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「ここ、椅子とかなかったっけ……」

アリスさんと別行動になってから10分ほど経った。

ずっと同じ場所で立っていると、正直人目が気になる。

堂々と人を待つなら(できれば待ち人には現れてほしくないが)、やはり椅子だとかに座って堂々と待っていたい。

「しかし、移動して大丈夫なんだろうか……」

アリスさんの事だ、きっと遠くからこっちの様子を見ているのだろう、遮蔽物があったりすると支障が出そうだ。

そんなわけで、結局すぐそばにあった自販機に寄りかかると、電車を待つ列の先頭に見知った姿を見つけた。

心臓がいやに高鳴る。

鼓動が早まり、頭が上手く回らない。

電車を待っている楓ちゃんは、俺が視たイメージ通りに虚ろな目をしていて、そしてどこか疲れた表情だ。

「楓ちゃんっ……!」

列の先頭に小走りで駆け寄り、声をかける。

『間もなく……番線に各駅停車……線直通……』

アナウンスが耳に入ってこない、が、おそらくこれに飛び込む気なのだろう。

楓ちゃんは俺を一瞥し、表情だけで笑って一歩前へ出た。

楓ちゃんの腕をつかんで、引っ張ろうとするもふり払われる。

尻もちをついて楓ちゃんを見上げる。

その表情には一切の未練も、恐怖も無く。

ただ安堵したという言葉が一番似合う表情だった。

轟音とともにスピードを緩め始めた電車が見える。

楓ちゃんは一歩、また一歩と踏み出す。

一瞬こちらを振り返って、再び俺に微笑みかけると、彼女はそのままホームから飛び降りた。



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