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「で、親睦会するのは構わないんだけど、あのお店、勝手に入っちゃってよかったの?」

襟を直しながら秋人に問いかける。

「ああ、店の飲み物は一応商品だから勝手に手を付けるなって言われたけどな。ああ、あと、一応会議もするぞ、秋山には会議メインってメールを送ったから」

コンビニで適当に飲み物を選びながら、したり顔で言う。

「まあ、うまくやってるといいんだけどねえ……」

「他人事じゃないぞ、段取り通りに進めば、この後はお前の番だ」

「そこまでは後輩君に聞いてなかったから初耳だけど、俺は何すればいいのさ」

親睦を深める、つまり、楓ちゃんの作った壁を少しでも壊して、文芸部という輪の中に浸透させようというのが今回の目的なら、そんなに大変なことはさせられないだろう。

「別に特別なことは必要ないさ、部員の誰か一人でも仲良くなれれば、そいつを皮切りに……ってな」

「なるほどねえ……たしかに、一年間挨拶だとか必要な会話意外でほとんど話してないしね、俺もそろそろ何かアクションを起こすべきだとは思ってたんだけど」

この時期まで待ったのは、在学していた四年生たちが卒業すれば、三年生のいないこの部での最高学年は俺と秋人になり、部員数も大幅減。つまり、少人数のグループとなってから懐柔するのが効率的と考えたからだ。

「でもさ」

見計らっていたタイミングこそ同じだったが、秋人のように一気に行動に移すことができなかったのには理由がある。

「あの子はこそんな簡単に馴染めるなら、もう既に誰かと仲良くなっててもおかしくないんじゃないかって思うんだよね」

「そりゃお前、引っ込み思案なタイプなら仕方ないんじゃないか?」

「でもほら、一年の二人は、学部が同じってことで結構頻繁に声をかけてたみたいだけど、一年間で少しも仲良くなれてる気がしないんだよ」

俺の意見に秋人は黙ってしまう。

「あー……いや、秋人が早まったとか、そういうふうに責める気は全くないし、こういう機会を作ってくれたのは有難いんだけど、その、なんだ……」

リーダータイプな秋人は、こういう時真っ先に動く。

普通ならそれでいいのだろうけど、あの子は、楓ちゃんの人との距離の取り方は、何というか、普通ではないのだ。

「……なんか考えがあるのか?準一」

「うーん……まあ、考えというよりはアテだけど」

俺自身ではどうにもできないかもしれないが、人の悩みなら簡単に解決しそうな人を一人知っている。

「ふう、よし分かった、んじゃあお前に任せるよ。詳しく話してみ?」

吹っ切れたように言う秋人は、どこか笑っているように見えた。

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