踊ってくるわ~」

「帰ってきた時の後始末よろしくね~」

キャハハ・・・と耳障りな笑い声を残し、3人は城へ向かいました


「・・・湖にでも行こう」

継母達を見送ったマリアは気分転換に湖に行こうと思い、足を進めました




チャポン・・・湖の水の音がよく響きます

「気持ちいい・・・」

ここはあまり人に知られていない湖で、小さい頃お母さんに花や木の実を笑いながら渡したマリアに

とって懐かしい場所なのです

悲しげに水面を微笑みながら、足に水をつけていると・・・

「やっと撒いた・・・ん?」

誰かが湖に来た事に気付いたマリアは湖につけていた足を出し、持っていた布で濡れた足を拭くと

「・・・あなたは誰?」と声をかけました

すると「!!!!」とマリアを見た途端近くの木に隠れてしまいました

「・・・ねぇ」

「!!!」

マリアが隠れたままの何かに木越しに声をかけただけで、何かは遠くにいるマリアにもわかるくらい

怯えだしてしまいはした

「ガタガタガタガタ」

「・・・」

人に馴れない動物に出会った時ってこんなのかなとマリアは苦笑いしました

その時、

「「王子っー!!」」

「ビクッ!!!」

「???」

城から抜け出した王子様を探しに来た従者二人が湖にやってきたのです

「おおっ!丁度良かった~そこの娘!!」

「なんでしょうか??」

「この辺に人は来なかったか!?」

「人・・・でしょうか?」

「「そうだっ!!!」」

「・・・それでしたらあちらの方へ行かれましたわ」と

何かが隠れている木とは違う真反対の方向を指差しました

「「ありがとう。では・・・・・・」」と二人の従者はマリアの嘘を信じて行ってしまいました



「・・・もう行ったと思うから、出てきたら?」

「・・・なんで助けた・・??」

「名前」

「え、」

「教えてよ」

「・・・ニコラ」

「私はマリア。あなたどうしてあの2人から逃げていたの?」

「・・・今夜から3日間続けて舞踏会を開くことになっただろ?」

「ええ・・・なんでも王子様の花嫁を探すためだとか」

「オレはそれが嫌だと言ったのに、親父は『年頃になったのにお前には浮いた話は1つも無い』だの『ワシの親友の王の娘・リゼッテもまだそういうのなくて・・・いっそお前達がくっつけばいいのにのぅっ・・・』とネチネチとぉぉっ!!ゴホッ・・・!?」

長いセリフを言うのは初めてだったのか直後咳き込んでしまいました

「・・・大丈夫?」とニコラの背中を擦りながら声をかけました

「!?」とニコラは急に触れられたことに驚いた拍子に深く被っていたフードがはずれしまい、顔を

マリアに見られてしまいました

「わっ・・・!!」

ニコラはすぐフードを被り直すとその場を立ち去ろうとしますが



「ねぇ、さっきなんで逃げるの?さっきの目の色綺麗じゃない!!」とマリアは逃げようとしたニコラを

捕まえました



するとニコラは足を止め、そのまましゃがみこみ顔を赤くしてしまいました


「なっ」

「ねぇ、ニコラ。貴方はなんで自分の目に嫌悪を感じているのかしら・・・?」

「、ああっ!この目のせいでオレは気味悪がられたっ!こんなものはいらない・・・っ!」

「・・・私はその赤から紫に、紫から灰青に変わる目が好きよ」

「!?」

「他の誰かがどう言おうと私は―むぐっ」とマリアが続けて言葉をかけようとしたら真っ赤な顔のまま、

マリアの口を塞ぎました

「も、もういいから聞いているこっちが恥ずかしくなる。やめろっ!!」

「むぅっー??」

「いいな!?」

コクンとマリアが頷いたのを見るとマリアの口から手をどかしました



リンゴーンッ…と舞踏会があと数分で終わる鐘の音が響きました



「「あっ・・・」」

二人はもうこの場所から元の場所に帰らなくてはいけない時間になったのです


「・・・行かないと」とマリアが行こうとすると

「待てよっ!!」とニコラはマリアを引き止めました

「―え?」

「そ、その匿わせてくれた礼とか、さっきの言葉の礼とか・・・言ってなかっただろ?

・・・ありがとう」とそっぽを向きながらお礼を言いました

「・・・ニコラ」

「なんだ?」

「また、ここで会おうよ」

「・・・いいぞ」



こうして二人は舞踏会が終わるまでお喋りしたり、遊んだりして楽しんでいました







最終日の夜、月明かりの下マリアとニコラは近くの木々で踊っていました

「―マリアはここの王国の『王子』の噂を小さい頃聞いたこと、あるか??」

踊りながら、ニコラはマリアに尋ねてきました

「・・・ああ、私が十一歳の頃の噂ね。聞いたことがあるわ」

「・・・お前はその時どう思ったんだ?」

「私は―」

そう十一年前もお母さんにも、同じ質問をされたなとマリアは思いました

確かなんて答えたっけ・・・?と記憶を探していると

「「あーっ!!!」」と二人の男の声がするではありませんか



「「や~っと見つけましたぞっ」」とニコラを見て、すぐさま捕まえると

「わっ!ま、待てっ!!」

「待ちませんっ!!」

「こんな大事な時に抜け出されては困りますっ!!さあ帰りますぞ!!」と

すごい勢いで従者二人はニコラを抱えてどこか行ってしまいました



「・・・返事まだ言ってないんだけど・・・」とポツリ、静かな湖にマリアの言葉が響きました




その後、マリアがそのことに悶々と悩みながら継母たちから言いつけられた雑務をこなしていると・・・

城からこんな達しが来ました

『二人の王子様がいるが一人は本物で、もう一人は偽者だ。どちらかの王子に十一年前の噂を聞いて、

どう思ったか前王妃が建てた教会で述べよ』という謎かけでした



その達しに数々の娘たちは解こうと考えていましたが・・・誰もその謎かけは解けられませんでした

もちろん、マリアのお義姉さんたちも解けられませんでした


「なんなのっ!?あの謎かけ!!」

「そうよっ!!ワケわかんない・・・!」と喚いていました

「・・・最後の年頃の娘はお前だけね、灰かぶり」と継母はマリアに声をかけました

「・・・そうですね」

「ふっ・・・精々若い身体で王子様を誑し込むのね」と嫌味を言い残し、二人のお義姉さんたちを連れて

教会から去りました



ギィッ・・・  教会の扉を開けると、そこには二人の王子様が立っていました

「―お目にかかれて光栄です。王子様」

「さあっ・・・そっちは寒いからこっちにおいでよ」と人間の方の王子様がマリアに手を伸ばしますが―

パシンッ・・・!!   その手を叩き落としました音が静かな教会に響き、マリアははっきり言いました

「偽者の王子様に心配かけられるような柔な生き方はしていませんので、ご心配なく。

本物の王子様に問いかけを答えるので二人っきりにしていただけませんか?」と人間の方の王子様に

冷たく言い放ちました

「・・・・・・ニコラ王子」

「お前は下がっていろ」

「御意」 人間の方の王子様は教会の外に出ました



「・・・私は十一年前の噂を聞いてどう思ったのか、昔亡きお母さんにも聞かれました。その時の

『答え』になってしまいますが・・・・・・『仲良くなりたい。あって色んなことを共有し、

分け合いたい』と思ったのです」

「・・・何故そう思った??」

「『この王子様は自分の色しか知らないんだな、世界は―』」

ツカツカ、早足でニコラに近づいていきました

そして・・・  ギュッ・・・

マリアはニコラの手を取り、両手で包みました

「『世界はこんなにも色鮮やかなんだよ』・・・ニコラ王子様、私は人と違うからって怖がりも

疎みません。違うからこそ、私は『素敵』と言い切れます」


段々、ニコラの顔は泣き崩れそうになりマリアはそのおでこに、コツンッと合わせると―

「ニコラ王子様」

「っ・・・ああ」

「世界中の人が貴方を嫌っても貴方が好きです」

「・・・会ってから四日間しか経っていないのにか」

「―これからお互い、教え合お。ね?」

「・・・っ~!!!」

その言葉を聞いた途端、すぐさまマリアと距離を置き、泣きながら言いました



「『私』は―。いやオレはここにいるマリアと、結婚するっ!!」



こうして前王妃が建てた教会で結婚式を行い、愛を誓ったのでした



王子様の影武者を務めた男はその後、王宮をやめ故郷の辺境の村に戻り『勇者』になったのだけれど

想定外の出会いを果たすことは神も知らなかったそうです



「そういえば・・・そのネックレスどうしたのだ」

「えっ・・・これはお母さんから頂いたものなんです。『貴方に運命の人が現れるように』と」

お母さん、私は運命の人と出逢いました。どうか見守ってくださいと―

マリアは思ったのでした



二人は永遠に仲睦まじく暮らしましたとさ

めでたしめでたし・・・



パタンッ



ホクホクッ・・・

「ご静聴ありがとうございました」

チラッ・・・ショボン

「あら、もうこんな時間。暗くならないうちに帰らなくてはいけないですね」

ペコリッ・・・

「ありがとうございました、ですか・・・?どういたしまして。

また来るので他の物語聞かせてですか

では・・・-お客様、またのご来店を心からお待ちしております」

―カランッ・・・ ドアのベルが、茜色に染まった道に響きましたとさ・・・・・・

読んで頂きありがとうございました

次回作まで少々お待ちください・・・

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