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「まあ何というか、彼女はきっと、生きるのが怖いんだろうな」

グラスを小さく傾けながら、アリスさんはいきなり結論から話し始めた。

「核心から話すなら、『失うのが怖い』んだ、あの子は」

失うのが怖い、漠然とした言葉だが、具体的に何を失うのが怖いのか。

家族、財産、友人。

学生ならこのあたりだろうか。

「言っていたよ、祖父が亡くなってから毎日のように頭をよぎる思考があるんだと。自分の周りの人間が、必ず死ななきゃならないのが怖い、その度に、あの虚無感を味わうのが嫌だ、ってね」

「それで、自殺……?」

それは何というか、あまりにも極端なのではないだろうか。

俺だって、自分の周りの人間が死ぬのは嫌だと思う。

だからといって、自分が死ねば、楓ちゃんの言うところの『虚無感』を他の人間が味わうことになるのだ。

結局誰かしら悲しむのなら、自分が悲しんだ方がマシだ、なんて思ってしまう。

「まあ、子供だよな。だけど彼女は遺された側の苦しみに耐えられないんだろう、いつか必ず自分を襲うことになるその苦しみ、その苦しみを避けるためにはどうすればいいのか……。それで死ぬなんて、結局はただの我儘だ」

「……で、アリスさんは楓ちゃんになんて言ったの?」

「その時は私もあの子が自殺するなんて思ってなかったからな、気の利いたことは何も言えなかったよ、すまない」

「いや、核心を引きずり出したのはアリスさんだし、謝ることじゃないよ、俺たちが今考えなきゃいけないのは、自殺を止める方法だ」

「やっぱり止めるのか?でも、一度や二度自殺の現場をおさえたくらいで、死ぬのは止めないだろ、アレは。彼女が長いこと考えて自分で導き出した解答にケチをつけるんだ、こっちも相当マシな別解答を用意することになるぞ、あるのか?そんなもの」

「それを今から考えるんでしょ」

「……お人好しめ」

文句を垂れながら一気に残りの酒を流し込むアリスさんは、半ばヤケ気味にだが、一緒に考えてくれるようだった。


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